2.鼎談①
「さて」
と彼女は仕切り直すようにカップを置いた。
「それではわが姫のご懐妊は間違いがないのですね?」
「えぇもちろん」
きっぱりと頷く女医。この女は微妙に他人を不安にさせるところはあるが、こうして真面目な顔と真剣な眼をするときには信用できる。それ以外の時はまるで信用できないが。
「‥‥それはめでたいことですが‥‥兄上はご存じなので?」
恐る恐ると口をはさむ。大体、何故俺がこの場に呼ばれて兄がいないのか理解ができない。それは今は昼日中であるから、兄の手が離せないのは当たり前なのだが、であれば会談自体の開催時間をずらせばいいだけの話だろうに。
「いいえ。まだです」
「‥‥それはまた何故」
「そりゃー今さっきそれが知れたからなんじゃないの」
女医がやる気なく言うが、それは関係がない。何せ、彼女と兄との間には、呪いによるつながりがあるのだという。城内をうろついていた俺を探し出すよりも兄に伝えることのほうが容易だったはずだ。
「おめでとうございますとだけは伝えましたよ。
だってやっぱり、こういったことはわが姫から直接告げていただくべきでしょう」
言わんとすることは分かる。分かるがやはり、
「では私がこの場にいる意味とは何なのですか?」
どうして女医といい彼女といい、俺が知るべきでないことを真っ先に教えてくるのか、そこのところが俺にはよく分からない。
「今後のことを話し合おうと思ったのですが‥‥」
「確かに王サンに知らせるより早い意味はないやね」
どうしてそっち方面にばかり息がぴったりなのだろう、この間顔を合わせたばかりだというのに。思わず呆れた顔を晒してしまった。
「ま、まぁ、知れてしまった以上仕方がないでしょう」
女医と見合わせていた顔を慌ててこちらに向け、彼女はごまかすように茶に口を付けた。ついで顔を上げ、“義姉”に向けて一言二言声をかけたが、その内容は、深く気にしなければ俺には聞き取れない。耳には入るのだが、意味を解きほどこうという気にまったくなれないのだ。彼女の組み上げた結界は、心底無差別で強力だ。
「それでは、わが姫につつがなくお子を産み育てていただくために、私が退場する準備について話しましょうか」
その言いぐさにはあきれるが、かといって反対しようという動機もないのだった。




