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第2話 冷徹皇帝の、誰にも見せない「独占欲」

第2話 冷徹皇帝の、誰にも見せない「独占欲」

隣国・ガルディア帝国との国境付近。

降りしきる雨の中、私の意識は途切れかけていた。


王都から不眠不休で歩き続け、錬金術師としての魔力も底を突いている。

「……ここまで、かな」

泥にまみれたドレス、冷え切った指先。

王太子に捨てられ、家族からも見放された「地味な錬金術師」の最期にしては、あまりに惨めだった。


その時。

重厚な馬車の車輪の音と、軍靴の響きが耳に届いた。


「……止まれ。道に何かが倒れている」


低く、地響きのような声。

薄れゆく視界の中で見えたのは、漆黒の軍服に身を包んだ、銀髪の男だった。

氷の粒のような鋭い瞳。彼こそが、戦場を統べる「氷の皇帝」ゼノス。


(ああ、殺される……)

敵国に入り込んだ不審者として処刑される。そう覚悟して目を閉じた。


だが。


「……なんて冷たい体だ。おい、すぐに毛布を持ってこい! 最優先で最高級の癒やし手を呼べ!」


予想に反して、私を抱き上げた腕は驚くほど熱く、震えていた。


次に目が覚めた時、そこは天国かと思うほどの柔らかなベッドの上だった。


「気がついたか」


枕元にいたのは、先ほどの皇帝ゼノスだった。

彼は執務中だったのか、書類を片手に持ちながらも、私の顔をじっと覗き込んでいる。


「ここは……」

「我が帝国の離宮だ。お前、自分がどんな状態で倒れていたか分かっているのか? 栄養失調に魔力欠乏……。フォレスト王国の奴らは、錬金術師を家畜か何かだと思っているのか?」


彼の言葉には、隠しきれない怒りが滲んでいた。

私は戸惑いながら、カサカサの唇を動かす。


「私は……ただの地味な、役立たずの錬金術師ですから。婚約破棄されて、国を追い出された身です」


その瞬間、ゼノスの瞳に鋭い光が宿った。

彼は私の細い手を取り、まるで壊れ物を扱うように、その指先に口づけを落とした。


「役立たず? 笑わせるな。お前が倒れていた場所の周囲……植物が異常な速度で成長し、魔力の残滓が黄金に輝いていた。……お前は、伝説に謳われる『万象を統べる錬金術師』だろう?」


私は息を呑んだ。

隠していたはずの、私の真の能力。


「あんな愚かな国に、お前は勿体ない。エルナ、私の元に来い。お前を傷つける全ての不浄から、私がこの命に代えても守ってやる」


その瞳は、噂に聞く「冷徹」なものではなかった。

そこにあるのは、獲物を見つけた猛獣のような、ひどく熱く、歪なほどの執着だった。

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