表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夏村晴明の非日常  作者: 空き缶
第一章 『異常の始まり』
3/15

異常な日常へようこそ! その2

 翌日、午前10時過ぎ。俺は学校をさぼって、ぼろいアパートの一室で正座していた。目の前には小さな机、そして机を挟んだ対面にはアリス・エインズワースと名乗る女が座っている。



 時間は少し巻き戻り、助けられた直後。


 「魔術…師……?」


 「ええ、その通りです!」


 俺が状況をうまく呑み込めずにいると、女は俺の呟きを肯定し、話始めた。


 「色々と聞きたいことはあると思いますが、今日はもう帰るといい。腕は治って体力もある程度回復しましたが、疲労に関しては完全に抜けきったわけじゃない。暗示の魔術も解けてしまったようですので……詳しい説明は後日するとしましょう」


 女はそう言って住所が記された紙を渡すと夜の闇へと消えていった。



 ――   *   *   *   *   ――



 現在。


 「まず謝らせてください。あのとき私が彼女を取り逃がさなければ、あなたを巻き込むことはなかった。本当に申し訳ない」


 あの時というのは冬休み最終日の公園のことだろう。ということは見えなかったもう一人はこの人だったわけだ。


 「いえ、謝らないでください。取り逃がしたのだってたぶん、半分はおれのせいですし、こちらこそすみません。助けていただいてありがとうございます」


 俺はあわてて訂正し、感謝の言葉を口にした。


 「!……そう言ってもらえると少し気が楽になりますね」


 彼女は顔をほころばせるながら言う。

 その表情に一瞬ドキッとした気がするが、無視して話を続ける。


 「それよりいろいろと説明してもらいたいんですけど……!」


 「そうですね!………まずは私について説明させてください。前にも言った通り、私は異世界から来ました。転移してきた理由ですが、それはある”魔術師”を追ってきたからです」


 「魔術師……」


 俺が呟くと彼女はうなずいて続きを話す。


 「はい。その魔術師はこっちでいうところの、吸血鬼というやつでして、何百年と生き続けている怪人です。先日の転校生はおそらく、ヤツの眷属でしょう――」


 話を聞いて少し納得した。

 あの時、彼女が俺を殺そうとする際、目が赤く輝き爪が伸びるのを見て、俺は彼女を吸血鬼みたいだと思ったからだ。


 そこで、ある疑問が頭をよぎる。


 「そういえば、あなたとその吸血鬼はどうして俺があの学校の生徒だとわかったんですか?」


 「それは魔術を使ったからですね。えんを利用した人探しの魔術なのですが、それを使用し、あなたを探させていただきました……まあ、魔術を使ったとこを見られた程度の縁だと、あの学校の生徒だってことぐらいしかわかりませんでしたが……」


 彼女は少し気まずそうに目を伏せたが、その後も着々と話は続いた。




 「こんなところでしょうか?他にも異世界についてとかいろいろあるのですが、今はどうでもいい」


 彼女は説明を終えると「さて!」と言って手を軽くたたいた。


 「そこで提案・・・・というかお願いがあるのですが、わたしの魔術師探しに協力していただけないでしょうか?」


 「なんで!?」


 俺は驚いてつい前のめりになって聞き返した。


 「私はこの世界をまだ完全に把握しきれてない、現地の方がいると非常に助かります!というか、そうでもなければ事情なんて話すことは無い。暗示をかけ直して終わりです」


 ……確かに。実際、学校の生徒や教師はアリスさんがいることに、何の違和感も覚えていなかった―――かくいう俺も、助けられるまでアリスさんは同じクラスの友達だと思い込んでいた―――にもかかわらず俺に話したのは、つまりそういうとらしい。 


 「私は今夜もヤツに繋がる手がかりを探すつもりです。ぜひ協力してほしい!」


 そのお願いを聞いて、俺の心には驚きと少しの高揚があった。”異世界から来た魔術師といっしょに敵を追うなんて、アニメみたいでカッコいい!”

 そう思ってしまうのは、仕方ないだろう。

 

 ―――――――しかし、昨日の吸血鬼が焼け死ぬ姿を思い出して、つい聞いてしまう。

 

 「見つけたら……どうするんですか?」


 「……」


 彼女は黙ってただまっすぐ見つめてくる。俺はかまわず話続けた。


 「えっと・・・アリスさんには助けてもらったし、感謝もしてます。けど、もし魔術師を見つけてそれを殺そうとしてるなら、俺はそれに協力したくありません」


 「………そうですね、申し訳ありません。こんなお願いして」


 彼女はおれの質問を否定せず、ただ謝った。

 俺自身も、話を断ったことで胸の奥に罪悪感のようなものが沸き、謝ることしかできなかった。


 「すみません。このことは誰にも話しませんので、今日はもう帰ります」


 「謝らないでください、当然のことだです……」



 ――   *   *   *   *   ――

 


 最後にもう一度お礼と謝罪を口にしてアパートから出た。


 家に帰る足取りが重い。

 昨日からいろんなことが起きて疲れているのはもちろんだが、なにより恩人のお願いを断ってしまったのが足を重くさせている原因だと思う。


 (お願いは聞いてあげられないけど、せめて何かお礼の品を渡したりはしたいな…)



縁を利用した人探しの魔術について

この魔術を使用して人探しをする際、探す対象が手練れの魔術師の場合、妨害されたりして居場所が掴めなかったり、逆探知されたりします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ