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経緯

読んで頂けると嬉しいです^^

「……でも、確実に私が犯人だって言い切れます!? 可能性は低いけど、もしかしたら文香はピザ屋で牛乳が使われていないサイドメニューを頼んだかもしれないし、刑事さんの知らない交友関係があって、糸村さんが『グリーンクローバー』の元メンバー以外の人物と食事をしていたかもしれないじゃないですか!!」


 そこで、私が口を挟んだ。


「では、西村さん。事件当日に履いていた靴を調べさせて下さい」

「……靴……?」

「はい。あなたの靴の裏に、珍しい植物の花粉や種子が付いていないか調べます」


 現場となった公園の花壇には、海外から輸入した珍しい花が植えられていた。その花粉や種子が現場の地面に散らばっていたら、それが西村さんの靴の裏に付いたかもしれない。秀一郎さんは、花粉や種子が、西村さんが現場にいた証拠になると考えたのだ。

 もちろん、西村さんがいつあの公園に行ったかは分からない。しかし、糸村さんと交流があり、事件当日のアリバイも無く、花を植え替えた後に公園に行った事があるとなると、西村さんを無実だと思う人は少ないだろう。


「もしかしたら、あなたが事件当日に来ていた服にも、公園にいた痕跡が残っているかもしれませんね。既に洗濯はしているでしょうが」


 私の言葉を聞いた西村さんは、身体を震わせる。しばらく取調室に沈黙が流れた後、西村さんはポツリと呟いた。


「……私はただ、『グリーンクローバー』としてまた活動したいだけだったのに……」




 グリーンクローバー解散後、西村さんは以前から興味のあったアクセサリーを製造・販売する会社を立ち上げ、今まで頑張って経営してきた。

 しかし、初めは西村さんの知名度もあり会社の業績は良かったものの、徐々に売り上げは減り、最近は経営に困っていたらしい。


 そこで西村さんが考えたのが、グリーンクローバーの再結成だ。グリーンクローバーには根強いファンが多い為、再結成すればまた稼げるようになると思ったらしい。

 西村さんは会社の経営権を部下に譲り、自身は音楽活動で稼ごうと思ったのだが、そう上手くいかなかった。織絵さんが再結成を拒んだのだ。

 ただでさえ織絵さんは人付き合いが苦手で、音楽活動が出来るのでなければ芸能界になどいなかった。それに加え、織絵さんは東山さんのストーカー被害の件で、すっかり芸能界に嫌気が差してしまっていた。グリーンクローバーを再結成する気など微塵も無い。


 それで西村さんは、織絵さんの夫である糸村さんに織絵さんを説得してもらおうと思ったのだ。

 しかし、何度糸村さんにメッセージを送っても、電話をしても、糸村さんからは「織絵が嫌ならこちらからは何も言えない」と言われるばかり。


 そして事件当日。西村さんは朝食を取らずに車で会社へと向かった。途中でピザ屋さんを見かけ、立ち寄ろうとした所、側にあるコンビニに立ち寄ろうとしていた糸村さんを見かけ、声を掛けた。

 それから二人は一緒にピザ屋で食事をし、公園へと向かう。西村さんが、糸村さんと二人で人目が付かない場所で話したいと言ったのだ。

 しばらくグリーンクローバーの再結成について話し合っていたが、話し合いは徐々にエスカレートし、激しい口論となる。


「織絵が怖気づくのも分かるけど、再結成は織絵にとっても悪い話じゃないの!」

「確かにそうかもしれないけど、僕は織絵の気持ちを一番大事にしてあげたい!」

「大丈夫よ。織絵だって、二年といえども芸能界にいたんだもの。きっと上手くいくわ」

「そういう問題じゃない! 織絵は、平穏な日々を過ごす事を望んでるんだ。……君は再結成が織絵にとって悪い話じゃないと言っているけど、本当は君自身の事しか考えてないんじゃないのか? 君の会社、経営が上手くいってないそうじゃないか!?」


 その糸村さんの言葉にカッとなった西村さんは、護身用のナイフで糸村さんを刺してしまった。東山さんのストーカー事件があってから、西村さんはナイフを携帯するようになっていたのが仇となった。


「う……」と呻き声をあげて、糸村さんが倒れる。それを見た西村さんは、自分のしでかした事に震えた。

 このまま救急車や警察を呼ばれたらおしまいだ。西村さんは、糸村さんの胸に刺さったナイフを抜いた。返り血が付いたが、来ていたジャケットを脱いで誤魔化した。

 糸村さんの絶命を確認した後、西村さんはナイフを持って自分の車に戻る。そして、車を運転して近くの川まで行くとナイフを捨てた。そして、元々車に積んであった別のジャケットを羽織ると、何食わぬ顔で出社し、仕事を始めたのだ。




「ごめんなさい、ごめんなさい……」


 自供した後、西村さんはずっとそう呟いていた。

次回で完結です!

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