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情炎の魔術師  作者:
Segundita
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8.炎熱

 ――意味が分からない。



 式は滞りなく終わった。不穏当なことなど起こらず、ただ、式典の合間に少しばかり不適切なざわめきが巻き起こったが、それにしたってすぐに止んだ。どのみち列席の彼らには分からなかっただろう。自分たちが感じ取った違和感が何に由来するものか。


 俺には分かった。それを引き起こしたのが兄の隣で微笑む義姉だということも、それはすなわち世界とあの空間を隔てる為のものだったということも。ただ、分からないのがその意図で、だから俺は頭痛も忘れて義姉を注視することしかできなかった。



 外が晴れていようと雨だろうと、婚儀それ自体には何らの影響もない。それは大聖堂で行われるからで、ただ、陽光を透かしたほうが荘厳であるしそれに術も通りがいいというだけだ。


 神官長の宣言により儀が始まり、俺は己の魔を大聖堂中に張り巡らされた結界の陣に集中させた。同時に神官長の口からも言祝ぎ(ことほぎ)に寄せて呪文が漏れる。といっても最早この陣は俺の手に依っており、神官長の唱えるそれは補助の役割しか果たしていない。


 じわり、と列席のそれぞれから見覚えのある色味が染み出してきて、あぁ、実験は成功したのだなと思った。


(‥‥これは、きつい)


 思ったが、想定よりも情報量が多いようで、俺は表情が険しくならないようにするので精いっぱいだった。頭が痛い。


 だが、痛みを堪えるだけの意味のある情報だ、これは。


 睨みつけないよういつもの覇気のない笑顔を仮面に、俺は大聖堂内のひとびとを眺め回した。幸い、俺は次期神官長として知られているから、実はまだそれは内示が出たわけでもなく噂の範疇なのだが、間違いなく神殿側の人間であるから、多少視線がうろついても役目柄と思われることだろう。


(‥‥今、見える色について考えるのは、無理だな‥‥)


 とにかく必死で、頭の痛みとともに見える色をそのまま脳裏に刻み込む。今は覚えるだけで精いっぱいだ、意味についてはここを出てから考えることにする。都合のいいことに、この場に張り巡らされた結界のもともとの意味とは邪念を追いやるものだから、この場にまさに参加している人間が動くことはない、はず。


 その光景は何というのだろう、ひどく現実感がなかった。


 俺の目に、全ての人間は炎を纏って見えた。


 燃え上がっていたりくすぶっていたり、青かったり赤かったり硬質な色だったり柔らかな色だったり、表情はそれぞれだったが、着飾った男女全てから炎が巻き起こって見えるのは、ひどく幻覚めいていた。ただ、この耐えがたい頭痛だけが現実感。

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