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水底  作者: 南雲葵巴
8/20

もう1人のヒーロー

「南乃花!」

 遠くから秀治が走り寄ってくる。南乃花のピンチには必ず駆けつけてくれるもう一人のヒーロー。いつもタイミングよくきてくれるから、センサーでもついてるの?とからかったこともあったが、今はその察知能力が嬉しかった。

「秀治!リングが…あの男が…」

 恐怖のあまりうまく言葉が紡げない。秀治はそんな南乃花のことを優しく包み込むように抱きしめる。すると我慢していた涙がこぼれ落ちた。怖かったのだ。得体の知れない男につけられていることも。突然見つけたシルバーリングも全て怖かった。それ以上に、シルバーリングに恐怖を抱く自分の感情が嫌だった。これは南乃花と雅也を繋ぐ大切なものなのに、今は不気味で怖いのだ。南乃花は秀治を押しのけると震える手でシルバーリングを秀治に見せた。すると秀治の顔が驚きで歪む。

「これ…南乃花が雅也に贈ったものじゃ?」

「そうなの。こんな歪な指輪。他にない。さっき昨日のストーカーが現れて、そいつが立っていた場所に落ちてた。もしかしたら雅也はあの男に殺されたのかも!」

 そう。雅也が死んだのは事故ではない。他殺なのだ。睡眠薬で意識を失ったところを首を絞められて海に投げ入れられたらしい。葬儀の日には首元を隠して棺に収まっていた。手の跡が生々しいからということだった。こんな計画的殺人すぐに犯人が捕まるだろうと言われていたが、警察は今も犯人を捕まえられていない。なんせ殺人が行われたのが深夜で、美代は雅也がその時間に家を抜け出したことさえ気づいていなかったから。田舎町なので人が動き出すのは早朝五時頃。全ての人が寝静まっている三時頃行われた犯行のため、犯人の特定ができないのだという。スマホもポケットに入っていたが海水で壊れて証拠を引き出すことができなかったらしい。

「ねえ、秀治。これって一体どういうことだと思う?私にシルバーリングを渡すためにあの人が現れて、過呼吸になったわたしの背中をさすって何もせずに消えるなんて、何がしたいのか意味がわからないよ!怖い…秀治」

「落ち着いて南乃花。大丈夫。何があっても南乃花は俺が守るから。だから、そのリングは俺が預かるよ」

 秀治は南乃花の手からシルバーリングを抜き取ろうとしたが南乃花はさっと手を引っ込める。これは誰にも渡してはいけない気がしたから。

「ううん。これは私が持つ。雅也もきっとそれを望んでる。ありがとう。気を遣ってくれて」

「いいよ。南乃花にとって大切なものだろうから。俺こそ差し出がましいことしてごめん」

 秀治は悪くないのに謝ってくれてた。その時だ。頭の片隅で何かが引っかかったがそれが何かが言語化できなかった。この指輪に関すること。そんな気がしていたが、最近は色々なことが起こって頭が混乱しているのかもしれない。南乃花は秀治に助け起こされると肩を抱かれて家に向かって歩き出した。

二人が歩み去った後、黒ずくめの男は二人を見つめてスッと消えてしまった。

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