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つる植物の日常  作者: 朝顔 from Saxifrage
1/1

序説「序説というか除雪みたいだね」

「……ということがあったんだよ」

 炬燵に乗せられた籠にはミカンが無理やり乗せられている。

 半纏に身を包み、黙々と籠の中のミカンを消費する彼女らは、今日も今日とて他愛もない話をする。

「ふーん、それは大変だったわね」

 短髪に眼鏡をかけた女は、黙々と髪にペンを走らせる。真剣な眼の先にあるイラストには彼女の表情とは間反対の、デフォルメ化された少女たちが映る。

「そうなの! 夕顔もなんとかしてあげてよ!」

 もう一方の長髪の女は、目の前のパソコンに向かって文字を打ち続ける。彼女は目を画面と夕顔と呼ばれた女をしきりに移動させる。決して手は止めないが、口を止めることもない。

「あ、ごめん。朝顔の話、ちゃんと聞いてなかった」

 夕顔は手を止めて、きょとん、と朝顔を見る。

「え、うそ! 私かなり長い時間離してたよね!?」

「うん、長かったから途中から聞いてない」

 朝顔も手を止めて夕顔を見据える。彼女たちは顔を見合わせた。


 これは、朝顔と夕顔の日常。


「それでね、大学の時の後輩に、斉藤くんだっけ佐伯くんだっけ……とにかく『さいなんとかくん』がいたんだよ」

「ああ、いたね。名前覚えてないけど」

 朝顔は手を止めて、話を続ける。一方の夕顔は気だるげに絵を描き続けている。

「そのさいなんとかくんのインスタ見たんだけど、このまえ埼玉に旅行してたらしいのよ」

「うん? 埼玉なんだ。東京じゃなくて?」

「そう、敢えて埼玉にしたんだって」

 夕顔は手を止めることなく話す。

「……けっこう珍しいよね」

「そう、夕顔って関東出身だよね。埼玉って何か「あそこは何もないよ」……あ、はい」

 朝顔が話しているのを遮る。しかし依然手は止めない。

「西から向かうなら、東京行くっていうより、埼玉に行った方がなんか少しだけ遠出した感が増えるでしょ? だから敢えて東京じゃなくて埼玉に行ったんだって。あ、これ甘いやつ」

 朝顔は天井を見上げてミカンを食べながら話す。部屋の隅に置かれた愛媛ミカンの段ボールにはまだ大量のミカンが残されている。

「それで、埼玉のどこに行ってきたの?」

 夕顔もやっと手を止めてミカンに手を伸ばす。紙が汚れてしまわないように、隅に仕舞ってミカンの皮をむき始めた。

「どこにも行かなかったらしいのよ! 面白いよね!」

 朝顔は笑いながら話す。一方の夕顔は顔をピクリとも動かさず、黙々とミカンの皮をむいている。

「何のために旅行行ったんだろうねって思った! 夕顔、どう思う?」

「なんか、除雪みたいだね」

「ん? 除雪?」

 夕顔はパクパクとミカンを食べ続ける。

「そろそろ寒い季節になってきたから、除雪が必要だよね。あれって、外がすんごく寒くて震えながら作業してるのに、いざひと段落ついてる頃にはすんごく暑くなってるでしょ。運動してるから仕方ないんだけど、それで風邪ひいてしまったら元も子もないよね」

 夕顔はミカンを食べ終わると、次のミカンに手を伸ばす。

「……え、それだけ?」

「うん、それだけだよ」

 ミカンの筋が嫌いな夕顔は、真剣な眼でミカンの筋を取る。

「え、絶対他にもあるでしょ!」

 一通り、筋を取り終えると夕顔は満足げな顔で朝顔に言った。

「だって、この話って『序説』なんでしょう?」

「うっわ、ここでメタ発言……」


 お後がよろしいようで。

 この話は、朝顔と夕顔の他愛もない日常を描く物語です。

初めまして、Saxifrageと申します!

小説・詩担当の『朝顔』とイラスト担当の『夕顔』の2人で創作活動をしています!


軽く自己紹介します!


Saxifrage

朝顔

23歳女性。愛媛県出身。高校生の頃から小説を書くのが好きで、ネットに投稿してます。

私です!笑


夕顔

26歳女性。神奈川県出身。絵を描くのが好き、以上。とのことです!

めっちゃサバサバしてます……


不定期に更新しますので、ぜひご覧ください!

Twitterで夕顔さんのイラストも見られますので、ぜひどうぞ!

@rampicante_793

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