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情炎の魔術師  作者:
Primerita
12/47

11.版図

 やってきたのは兄の執務室だった。そろそろ父王は位を譲ることを考えている、と噂はあるが、そして俺はそれが事実だと知ってはいるが現状噂だけなので、兄の執務室は国王のそれとは別にある。継承権は放棄しても俺は王族であるし、特に立ち入れない場所はこの城にはない。あまり好き好んで歩き回りはしないが。


「あぁ、朝食の時間でしたか」


 鍵がかかっていたので近くにいた侍女に話を聞けば、朝一の執務を終えて食事に向かったらしい。そういえば食いっぱぐれていたな、と今更ながら空腹を思い出す。どうせこの後は朝議があるのだし、朝食を摂ってから出直すことにした。


 王城と神殿は隣り合っているが、朝食を摂りに神殿に戻るのも面倒臭い。王城にも居室はあるし食事の用意くらいはしてもらえるだろうが、それもまた煩わしいので、騎士連中の食堂に向かう。

赤髪の神官服は俺くらいなもので、それを思えば紛れることなどできはしないが、たまにこういった行動をとることは知られているので誰にも止められたりはしない。少し困ったように、だが、騎士連中と同じ朝食を手渡され、適当に席につく。騎士団に所属するすべての騎士がここで朝食を摂るわけではないし、一人分くらいはどうにでもなるはずだ。きちんと確認したことはないが、多分。


「またっすか、殿下」


「あぁ、お久しぶりですね」


 顔見知りの騎士に話しかけられて、顔を上げた。彼は近衛の一員で、歳も近いので、流石に立場あるからつるむことはないが行き会えば話くらいはする仲だ。特に断りもなく正面の席につき、同じ内容の食事をつつきながら話をする。


「今度は何を思いついたんすか?」


 かろうじて敬語ではあるが、あまり敬意は感じられないくだけた話し方をする。馬鹿にされていると感じる者もあるらしいが、俺にはこのくらいでいい。


「いや、別に、何かを思いつかなければ城に寄り付かないわけではありませんよ」


 一時期は用事がなければ近付かなかったものだが、今ではそんなことはない。苦笑してみせるが、彼は意に介したようでもない。


「そうすか?

 そういや、パルテの国の大使が来たんすよ、昨日」


「‥‥へぇ?」


 パルテの国。国境を接する小国だ。このところ兄が手を伸ばしているのを知っているだけに、その事実は興味深い。


「また、版図が広がりますか」


 それが望んだことにせよそうでないにせよ、手土産に国そのものをぶら下げて来たのだろうことは想像に難くない。兄を相手取って何も失わないでいられることなどないのだから。


 すると、また術の範囲を広げねばなるまいな、と俺は片隅で考えてながら、顔見知りとの会話を続けた。

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