41話 勘違いです!
学年2位のルナ。どうなるミロク!
「何でって、何回か話したでしょ。ルナと同年代の子で私とやりあえる面白い子がいるって。それがミロクよ。」
「おい。ミロク、私と模擬戦をしろ。実技試験の順位は負けてるし、姉様とやりあえるなら相当強いはず。だけど魔術なら負けないわ。魔術のみでの模擬戦よ。私に魔術で勝てない奴に姉様と交際させるわけにはいかん。」
「ちょっと何勝手に... 」
そう言ったシエラをうちが止めた。
「いいよ。その勝負乗ってあげる。ただしこっちも条件を出す。お互い得意属性以外の使用を禁止というルールを加えよう。」
そうはいうが、内心はわーわーわーわー叫びまくっている。
なにしろ、クラスで孤立していて授業中の先生の質問に答えるとき以外口を開かない、コミュ症陰キャのうちが、容姿端麗で成績優秀、さらにクラスの中心的存在のルナと話してるのだから。無理無理!
それに、初めての対人での魔法戦だ。今までサラか、師匠と剣の試合をしたことはあったが、魔術で人と試合をするのはこれが初めてだ。
一旦落ち着こう、素数でも数えて。
2,3,5,7,11,13,17,19,23,29,31,37,41,43,47,53,57,59
あれ? 違う! 57は素数じゃない!
だめだ。テンパりすぎてグロタンディーク先生と同じ間違いをしてしまった。
「まあいいわ、そのくらいなら。」
「シエラ、ゼノス先生に許可取りに行こう。」
逃げるようにシエラを誘って職員室へ向かった
教員室にいたゼノス先生に許可をもらって第11訓練場を借りた。
先輩が審判をするならいいとのことだ。
「それでは審判は私、ルーが担当する。ルールは得意属性魔術のみで勝負すること。勝利条件は相手の降参または私が戦闘不能だと判断したとき。傷は私の治癒魔術で治せる。安心して闘え。それでは試合開始!!」
「虹の光で我が前の敵を潰せ、レインボーハンマー!」
「数学魔術・スクエア」
うちらは同時に詠唱した。とりあえず様子見のつもりでスクエアを彼女とうちの間に出したが、何と無意味なことだったか。
彼女の魔術、レインボーハンマーは俺の真上に巨大な虹色のハンマーを生み出した。そこでうちは初めて気づいた。今のうちにとってめちゃくちゃ相性が悪い相手だってことに。
今更頭上にスクエアを出したって意味がない。スクエアであの虹色のハンマーが止まるわけがない。だってスクエアは光系の魔術は防げない。
とりあえず横に飛んでハンマーを避けた。
「我が前の敵を食らいつくせ、レインボースネーク!」
4本の虹が蛇のように4方向から襲ってきた。多分、避けてもすぐに追いかけてくる追尾型の攻撃だな。
避けてもダメ。スクエアでは防げない。
なら、収納してしまえばいい。
「数学魔術・四次元収納」
四次元収納で他人の魔術を収納するのは普通はできない。だが、その魔術が自ら収納に入ってくれるなら、話は別だ。レインボースネークがうちに触れる直前に、着弾点に四次元収納の門を開いて収納。
数学魔術が使えるようになった当初は、触れたものを収納することしかできなかったが、少しの練習と工夫で、うちから半径2メートル以内の範囲なら四次元収納の門を開くことができるようになった。
「どうする? 君の攻撃は当たらないよ。」
「あんただって私にダメージを与えられてないだろ!」
「違うよ。わざと攻撃してないんだよ。」
「舐めたことを。我が前の敵を貫け、レインボーアロー!」
そうは言うが正直言って今のうちが使える数学魔術だと攻撃力に欠ける。ルナを戦闘不能にするのは無理だろう。となると降参してもらいたいのだが。作戦がないわけではない。ただ、ルナはルー先輩の妹らしいし、できれば傷つけたくはない。
迫る虹の矢を5本収納して次の魔術を発動する。
「数学魔術・スクエア」
ルナのを囲うようにしてスクエアを出して閉じ込めた。
「何これ? 見えない壁があるんだけど!」
「君の虹光魔術ではその結界は壊せないよ。その代わり、君の魔術はその結界をすり抜ける。君はその場所から1歩も動けない。それに対して、うちは自由に動き回れる。うちが攻撃しても君は避けようがない。君の魔術はうちに届かない。どうだ、降参する気になったか。ルー先輩の妹みたいだしできれば攻撃してくないのだよ。」
「そんな挑発乗らないわよ。姉様から聞いてるんだから、攻撃魔術は苦手なんだって。」
知っていたのか。数学魔術に攻撃魔術は確かにないが、攻撃のしようはある。
「しょうがない。信じないなら見せてやろう。数学魔術・四次元収納」
四次元収納の門を開いて先ほど収納したレインボアローを1本、ルナの顔の数cm横を狙って飛ばした。
四次元収納内では時間が止まっているので収納した時点での運動エネルギーを保持したまま出てくるのだ。
「次は当てるよ。」
「その前にあんたを倒せばいい。我が前の敵を貫け、レインボーアロー!」
今度は虹の矢が10本飛んで来た。全部収納して5本射ち返してやった。今度はちゃんと体にあたるように。もちろん、心臓や脳、その他の大事な器官を避けて。
「我が身を虹の光で守れ、レインボーシールド!」
撃ち返した虹の矢をルナは虹の盾で守った。が、すぐにその虹の盾は消えた。
「どうだ、そろそろ君の魔力がなくなって来たんじゃないか。」
「まだよ。あんたこそどうなのよ。」
「うちか? あと魔力1000くらいは残ってるよ。持久戦に持ち込もうだなんて思わない方がいいよ。」
まあ実際は600ぐらいしかないんだが、どちらにしろ、そう簡単になくなる量ではない。
彼女は先ほどのレインボーシールドがすぐに消えたところを見ると100残っているかどうかってレベルだろう。もうあとレインボーシールドは1、2回しか使えないだろう。そうとなれば簡単なことだ。
四次元収納からレインボーアローを3本飛ばす。
「我が身を虹の光で守れ、レインボーシールド!」
彼女が防ぐ。
また四次元収納からレインボーアローを3本飛ばす。
「我が身を虹の光で守れ、レインボーシールド!」
また、彼女が防ぐ。
今度は四次元収納からレインボーアローを2本飛ばす。
彼女は魔力がほとんどなく、スクエアに囲まれているから避けることもできない。
「我が前の敵を貫け、レインボーアロー!」
最後の魔力を使ってレインボーアローを射って相殺したか。
だが、残念。うちはまだ1本収納の中に残してある。
魔術が使えなくなってスクエアの囲いの中で板挟み状態のルナに向かって言う。
「降参するかい? それとも自らが放った矢で貫かれたいか?」
「私はまだ戦える!」
「魔術を発動する魔力も残ってないのによく言うよ。まあ、降参しないならしょうがない。数学魔術・四次元収納」
虹の矢が彼女を貫いた。
スクエアを解除したらルナが倒れた。
「試合終了。勝者ミロク。」
「数学魔術・完全数・6」
うちが魔術をかけるとルナはすぐに傷が治っていった。
「負けたわ。姉様との交際は認めてあげる。」
「あのー。ずっと言えなかったんだが、ミロクと先輩は別に付き合ってはないぞ。」
「そうなの! 姉様の話によく出てくるから私てっきり付き合ってるものだと思ってた!」
「ミロクは私の友達で、ライバルだよ。可愛い後輩であることには変わりないけど。」
それからうちらは仲良くなった経緯などを話してその場はお開きとなった。
「勘違いしてすみません。しかも勝負にまで乗ってもらって。」
「いや、こちらこそ久々に楽しい闘いができたよ。ありがとう。では。」
正直ギリギリの戦いだった。負けることはなかっただろうが、勝てたのはたまたまだった。
もちろん、矢が足りなくなった時のことは考えていた。スクエアとトポロジーを応用して、触手のように彼女に巻きつけて擽って、彼女を無理矢理降参させるつもりだった。
だが、そんなことしてしまえばルナの女としての尊厳を侵しかねないし、ルー先輩に嫌われてしまうかもしれない。
そこまでするなら降参して負けた方がいいような気もする。
その後、うちはフートキューブで今回の闘いで消費した魔力を必死で取り返したのだった。
勘違いから生まれた大バトル。楽しんでいただけたら幸いです。




