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第3話 皇帝陛下の「栄養補給」は加減を知らない

第3話 皇帝陛下の「栄養補給」は加減を知らない


「……あの、ゼノス陛下。これ、全部私が食べるのですか?」


目の前の円卓には、湯気を立てる最高級の料理が並んでいた。

金色の縁取りがされた磁器に盛られているのは、幻の怪鳥のポタージュ、魔力回復効果のある深海魚のポワレ、そして宝石のように輝く果実の数々。


どれもフォレスト王国の王宮晩餐会ですらお目にかかれないような、国宝級の食材ばかりだ。


「そうだ。お前は痩せすぎだ、エルナ。頬がこけている。私の城にいる間は、指一本動かすことも許さん。まずはそのスープを一口飲め。私が……あーん、してやろうか?」


「ひゃっ!? い、いえ! 自分で食べられます!」


慌ててスプーンを握る。一口運ぶと、全身の細胞が歓喜の声を上げるような、芳醇で温かな魔力が身体を駆け巡った。


「……美味しい。こんなに温かい食事、いつ以来かしら」


気づけば、涙がポロリとこぼれていた。

あちらの国では、地下の研究室に籠もりきり。食事はいつも冷めたパンと、栄養剤代わりの苦いポーションだけだった。


「エルナ……」


ゼノスの瞳が、一瞬で凍りつくような冷徹さを帯びた。ただし、その怒りは私ではなく、私を追い出した国に向けられたものだ。


「あのような腐った国で、お前はどれほど搾取されていたんだ。……安心しろ。お前を泣かせた代償は、いずれあの国ごと支払わせてやる」


彼は大きな手で私の頭を優しく撫でた。軍人のゴツゴツとした掌なのに、驚くほど慎重で温かい。


「さて、次は肉料理だ。それから、デザートには帝国特産の魔力蜂蜜をたっぷり使ったパイを用意させている。……全部平らげるまで、寝室には帰さんぞ」


「ふ、太ってしまいます……っ」


「構わん。お前がどれだけ丸くなろうと、私が愛でてやる。いや、むしろ私以外の男が手を出せないよう、私が囲ってやるのが一番か」


ゼノス陛下は、さらりと恐ろしい独占欲を口にする。

冷徹皇帝という噂はどこへやら、今の彼はまるで、手に入れたばかりの小鳥を甘やかすのに必死な飼い主のようだった。


一方その頃、フォレスト王国。

王太子カイルは、執務室の机を叩きつけていた。


「どういうことだ! なぜ王城の結界が霧散している!? 明かりが灯らん、魔導コンロも火がつかん! ミーナ、お前が『私のほうが上だ』と言っただろう!」


「ひっ、ひぃ……! わ、私には分かりませんわ! 術式が複雑すぎて、どこを触ればいいのか……!」


王都中の魔導具が、まるで「魂」を抜かれたように沈黙していた。

エルナという唯一の「核」を失った国に、ゆっくりと、しかし確実に崩壊の足音が忍び寄っていた。

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