第1第 王太子殿下、その「ガラクタ」が国を支えていたのですよ
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第1話 王太子殿下、その「ガラクタ」が国を支えていたのですよ
「エルナ・フォレスト! 貴様のような、華もなければ愛想もない『地味令嬢』は、我が王家の妃には相応しくない。今この瞬間をもって、婚約破棄を言い渡す!」
きらびやかな夜会の中央。
私の婚約者である第一王子・カイルが、その隣でしなだれかかる私の義妹・ミーナの肩を抱き寄せながら叫んだ。
周囲からは失笑と、憐れみの視線が突き刺さる。
ミーナは、私が丹精込めて錬成した『浄化の耳飾り』を身につけ、勝ち誇った笑みを浮かべていた。
「お姉様、ごめんなさいね? 殿下は、お姉様の陰気な錬金術の煙に、もう耐えられないんですって」
私は、ゆっくりと瞬きをした。
視線の先には、カイル殿下の胸元で輝く『守護のブローチ』がある。
あれも私が、三日三晩不眠不休で魔力を注ぎ込み、彼の命を守るために作ったものだ。
「……左様でございますか。カイル殿下、その決断、後悔なさいませんか?」
「後悔? ハッ! 清々するわ! 貴様の作る薄汚い魔道具など、明日からはミーナがより美しく、輝かしいものを作ってくれる。貴様のような『役立たず』は、今すぐこの国から出て行くがいい!」
私は静かに頭を下げた。
髪に隠れて表情は見えない。だが、私の口元は、ほんの少しだけ吊り上がっていた。
「承知いたしました。では、契約に基づき、**私がこの国に提供していたすべての『効果』**を引き揚げさせていただきます」
「勝手にしろ! そんなガラクタ、今すぐゴミ箱に捨ててやるわ!」
私はその足で会場を後にした。
背後で続く、華やかな音楽と嘲笑の声。
彼らはまだ知らない。
この国の城壁を強化し、作物の成長を促し、疫病を防いでいたのは、私が城の地下で密かに維持していた「広域錬金陣」のおかげだということを。
私が王都の門を一歩出た瞬間。
カイル殿下が「ガラクタ」と呼んだブローチが、パリンと音を立てて砕け散ったことも。
「……さようなら。滅びゆく私の故郷」
冷たい夜風の中、私は一人、隣国へと続く森を目指した。
そこで待っているのが、戦場を統べる「氷の皇帝」と呼ばれる男だとは、この時の私はまだ知る由もなかった。
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