表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
情炎の魔術師  作者:
Primerita
14/47

13.機微

 兄の執務室には人の気配があった。


 息を整えてから、扉を叩く。応えがあり、俺は扉を開いた。


 王族というのは常に侍る誰かがおり、己の手は動かさないものだろうが、この国では違う。というより、兄と俺とが普通ではないのか。兄は兄で、野望に向けて動いているために他人を寄せ付けることはせず、さらにはいつの間にか誰より強くなっていたために、侍る騎士はむしろ思考の邪魔だと遠ざけた。俺は俺で、継承権を放棄した以上守られるべき存在ではないし、そもそも俺は神官となったのだから必要ない、と言い張った結果、一人になることができた。


 一人は、楽だ。何一つ飾らなくていい。


「兄上」


「フエゴか。どうした?」


 声をかけ、書類から顔を上げた兄を見て、俺は違和を覚えた。


「‥‥兄上、何かいいことでもありましたか?」


 いつになく上機嫌だった。隣国(パルテの国)の併呑は、それは喜ばしいことかもしれないが、その程度のことでこの兄が喜ぶとは思えない。兄の望みはもっと大きく、この大陸全土なのだから。


「‥‥いいこと?」


 兄はきょとんとした。気付いていなかったとでもいうのだろうか、それとも気付かれないとでも?


「‥‥あぁ、そうか。それで楽だったのか」


「兄上?」


「いいことがあったのは俺ではないよ。

 婚約者殿が満たされたらしい」


「は」


 周りに他人がいない場所では、兄は飾らず話をする。親切に説明することもないので、何を言っているのか分かりにくいことが多い。


 疑問符を浮かべる俺に笑いかけて、兄は楽しそうに言った。


「なんでも俺にかけられた術は、心をつなげる術らしい」


「‥‥つまりつながった先の婚約者様の感情が、兄上に影響している、と?」


 それは果たして大丈夫なのだろうか、と、絡んだ魔を初めて見たとき以上に不安を覚えた。


 だが兄は、自分のことのように嬉しそうに破顔する。


「ずっと満たされていなかったからな、彼女は」


 それに対して覚えたのは、確かに嫉妬だった。そこまでの理解を、俺は誰にも期待できないからだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ