12.法陣
食事を終えた俺は、訓練に向かう騎士と別れて自分の部屋に向かった。
継承権を放棄しようと所属が神殿になろうとも俺が王族であるのは変わりのない事実で、この城に俺の部屋はあるのだが、正直あまり自分の居場所という感じはしない。とはいえ与えられているものには変わりはないから、あまり寄り付かなかった頃はともかく、ここのところは、たまには帰るようにしている。一時期よりもきちんと寝に帰ることも多い。神殿で仮眠をとることも減ったとはいえまだまだ多いが。
自分の居場所という感じはないが、ではどこが俺の場所なのだろうと考えればそんなものは思いつかないのだが、それでも王城内に部屋があるというのは都合がいい。王城は国の中心で、つまり国土全体に術をかける要にするには丁度いいのだ。
果たしてこれは、術だろうか魔術の範疇だろうか、とぼんやり思いながらが、俺は床の模様に紛れ込ませて描いた陣の中心に立った。陣は部屋全体に及んでいるが、元の模様に紛れ込ませて描いたため、ぱっと見にはそれとは気付かれない、はずだ。考えるまでもなくこれは魔術だろうな、と思う。確かに基本の考え方は神殿に伝わる術のそれだが、俺はそれを組み替えて、応用して、俺にとって都合の良い陣を作り上げた。
「――参照」
キィワードを呟く。
脳裏に地図が浮かぶ。ほのかに色づいているのは、兄に対する感情の色。好印象なら暖色、悪印象なら寒色に染まる。その重ね合わせだから個々の感情までは分からないが、大まかな傾向は読み取れる。というか、その程度の陣しか俺には組めなかった。
中心はこの王城。この部屋。国土は概ね暖色である。濃淡はもちろんある。有能な王太子は、それが自国を導く者なら歓迎されるのだろう。周辺国は、‥‥流石に寒色が優勢だが、かといって攻撃的なまでの青はない。併呑されたばかりの小国のあたりは、逆に暖色だった。そのあたりの世論操作は抜かりない。
「編集」
大使がやってきたと言う隣国は、わずかに国境を接しているがこの国から遠ざかる方向に細く長い。そのため、術の範囲を少しばかり広げないと、その国土全てを参照することができないのだ。
術はどうしても同心円状にしか構築できず、もともとが大きな国土で兄によって更に広げられている版図は広大で、少し広げるにも疲労を覚える。隣国全域にまでその目を届かせられるまで広げるころには、若干汗ばんでいた。
「確定」
ふぅ、と息をつく。
さて、そろそろ朝議は終わったころだろうか。




