異常な日常へようこそ! その後
戦いがあった翌日の昼頃。
そこには現場を調べている警察の姿があった。
「酷えな」
「ええ、何があればこんなことになるのか」
二人の男が目の前を凝視しながら話している。片方は金髪金眼でスーツを着たガラの悪そうな男、もう片方は同じくスーツ――ただしシワシワの――を着て寝癖が立っている、いかにも寝起きです。といった風貌の青年だ。
彼らが見つめているのは晴明たちが吸血鬼と戦った繁華街の大通り。今は完全に封鎖され、一般人は立ち入れないようになっている。
「ついこの前まで、いろんなやつらがこの道を通ってにぎわってたってのによ!今じゃ瓦礫と腐臭が漂っていやがる」
「たしかにひどい匂いですよね。――――にしても、なんでそんなにイラ立ってるんです?戌井さん」
「そりゃイラつきもするさ、なにせ原因の調査もろくにせず、『お前らは現場の封鎖と遺体の処理だけをしろ』なんて言われたらよ……」
「しかも、それだけじゃねえ!」と、戌井と呼ばれた金髪の男はさらに続けた。
「上の連中はこのことをテロリスト数名の犯行としてかたずけるらしい、何があったのかろくな調査もせずに!」
戌井の様子を見て、横にいた青年が落ち着かせるために声をかけようしたが、
「――そう怒らないでください」
後ろからの知らない声に阻まれた。
やってきたのは神父服に身を包んだ長身の男。その服のおかげか、見たものをどこか安心させるような優しい雰囲気を放っている……気がする。
「ちっ!なんで教会の神父がこんなところにいやがる?」
しかし戌井はそうは思わなかったらしい。不愉快だという気持ちを隠そうともせず、神父をにらみつけた。
「この件の詳細は我々教会が責任をもって調査し、その結果テロリストの仕業だと判明してね。そのことを警察庁長官に報告して、一応現場のあなた方にも教えてあげようと思って来たんだよ」
「そうじゃねえ、なんでてめぇが現場に入ってきたか聞いたんだ!立ち入り禁止って文字読めなかったのか?つーか、なんで教会がこの事件を調査したんだよ!?」
「この街に住むものとして警察の手伝いをしただけじゃないか」
「っ!!」
いけしゃあしゃあとのたまう神父に、戌井の怒りは限界に達しようとしていたところ。
「神父様こんなところでケンカしないでください!」
という怒気を含んだ女性の声により、戌井は冷静になる。
「あなたの仕事は迷える子羊を導くこと。ケンカを売ることではないでしょう!」
そう言って神父の後ろから出てきたのは修道服に身を包んだシスターだった。
おそらく神父の部下だろうと戌井は考える。
「神父が失礼をいたしました。報告も済んだので私たちはこれで……」
シスターはお辞儀をしてその場を後にし、神父はどこか残念そうな顔をしてシスターについていくのだった。
「いや~、大変でしたね。ダイジョブですか?」
ボサボサ頭の青年は軽い調子で戌井に話しかける。
「神父は少し嫌な感じでしたけど、シスターさんの方は真面目でいい人そうでしたね!」
「……馬鹿野郎」
「え?」
「あのシスターのがどこがいい人そうなんだ」
先程の会話で何か思うところがあったのか、戌井は二人が歩いて行った方向を険しい目つきで見つめていた。
―― * * * * ――
そこにはある動画がアップロードされていた。
画質は荒く、遠くから撮ったのか姿がはっきりとは見えない。しかしそこに映っているのは間違いなく晴明たちと吸血鬼の戦いの映像だ。
「―――見たか?」
「ああ、見たぞしっかりとな」
「間違いない、あれは魔術だ!!」
「――てことは、『来訪者』かな…にしても、よく撮れたね!」
「偶然現場にいてな、死ぬ思いして撮ったよ」
「あの暴れてるのって吸血鬼?――きもちわる~」
「その吸血鬼と戦ってる二人組、片方は確定として、もう片方は異世界と関係あるのかな?」
「どちらでもいい、捕えなけねば・・・」
「そうだな、捕えて異世界のことを聞きだそう!」
「あの頭のイカれた錬金術師の邪魔が入らなければいいが……」
一人が言葉を発すると津波のように様々な意見が飛び交う。
そこは秘密を知るものたちの集まりだ。
直接顔を合わせて話しているわけではない。
ある者は自宅のパソコン、ある者は電車の中でスマホを開いて、それぞれが別々の場所で文字による会議を行っている。
人種、性別、年齢、目的、全てがバラバラ。しかし共通していることが一つある。全員が異世界について強く知りたいと思っていることだ。
「――――調べよう!それぞれの目的のために」




