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近代乙女怪談物語集  作者: 白百合三咲
13/18

七色マーメイド 第2話

 大正10年。

その日は雨が降っていた。奈月は親友の水無月れいかの屋敷を訪れていた。彼女の家は公爵家で祖母から代々水無月家に伝わる話を聞いていた。

「アンデルセンの人魚姫のお話みたいね。」

「でも少し怖いわ。」

「しかしこの話には続きがあるんだよ。」

 妹姫が消えた後6人の姉姫は魔女の元へ向かった。そこで妹は恋に破れて消えた事を知った。彼女達も人間の足を手に入れ人間界へと向かったのだ。妹を消した元凶の女を探し出し7人目の妹の代わりにするために。

「6人の姉姫達は袴姿でそれぞれ違う色の振り袖を着ておる。」

長女は青、次女は赤、三女は黄緑、四女は黄色、五女は桃色、六女は白い振り袖をそして皆同じ緑色の女袴を履いているという。

「彼女達は常に6人で行動しておる。」  

水無月家は妹姫が結ばれなかった紳士の子孫であり雨の日は絶対に女は外に出ない決まりだ。祖母は女学校時代一度だけ級友と傘を挿しながら帰った事が級友と分かれ1人になったところを6人の姫に襲われた。海に引きずりこまれそうになったところを地元の漁師に助けられた。

「これがその時のものじゃよ。」

祖母が右腕を見せる。腕には捕まれた跡が残っていた。



 夕方れいかは奈月を送って行こうとする。雨だと袴の裾を濡らしてしまいそうだから水無月家の馬車で家まで送っていった。

奈月の家に着くとれいかは辺りに誰もいない事を確認して奈月と一緒に馬車を降りる。

玄関まで傘を挿して一緒に歩く。

「ありがとう、れいかさん。それから」

奈月はれいかが着てるワンピースの袖を引っ張ると耳元で囁く。

「気を付けてね。」

祖母の話を聞いて心配してくれてるのだろうか?

「大丈夫よ。奈月さん。」




 その後再び馬車に戻り家路へと急ぐ。しかし道中馬車が雨ですりっぷしてしまう。

「どうなさったの?」

れいかは傘を挿して外を出る。

「お嬢様、雨で滑り安くなっているので今タイヤにチェーンを巻きます。どうぞ中でお待ち下さい。」

れいかが馬車に戻ろうとした時

「誰?!」

れいかはワンピースの裾を引っ張られる。

そこには短髪に白い振り袖に緑の女袴の少女がいた。

(白い振り袖に緑の袴?)

それは人魚の姉姫達の中の六女の格好だ。

「あの、お姉様を見かけませんでした?」

彼女は口を開いてれいかに尋ねる。れいかは安堵した。彼女は人魚の姉姫ではないのだ。

彼女達は声を引き換えに人間になった。それに彼女の周りには誰もいない。彼女はお姉様とはぐれてしまったのだろう。

「貴女1人?」

「お姉様と一緒だったのだけれど。」

「どこではぐれたの?」

「向こうの海岸」

れいかは少女を自分の傘に入れると海岸へと向かう。

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