5.鼎談④
「しかし見出す、と言われましても‥‥」
これがたとえば兄なら、筋が単純すぎると言われたばかりだが、話は簡単だ。どこの誰とも知れない相手だろうが、出歩いているときに見つけてきた、と言えばそれが通る。そしてその人物を己の寵姫の守りに置くことも簡単だろう。
だが俺は基本的に城と神殿の往復しかしていない。どこで見出せというのか。
「かと言ってお医者殿でも無理がありますし」
それはそうだ。確か女医はした町から通っているという話だが、下町に宿はないから面識があるとすれば元々の住人くらいで、であれば今更見出されるということも考えられないだろう。
「‥‥分かりました。
悪阻だと知らずに気分転換に出かけた先で出会いましょう」
「え。じゃぁこの診断書使えない?今日の日付で作っちゃったけど」
先ほどから口を挟んでこないと思ったら、早速偽造していたらしい。仕事が早いのはいいことなのかもしれないが、確定してから動いてほしい。切に。
「いいのではないでしょうか。時間まで書いてあるわけではないのでしょう?」
「そうね。さっきの診断だとちょっとまだ確信できなかったことにして、帰ってきてから書いたことにすればいいか」
それまでそれをどうする気だ、と思ったが、それについては言及しなかった。
「‥‥私はどうすれば?」
出かけた先で出会った、ということであれば、そこに俺は必要ないだろうと思う。
「共に出掛けますか?」
「まさか」
「あーないない。このひとすっごい出不精だからさ」
ひと言で否定したのは俺だが、女医にそこまで言われるとなんとなくむっとした。彼女はと見れば、特に気落ちした風でもなく、それならば、と言った。
「では王弟殿下に気晴らしを進められて出掛ける、ということで。
どこかいい場所知りませんか?‥‥知らなそうですね」
「‥‥申し訳ありません、ほとんど出歩くことがないもので」
あぁ、でも確か、
「‥‥街道を東に入ったところに草原があって、この時期ならば見事に花が咲き誇っていると、聞いたような気がします」
「伝聞ですか」
「大丈夫?それ情報が2か月くらい遅かったりしない??」
ない引き出しをなんとか探り当てたというのに、その反応はあんまりではないだろうか。特に女医はひどくないか。




