6 再び繋がるあの日の記憶と希望
翌朝、ライザン長老に呼び出された。
「昨日は本当に助かった、礼を言う灯生殿。」
「そんな大したことはしてませんよ。」
昨日までとは表情が安心した顔つきになっていた。それは長老を囲う兵たちも同様だった。
「それで少々聞きたいことがあるのだ。」
「なんでしょうか・・・。」
「そこにいる魔王についてだ。」
「それについては昨日教えてもらった。召喚のことだ。召喚されたということは戦争になるだろう。」
「あー。それも当分大丈夫かと・・・。」
「なぜそう言い切れる??」
「ここに勇者もいるからです。」
「はえぇーーー!?」
なんともきょとんとした表情。あれ、言ってなかったっけか。
「それはどういう意味なんじゃ!!」
「そのままの意味ですが・・・。ほら、アポロン、ご挨拶して!」
小さなアポロンが長老の前に立つ。
「えっと。名前はアポロンと言います。なんか、ゆうしゃ?って呼ばれてます。灯生お兄ちゃんが怖い人たちから助けてくれました。前の世界に戻れないので一緒に旅をしてます。」
「アポロン、よく言えたねぇ!えらいなぁ!!よしよし!!」
長老は依然としてきょとんとしている。
「ということなので、当分大丈夫かと!」
頭を抱えていたが、だんだん落ち着きを取り戻した様子だ。
「お主には驚かされてばかりだ。まぁ、魔王と勇者が同行しているならお主の言う通り、戦争はひとまず起きじゃろ。そういうことは早くいってほしいぞ。心臓が持たん。」
「すみませんー。」
「まぁとりあえず、朝食でも食べて来い。今後について話したい。」
「分かりましたー!」
ーケルバ城 食堂にて。
ケルバ城の食堂は、朝の柔らかな光に包まれていた。
木の梁から吊るされた燭台にはまだ炎が残り、長テーブルの上には昨夜の戦いを終えた者たちの安堵の声が穏やかに交じっていた。
王国軍の脅威がひとまず遠のいたその朝、灯生たちは食事をとっていた。
そこへ、リアの叔父である虎族のカイがゆっくりと食堂に足を踏み入れる。
「カイおじちゃん!」
リアが呼び留める。
みんなの会話が途切れ、空気が一変する。
カイは一歩ずつ、ゆっくりとテーブルへ近づき、落ち着いた声で口を開いた。
「皆、少し話をさせてほしい。」
顔つきが真剣だ。どうやらリアについてらしい。
「カイ、何かあったのか?」
カイは一瞬ためらい、胸中の重さを感じさせるように言葉を選んだ。
「リア、落ち着いて聞いてほしい。俺の兄、いやリアの両親は生きている。虎族の里で無事に暮らしていると確認した。」
リアの黒い瞳が震え、何かを確かめるようにカイを見つめた。
「それって・・・本当なの・・・?」
声はかすれ、感情が溢れそうだった。
俺はリアの頭にそっと手を置く。
「嘘じゃない。虎族の里長からの情報だ。」
まさか生きているとは。当時出会った頃はもう諦めていた。
「リア、両親に会いに行こう。お前ひとりじゃない」
ルーナも微笑みながら言葉を添える。
「私たちみんな、一緒ですよ。」
そんな中、ロータスは冷静だった。
「油断は禁物です。虎族の里が平穏でも、王国軍はまだ侮れません。準備は怠らずに行きましょう。」
リアは胸の中で揺れる感情を抑えきれず、瞳を伏せた。
「リア、ずっとパパとママを考えてた。諦めきれなくて・・・。でも、まさか、本当に生きていてくれるなんて。会いに行きたい!ご主人様、みんな、一緒に来てくれるにゃ?」
みんなが頷いた。当然という表情だった。
「王国軍のことがあったから伝えることを躊躇っていた、すまない。リアのことを救った灯生たちには感謝している。恩人だからこそ、真実を伝える義務があったのだ。灯生、リアを頼むぞ。」
灯生は立ち上がり、力強く宣言する。
「勿論だ!任せておけ、カイ!よし、行こう。リアの故郷に。虎族の里に!」
食堂の窓の外、朝陽が森の緑を黄金色に染めていた。
その光の中、仲間たちは決意を新たに、リアの両親と再会するための一歩を踏み出そうとしていた。
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