人形姉妹 第2話
待に胸を膨らませながら音羽ちゃんの家の門を潜る。
「素敵よ。貴女と私はお揃いね。」
奥から音羽ちゃんの声がする。小春と遊んでいるのだろうか?
「綾子お姉ちゃん!!」
奥から音羽ちゃんが出てきた。音羽ちゃんの腕には人形が抱えられていた。クリスティーヌと同じ西洋の人形だ。
(嘘でしょ?!)
音羽ちゃんの花柄のドレスは人形のドレスとそっくりだ。
私達は音羽ちゃんの部屋に通される。
「音羽ちゃん、久方ぶりやな。」
「実はこないだこの娘がうちに来はったんよ。アマリリスって言うんよ。」
「答礼人形ね。うちにも来たわ。クリスティーヌって言うんやけど。」
「あのね、今うちの女学校で流行っとるんよ。答礼人形とお揃いの洋服着るの。エスごっこ言いはるんよ。」
「よく小春としてはったな。ところで小春はどないしたん?」
部屋を見渡すが小春の姿が見えない。
「あの娘ならとうに捨てたわ。」
(今なんて?!)
音羽ちゃんの口から衝撃的な言葉が出る。
「音羽ちゃん、捨てたってあんなに可愛がってはったやろう。」
「だって綾子ちゃん、よう考えておくれやす。今度級友とお姉様呼んでお茶会するんよ。皆が西洋のお人形さん持ってきはるのにうちだけ日本人形なんはえらい恥ずかしいわ。」
そんな理由で?小春の事大事にしてくれると思ったから私は止めなかったのに。何も捨てる事ないじゃない。
「やめて!!助けて!!死にたくない!!」
その時小春の声がした。それと同時に部屋に煙が入ってくる。音羽ちゃんと綾子ちゃんはアマリリスと私をそれぞれ抱いたまま窓の外を見る。女中が焚き火をしている。
(小春!!)
女中は火の中に小春を投げ込んだ。
「熱い!!熱い!!」
小春は叫びながら顔が黒焦げになっていく。私は黙ってみてる事しかできなかった。音羽ちゃんは窓を閉める。
「せっかくのドレスがすすで汚れてしまったわ。」
音羽ちゃんは自分のドレスの心配しかしていない。
「許せない。」
私は一言呟く。
「綾子お姉ちゃん、何か言うた?」
「いえ、何も。」
1週間後、私は綾子ちゃんと一緒に病院へ向かった。音羽ちゃんの家が火事になったのだ。病室に行くと音羽ちゃんは顔中に包帯を巻いていてベッドに横たわっていた。起き上がると音羽ちゃんは看護婦さんに包帯を取ってもらう。
「音羽ちゃん?!」
「あまり見ない方が宜しいかと。」
綾子ちゃんは気付いた看護婦さんに連れられ病室を後にする。音羽ちゃんは顔中火傷の跡だらけだった。私はほくそ笑む。
「小春、これで音羽ちゃんとお揃いよ。」
FIN