豹変
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一通りアリバイの裏を取った私達四人は、一旦警視庁の会議室へと戻った。
「うーん、犯人が絞り込めませんねえ……」
私が、机の上に広げた捜査資料を見ながら言うと、御厨さんも難しい顔をして呟いた。
「ああ……一人だけ、犯人候補から外して良さそうな人がいるんだけどな……」
私は、目を見開いて自分の右隣にいる御厨さんの方に視線を向けた。私は一人も除外できてないんだけど……。
「取り敢えず、四人のアリバイを整理してみるか」
御厨さんはそう言って、手帳にメモした四人のアリバイを眺めた。四人のアリバイを纏めると、こうなる。
・織絵さん 十二時頃友人と別れてからのアリバイ無し
・南さん ジムを出た十時頃からテレビ局に入る十一時頃までのアリバイ無し
・東山さん 施設を出た十時四十分頃から両親と会う十二時二十分頃までのアリバイ無し
・西村さん 出社する十時頃より前のアリバイ無し
そして私達は、糸村さんのスマホの履歴に視線を向ける。
「事件の日の午前十一時頃に糸村さんがメッセージを奥さんに送っているから……普通に考えれば、その時間まで糸村さんは生きていたという事になりますよね」
堀江先生が、人差し指を顎の辺りに当てながら言う。もし糸村さんがその時間まで生きていたのなら、犯人は織絵さんか東山さんという事になるが……。
「……もう少しスマホの履歴を見てみよう」
そう言って、御厨さんが鑑識さんからの報告書に目を落とした。花音さんも身を乗り出してテーブルの上の報告書を見つめている。
目につくのは、糸村さんと織絵さんのメッセージのやり取り。糸村夫妻は、頻繁にメッセージのやり取りをしていたようだ。事件の一か月程前にも、『今日は何時頃帰れそう?』という織絵さんに対して、糸村さんは『十二時は超えそう。今日は夕飯、作らなくて良いよ』と返している。
織絵さんとのやり取りの他は、仕事関係のメールが多く、タレントのスケジュール調整について等の内容が書かれている。
西村さんからもメッセージが何通か届いており、『織絵が躊躇するのも分かるけど、もう一度織絵を説得してくれないかな?』という内容が目に入った。
「うーん、やっぱりこれだけでは犯人は絞り込めませんね。……花音さん、何か気付いた事はありませんか?」
私が花音さんの方を向いて言うと、彼女は「交代してみます」と応えた。そして、花音さんは虚ろな目になったかと思うと急に目つきを鋭くして、机に肘を突く。
両手の指を絡ませた花音さんは、妖しい笑みを浮かべると、口を開いた。
「やあ、小川君、御厨君、堀江君」
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