第1話 せんないことじゃ
凄まじい光が周辺を埋め尽くす。一瞬で意識を失った筈なのに、眼下に敷地が見える。
広大な原野の真ん中にある建物が、爆発と衝撃波に巻き込まれていく様子がスローモーション撮影の様に見えてくる。
(ああ。失敗して爆発で死んじゃったのか。完璧だったのに、何で?)
後ろから光が差してくる。
(あ、コレ、あれだ。転生するヤツだ…)
そうして俺は光の濁流に呑まれながら意識を失った…。
――――――――――
気が付くと、距離感の存在しない場所に居た。そして、眩しい。
「なあんじゃぁ?ぬしゃらは」
目の前に、光る輪っかを纏った光っている存在がいる。明らかに人ではないが、少女?の様なシルエットをしている。しかし、輪っかだけ見ると、光る〇シ〇ラ〇マ〇である。
「ほう?面白い発想じゃのう。儂を見ずに光輪を人外に例えるか」
光体がスイッと近付いてきて、下から眺めるように言ってきた。
あ、いかん。神様だ。これは神様かその系譜の存在だ。空気を読むとかじゃなくて、人心を読む超常の存在だ。
「失礼致しました。ええと、転生を司る神様でいらっしゃいますか?」
「いかにも!と言いたいトコじゃが、違うな。儂は理を見ておるだけの、しがない管理人じゃ。ぬしゃらは何ゆえココに来おった?何ぞ理に抗う様な事を仕出かしたか?」
ババン!という効果音が聞こえてきそうな、両手を腰に当てたポーズで答えてくる。
「ええと、実験装置の爆発に巻き込まれたと思うので、特に何か仕出かしたとかでは無いかと」
「ふん?その実験は、何を目的にしておった?」
「極小のブラックホールを創る実験です」
「仕出かしておるではないか」
呆れた様に、溜息を吐かれた。
「え!いえ!ブラックホールは存在が確認されている事象ですから、とても現実的な実験だったと思うのですが」
「ぬしゃらのブラックホールと言うのは、光?ああ、電磁波か。その光が抜け出せなくなる程の重力を有して空間に穴?を開ける様な存在の事をそう言うのだな?」
ふよふよと浮かびながら、足を組んで椅子の上でふんぞり返った格好で聞いてきた。
「ざっくり言えば、その通りですね」
「その理論が狂っておるのに、何十もの重粒子を同時にぶつけて陽子?や中性子?とやらを、更に高密度の粒子に仕立て上げて超重力を創り出し、ブラックホールを出現させようとしたのであろう?」
こちらを指差しながら、更に聞いてくる。
「そ、その通りですが、狂っているとは何の事でしょう?マイクロブラックホールの出現に必要なエネルギーの2倍以上を集めた、画期的な実験であったと思っているのですが」
「はあ。今のぬしに言うても詮無い事じゃが、そもそもが違っておるから狂っておると言うただけじゃ。光の事も重力の事も前提が違っておる」
両手を広げて、肩をすくめて呆れた風に言われてしまった。
「前提?とは何の事でしょう。光も重力もどのようなものかは科学的な実験で以って、大部分が解明されているモノでしょう?」
「お主。光を「絶対的なモノ」という風に捉えておるが、あれは音と同じ唯の波じゃ。そしてぬしゃらが言うておる重力は…圧力?…いや、浮力か?うむ。ぬしゃらの世界で言う、「浮力」が最も当て嵌まる感じじゃ。まあ、圧力でもおかしくは無いと思うが、どうじゃ?そこだけでも、全く違う現象に聞こえぬか?」
「それはおかしい!物は重いから落ちて、軽いから浮くんです!意味が逆になるじゃないですか!」
「じゃから言っておるではないか。前提が違っておるから逆に聞こえるだけで、現象としては浮力とそっくりなんじゃがのう」
「意味が解りません」
(いや待て。…違う。夢じゃ無い。なら、今は現実ではない真実の前に居る?本当にそうなのであれば、僕は間違っている事になる訳だし、転生担当じゃない理のかみさま?このかみさまがいる。今だけ「真理」を聞ける?)
「…。あの、かみさまはその間違いを正しく知っているんですよね?」
「そうじゃな」
「死んでからの御縁と言うのもアレですが、千歳一隅の一会を目にした僕の個人的なお願いです。前世の憂いを払拭するという意味も込めて、転生する前に世界の理を出来る限り教えて貰えませんでしょうか?」
おれは、膝を突き、座してお願いをしてみる。
「ふむ、さて「にににににいさん!こっここはどどどこどこですか!?」お、起きたか」
振り向くと、足元に白衣を着た弟が起きて喋っていた。
「あ、ひかる、いたのかお前」
「兄さん。ばばばくばく爆発が!死ぬ!死んじゃう!」
「いや、もう死んでるからな。ここ、転生の間の隣部屋みたいなトコだぞ」
「えっ…」
「隣部屋。面白い例えじゃな」
「兄さん。輝いている美少女が見える。これは夢?」
「まあ、言いたい事は判るが、夢では無いな。夢を見る俺達の肉体が無いんだから、虚夢の中とでも言えるかもな」
「それは外れじゃな。ココは夢とそう大差無い。この世界にぬしの考える「虚」なぞどこにも無いぞ」
かみさまが目の前に来て、俺のおでこを指で押さえながら否定してきた。
「虚とは何もない事。つまり、かみさまの言では何もない場所は無い。即ち、あらゆる場所に「何か」が充満してるって事ですか?」
「まあ、そうなんじゃが、どうにも疎通が難儀じゃな」
言うなりかみさまが、立ち上がって並んだ弟と共に俺の頭を鷲掴んだ。
「少々ぬしゃらのイメージを貰う。多少痛いが損壊しない程度にはする故我慢せい」
手が ぞぶり と 入って 来た。
「うんぎゃらああああああああ!」
「げれぽぽおおおおおおおおお!」
気が 狂い そう な程 にい t a い ぃ 。
「「ほげるぴれええええええええ!」」
――――――――――
目の前にひかるが倒れている。
その上に、少々申し訳なさそうな顔をしたかみさまが居る。
「おう、気付いたか」
「もしちょっとでも動けたら、殴り倒したくなるぐらい痛かったんですが」
「すまんすまん。そっちで言う1万5千年?ぶりに使ったんで、痛覚緩和の切り替え時間があるのを忘れておった」
「で?何を持って行ったんですか。情報か何か引き出したんでしょう?」
「おうそうじゃな。ぬしゃらの具体性を引き出した」
「具体性。抽象の反対。疎通、意思の疎通の困難を具体性で解決?えっと、言語という抽象的なツールでは交流が難しいから、具体的なイメージを僕らから吸い取って、先程のお願いを解り易く説明してくれる、という事でしょうか」
「ほう。ぬしは回る者じゃな。おととは書館如き憶ゆる者じゃが」
「はあ。頭の回転はそれなりです。ひかるも図書館並みだと良く言われました」
「それだけ知っていても、間違いに気付かんモンかいの?」
「いえ、そもそもがですね「何を」「どう」間違っているかが判らないのです」
「ふむう。ぬしゃらの理論形態は大体判ったが、さて説明すべき点が有り過ぎて、こちとらどの順序が良いのかすら判らぬのは、ちと矜持にかかる。…ヒカル、か。うむ。先ずはおととの名にかこつけて、そこから話してみるとしよう。ツカサよ」
「あ、はい」
「先程、音と光の話をしたが、覚えておるか?」
「あ、はい。音と光は同じ波とおっしゃいました」
「そうじゃな。ではそこんとトコから展開していけば理解も出来ようが、いつ戻されるかは判らんのじゃから頑張って理解しやれ」
途端に、かみさまの光が増した。パチンと弾けるように視界が真っ白になって、俺は思わず目を瞑った。
初投稿です。新しい物語です。カクヨムに先行投稿しています。
「〇・✕のひみつ」と言うのは、遥か昔、私が大好きだった秘密シリーズを冠しています。
この物語は、異世界転生直前にたまたま迷い込んだかみさまの空間で、ツカサとヒカルが、あらゆる真理を教わる物語です。しかし、かみさまの言ってくるありとあらゆる全ての事象は、2人にとって、全部が全部、非科学的です。本当なのか、嘘なのか、3人?しかいない学習物語の始まりです。




