4.鼎談③
「そんなわけで、私は悪阻で体調が悪いので外出を控えます」
「でもお二方とも健康そのものよ?」
「‥‥つまり、そのために協力をせよとおっしゃるのですね?」
非常識なことばかり言う彼女はその実頭の回転は悪くない。ただ言葉が足りない。生真面目な顔で抜けたことをぬかす女医は頭はいい、はずなのだが察しが悪すぎる。
俺は本当はこの二人の会話を通訳するために呼ばれたんじゃないだろうか、遠い目をしたくもなる。が、痛む頭を押さえながら続けることにする。
「外出を控える理由は、気付かれる危険を少しでもなくすためですか」
「それもあります」
なるべく具体的な話をしよう、と努力する俺の前では、察しは悪いが頭のいい女医が頷きながら勝手なことを言う。
「まー、診断書くらい簡単に書けるけど」
あっさりと公文書の偽造を口にする。それは確かに、してもらわなければ紹介した甲斐もないわけだが、堂々と言いすぎではないだろうか。
「それもある、ということは他に理由が?」
「はい。
私、騎士になりたいのですよ」
彼女の言葉が宙に浮く。俺はまじまじと彼女を見、女医はきょとんとしていた。
「‥‥騎士に?」
それと外出を控えることとはどうつながるのか?
それは確かに、彼女はもともと剣に長けているという話だし、その腕に問題はないだろう。だが剣の腕だけで騎士になれるわけではない。それに彼女が求めるものは、それはおそらく“義姉”を守るための騎士だろう。というより彼女がそれ以外の人間の騎士になろうとするはずはない。その地位を得るために、必要なものはあまりに多い。
「えぇそう。私はわが姫をお守りする騎士でなくては。
だから、悪阻で外出できない間に見出してもらえないものかな、と思いまして」
「見出す」
簡単に言ってくれるものだ。
「貴方に。まぁ別に、旦那様でも構わないのですけれど、それだとお芝居として筋が簡単すぎるのではないかと」
あぁ、彼女にとってこの婚姻は世間に対するお芝居なのだな、とその言い草に深く納得した。




