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水底  作者: 南雲葵巴
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坂道

 神崎雅也は善良を固めて人間の形にしたような人物だった。人好きする穏やかな顔立ちで、柔らかい栗毛と茶色がかった優しい瞳はどんな人にも好かれる。呼吸をするように善行をかさね、小さな海沿いの田舎町で、彼のことを知らない人はいないくらいの人気者。だが本人は決しておごらず常に謙虚であった。

「また新聞に載ったね」

 登校途中に南乃花は雅也に言うと彼はなんでもないふうに言う。

「変だよね。当たり前のことしただけになのに、皆んな大袈裟なんだよ」

(その当たり前がどれくらい大変なことかいくら言っても分からないんだろうな)

 この幼馴染殿は先日海で溺れた子供を助けたことで表彰されたのだが、本人はなぜそれくらいのことで評価されるのか本気でわかっていない。だが、南乃花はそこが好ましく思っている。2人揃って歩いていると周りの視線が突き刺さる。町一の美少女とヒーローが連れ立って歩いていると目立つのは必然だったが、2人はそのことには慣れているため特に気にせず学校までの坂道を歩く。

「まてよ。一緒に行こうぜ」

 その時後ろから秀治の声が聞こえてきた。彼が加わり3人で歩くとまるでモーゼのように前を歩く人達が脇によけて道を譲ってくれる。

(こんなに注目されても雅也も秀治も全く気にしていないのがすごいわ。私はちょっと嫌なのよね。こんなに目立つのが)

 南乃花はその容姿や雅也と秀治が幼馴染ということで、幼い頃から一歩引いたところからしか付き合ってくれる学友しかいなかった。勇気を出して南乃花から話しかけてもそこだけでおわり、友達にはなってもらえないので、もう友達を作るのは諦めていた。だが小学6年の時、東京から越してきた伊野菜摘が来てから状況が変わった。菜摘は非常にコミュ力が高く、転校初日に南乃花に友達宣言をしてから本当に友達になってくれた。

「明日は菜摘と隣り町買い物に行くの。雅也と秀治はどうする?」

雅也と秀治は首を振る。

「せっかくだから女の子2人で行っておいでよ。いつも俺たちがついて行ったらたのしくないだろ」

「そんなことないけど、まあ、確かに女の子2人の方がたのしいかな」

 南乃花は初めて出来た同性の友達をとても大切にしている。そのことは雅也と秀治も理解していたから遠慮したのだ。学校の目の前に着くと校門で菜摘が待っていたので、南乃花は2人に手を振ってから菜摘の元に走った。

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