表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
情炎の魔術師  作者:
Segundita
31/47

14.尋問

「儀のあれは、一体何のつもりだ」


 ゆったりとしたリズムに乗りながら、単刀直入に斬り込む。口から出る言葉を飾るつもりはない。敵には回せないが、誤魔化しながら話ができる相手ではない、と、最大限の警戒心を持って相対する。

それに対する彼女の反応は、いつもと同じ笑顔の仮面ながら、どことなく楽しそうで面倒そうなものだった。


「世界に刻むわけにはいかなかったものですから」


 何を、とは訊かなかった。彼女が指すものはあきらかだ。婚姻の儀の要ともいえる、世界への誓い。完全にあれはそこだけに狙いを絞っていた。


 だが分からないのは、その意図。そんなはずはあるまいと思いながらも、しかし一曲は短いものだから、口早に尋問を続ける。


「‥‥国元に残した男でもあったのか」


「そんなものいないと、お分かりでしょう?」


 あぁ、分かるさ。この言葉が見当外れなことくらい分かっている。だが何故分かっているのかなどと、告げるのはいかにもばつが悪い。何故なら俺は、彼女の身体検査の結果にそのまま目を通したのだから。本来なら目を逸らすべき項目にも知悉している。


「‥‥知っていたのか」


 謝るべきだろう、な。婚姻相手でもない俺が、医局から全てを聞いて知っているということは。それを彼女が知っているのならば。兄の婚約者として相応しいかどうか調べるため、など言い訳に過ぎない。そもそもそれは俺の役割ではないのだから。だったらなぜ医局が素直に渡したのかは考えたくないが。俺の弱みとなるとでも思ったのだろうか。


 そう思っていたのだが、彼女が考えていることは事実と違うようだ、と、次の台詞(セリフ)で気付いた。


「その出自でその地位で、その魔力があれば当然のことだと思いますけれど?」


 当たり前だが、医局に我儘を通すことに魔力は関係ない。あれは単純な人間関係の問題でしかない。


 ‥‥あぁ、そういうことか。俺が、この国にしか、というよりは兄の行く末にしか興味がないこの俺が、隣国にまで監視の手を伸ばしている、と思っているわけか。誤解を告げるべきか否か一瞬悩み、黙殺することにした。それよりも今は得たい答えがある。


「‥‥では、何故」


「旦那様には私よりも幸せにしていただかなければならないかたがいらっしゃいますので」


 確かに、世界に刻んだ夫婦関係は解消が効かないが。


 だが、ではそれは、彼女が己の婚姻よりも優先するというかた(・・)とは、彼女が敬う相手とは、幸せを願う相手とは、誰だ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ