人形姉妹 第1話
大正15年。京都。
私の名前は小雪。隣にいるのは妹の小春。私達はいつも一緒。いつも隣同士なの。お揃いの長い黒い髪、だけど振り袖と打掛、それから髪飾りは色違い。私は水色の着物に白い打掛、白い椿の花の髪飾り。小春は桃色の着物に赤い打掛、赤い椿の花の髪飾り。平安時代に公家だったこの屋敷の娘のために私達はこのお屋敷にやって来た。
「叔母様!!」
今日は音羽ちゃんが遊びに来た。音羽ちゃんっていうのはこの屋敷の女主人の姪っ子。女主人と言っても夫が軍の司令官で今は出征中。だから奥様である彼女がこの家を守っているの。
「叔母様、小春ちゃんと遊んでもええ?」
「ええよ。」
音羽ちゃんは小春を抱きあげる。音羽ちゃんが来ると小春も笑ってるように見える。
「音羽ちゃんは小春ちゃんが好きやわな。」
叔母様が尋ねる。
「うん、大好き。小春ちゃんはうちの大事なお友達やわ。」
「音羽ちゃん、その着物小春ちゃんとお揃いやわな。」
音羽ちゃんの着物に気付いたのはこの家の長女の綾子ちゃん。高等女学校の2年生。音羽ちゃんは桃色の着物に赤い打掛。髪飾りはつけていないけど着物に赤い椿の模様。小春と一緒。
「音羽ちゃんと小春ちゃんはエスやわな。」
「綾子お姉ちゃん、エスって何や?」
「エスって言うんはね、英語のSisterの頭文字を取って女学校で上級生と下級生が特別親しい関係になる事を言うんよ。仲良しの証に髪型や髪飾りをお揃いにするんよ。音羽ちゃんも来年女学校に上がるんから分かるわ。」
「じゃあうちがお姉様で小春ちゃんが妹やね。」
「音羽ちゃん、そんなん小春ちゃんが好いとるならあげるわ。」
「ほんにええの?!綾子ちゃんありがとう。」
小春は私には見せない満面の笑みを音羽ちゃんに見せている。小春は音羽ちゃんに抱きかかえられ、去っていく。小春と離れ離れになってしまった。けど小春が音羽ちゃんを選んだなら仕方ない。小春、音羽ちゃんと幸せにね。
あれから1年が経った。昭和2年の4月。1人ぼっちになった私の元にお友達ができた。
「さあ、クリスティーヌ。今日から彼女が貴女のお友達よ。」
クリスティーヌという金髪に巻き髪に白いドレスの少女がやって来た。彼女は私の隣に座った。
「ごきげんよう。わたくしクリスティーヌと言いますわ。」
「ごきげんよう、小雪です。」
クリスティーヌはアメリカという国から来たそうだ。
ある日綾子ちゃんが音羽ちゃんの家にお使いを頼まれた。
「小雪、一緒に行きましょう。久々に小春に会いたいでしょ。」
私は綾子ちゃんに連れられて音羽ちゃんの家に向かう。小春は元気だろうか?