4.
ユリアは、歩きながらキノアに、母親のことを聞いた。
「キノアのママは、どんな人?」
「うーん。ママは綺麗で、いつも人の中心にいるよ。パパは、ママのこと、情熱的で、欲しいものは、なんとしても手に入れる人って言ってた」
「ママは、キノアちゃんには、優しい?」
「うーん。時々怖い。夜とかね、寝ないと火をつけて髪を燃やそうとするの」
「火をつける?」
「うん。ママね、火を起こすのが上手なの。火を起こす油を何種類も持っていて、時々、手から自力で火を起こせるの」
キノアの話を聞き、ユリアは父親の話を思い出した。
ユリアは癒しの力を持ち、父親は透視能力を持つ。世界には、様々に力を持つ者がいて、時には火を操る、火の使い手もいると、父親は言っていた。
もしかしたら、キノアの母は、火の使い手なのかもしれない。
ユリアはそう考えた。
そして、なぜ、アツロウに攻撃をするのかを考えた。
「ねえ、キノアちゃん。ママは、いつからパパを殺そうとしているの?」
「ずっと前から。ママは、よく言ってた。パパを愛してはいないって。ママには、本当に愛する人がいて、パパとは仕方なく結婚したんだって」
キノアは俯き、悲しそうな目をして言った。アツロウの切れ長の目とそっくりであった。
「本当に愛する人がいるのに、なんでパパと結婚したのかな、、」
ユリアは、アツロウを想うと胸が苦しくなっていく。酷い人だと思えた。
「パパが伯爵だから、結婚したんだよ」
「え?」
「前にそう言ってたの、聞いたことがある」
政略結婚的なもの?でも、アツロウの妻はフランスの旧家の家柄で、それだけでも立派であるのに、、。
ユリアがあれこれと考え巡らせていると、キノアの家に到着した。
キノアは立派な門の前にかかる、チャイムを鳴らした。
すると中から、キノアの母が出てきた。
金髪と青い目。唇は真っ赤なルージェを塗り、青いドレスを着ていた。
ユリアは、キノアの母、ミレーユを一目見た途端に感じとった。彼女は、火の使い手であった。
青いドレスの後ろから、燃えるような赤い光が、輝き放っている。
かなり強い力の使い手であると感じられた。
キノアはミレーユに、自動車事故のことを話した。
「あなたは、ユリアさんね。キノアからよく聞いているわ。キノアを助けて下さったみたいで、ありがとうございます」
ミレーユは丁寧にお辞儀をして礼を言っていたが、目は笑っていなかった。
「いえ、無事で良かったです」
ユリアは、ミレーユの華やかな雰囲気に気後れをして、一歩下がった。
「お茶でも、どうでしょうか?」
ミレーユの誘いを、ユリアは丁重に辞退した。あまり長居をしたくなかった。
「せっかくですが、お店を開けてきているので、またにします」
そう言って、ユリアはキノアに、バイバイと手を振り、急ぎ足でその場を去った。