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情炎の魔術師  作者:
Segundita
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7.晴天

 その日は図ったように晴天だった。


 ある意味図ったと言えなくもないが。それが魔法や魔術、術と言えるほど確たるものでなかったとしても、ひとの想いは力を持つ。ましてやそれが、多くのひとの同じ想いであるならば、一層のこと。だから、特に正の影響力を及ぼす人間の冠婚葬祭のときに雨天は少ない。葬儀は別か、涙雨がむしろ多いから。


 兄はこの国をこれまでなかったほど大きく強くした人間で、それは悪意や嫉妬がないとはまるで言えないが、求心力だけは半端ない。国土の感情を読んでいる俺は知っている、兄に対して国民が覚える感情は、概ねが暖色、好ましいと思われている。そうなるような操作がうまいこともあるが、結局のところ、それが権威というものだろうか。ここのところ、常のような性急さは鳴りを潜めているし、顔を合わせると違和感を覚えるほどに穏やかだから、これから先の方向性については相談が必要だろうが。人々が兄に英雄的な派手さを求めているとしたら、注意が必要かもしれない。


 それはともかく。未来のことで頭を悩ませても仕方がない。それよりも本日、この国は正妃を迎える、そのことについて考えなくては。


 とはいえ別段、彼女について懸念があるわけでもない。この国に着いて半年、隣国の姫君は剣をよくするという噂の割には別に鍛錬場に足しげく通うでもなく、といって与えられた客室でじっとしているということもなく、何くれとどこと定めるようでもなく、城内を巡っていたようだった。


 俺自身もそれに行き会ったことがある。散策、というよりは探検、と言ったほうが近いような有様で、行く先々で人々に気安く語りかけていた。貴族連中には気位が高いものもいて、というかそういう者のほうが多いくらいだが、にもかかわらず彼女のその態度は概ね好意的に受け入れられているように見られた。術を使ったわけではなく顔色や態度からだけだが。恐らくそれは、彼女が王族だからだろう。術の気配もその彼女に伴って移動していた。気配は気になるのだがそれを纏っている彼女の侍女は気にすることができない、というのは顔合わせの時と変わらず、逆にこれは興味を惹かれるのではないかと思ったが、どうやらそのように感じているのは俺だけのようだった。この国の魔を扱う者の程度が知れる。


 彼女は順調にこの国に基盤を作りつつあるように見受けられた。閉じこもってよからぬことをたくらまれるよりは余程いい、行く先々でよからぬ提案を受けていないかどうかは保証の限りではないが。何せ、兄に否定的な連中に対してもまるで変わることなく接していたので。


 そう、そういう姿を見ているものだから、この儀の間に何かを引き起こさないとも言い切れないのだ。


 あるいはまた、兄の成婚に焦る誰やらが何かをたくらんでいるかもしれず、だが兄としてはそういった不穏な連中を炙り出す目的もあったのだろうが俺にはそこまで劇的なことが起こるとも思えなかった。だからこそ、悠長に感情を探る術などを仕掛ける準備などしていたわけだが。


 とにかく、よく晴れた空の下、俺もまた緊張して起こりうることに備えていた。だが、その場で彼女がしでかしたことは、俺の想定の斜め上を行っていた。

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