表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生するのなら欲望を!!〜転生後の姿は男の娘〜  作者: 四葉のアミア
第3章 死神としての僕
80/84

幼き神同士

お久しぶりです

 


「やぁ、死神さん」


「君は?」


 人形に取り憑いていた怨霊達を全員浄化させ終わった僕は薄赤色の光が漏れる部屋へと辿り着いた。そこにヒュヒュルドの姿は無く、代わりに黒い髪が特徴的な少年らしき何者かが立っていた。


 違う、少年じゃない。こいつは……


「初めまして、僕は死命童。今から死神になる神だよ」


 やっぱり神。しかも、死命童って名乗った?


 死命童……僕がこいつをこの世に顕現するのを止めるために、ヒュヒュルドを処刑しに来たのに肝心のヒュヒュルドは居なくて代わりに居てはいけない存在が居る。


 間に合わなかった?女神様からの仕事を達成出来なかった上に、最悪の失敗をしてしまった……その事実が、僕の思考を埋め尽くそうとしてくるが【不動】スキルがそれを許さなかった。


【不動】スキルのお陰によって出来た冷静な思考が女神様からの仕事を失敗で終わらせないようにする案を導き出した。

 それはとてもシンプルで、かつ一番難しい方法だった。


「死神の名の元に、お前を処刑する」


「同じ神同士ゆっくり話くらいと思ったけど、うん、決めた。さっさと殺してその椅子奪ってやる」


 僕は【死の大鎌】をゆっくりと構える。それに対して、死命童は片手に短剣を持ち、もう片方に草刈鎌のような物を持って独特な構えを取る。


 相手の武器、見たことない組み合わせだね。でも、負ける気は無いし……負けられない!


 それに僕の中の何かが訴えかけてくる。死神は殺されないし、殺すことの出来ない存在は居ないって…ね?




 神対神、その戦闘の皮切りは音もなく姿を消した二人ーー否、二柱の神の武器がぶつかり合う音によって始められた。


 片方は全身を黒に染め上げられた死神。もう片方は髪や服など、所々を黒に染めた死命童。どちらも、漆黒の得物を巧みに操りながら一歩も引かない激戦を繰り広げている。


 死神の鎌が穏やかな水流の如き、滑らかな動きで死命童の首を狙う。しかし、それを短剣によって防がれて代わりに草刈鎌が死神の腕を切断しようと下から振り上げられるが【死の大鎌】の柄によって止められる。


「ちっ…」


 その事に死命童が舌打ちを一つする。一旦、状況を変えるためにバックステップした死命童に対して死神は追撃を掛けることもなくただ、その場に留まるだけだった。


 死神の黒い服がゆらゆらと風もないのに靡く。顔には仮面を嵌めているのかどんな表情をしているのか伺うことも出来ない事に死命童は僅かな苛立ちを感じていた。


 死命童が短剣を握り直した瞬間、先程まで少し離れた場所に立っていた死神が音もなく目の前に現れて【死の大鎌】を振り下ろそうとしていた。


「っっ!!」


 後ろに退避するにも間に合わず、防御も不可能。瞬時にそう悟った死命童は歯噛みしながらも切り札の一つを切る事にした。


「……潜った?」


 死神がそう小さく驚いたような声を出す。それを、死命童は仰ぎ見ていた。

 死命童は死神が言ったように地面に潜った。正しくは、地面に出来ていた影に潜ったのだ。


 それが死命童の切り札の一つ。本来なら、突然影に潜って死神の背後を取るために温存していた力なのだが、まさかこんな風に使う事になると死命童は予想しておらず、自分の想像通りに事が動いていかない事に更に苛立ちを募らしていった。


「……影?」


 そう呟く声が聞こえ、死命童は頭を軽く横に振って冷静さを取り戻して再び攻撃に転じる。


 死神の背後の影から勢いよく飛び出した死命童はその事に気付いていない死神の()()を短剣で斬り落とそうとする。しかし、それは出来なかった。


「……えっ?」


 それに気付いたのは短剣が死神の右肩を斬り落とす事もなく、宙に舞っている様子が視界に入った時だった。そして、死命童が自分の短剣が死神によって弾かれたのだと気付いた時には死神の鎌が自分の首元に当てられていた。


「しまっ!?」


 そして、スッと死神の鎌が死命童の首を斬り落とした。


 視界がずれ、ゆっくりと地面に落下していく光景を死命童は認識していた。

 そう、死命童はまだ死んでいなかったのだ。しかし、いかに死命童と言えど死神に首を斬り落とされればただ死を待つ存在と化すに過ぎない。


 残された刹那の時間、もう死を回避する方法は無いと悟った死命童は最後の悪あがきを行う。


「神怨化っ……」


 それは、禁忌の呪法。もう、後戻りは出来ず死命童の意識が戻る事もない。


 それほどまでに死命童は一方的に負けるのが嫌だった。

 傷はおろか自分の攻撃が擦りもしなかった事が何よりも嫌で、嫌で、思わず泣きたくなるほどに嫌だった。


 何故なら、死命童はまだ子供なのだから。背伸びをしただけの何も知らない幼き神。だからこそ、神怨化がどういったものなのかも知らずに使った。


 ゆっくりと消えゆく意識の中、最後に死命童は死神に向けて思う。


(ばーかっ)


 そして、死命童がこの世界から消えて代わりに……最悪の怨霊と化した神の成れの果てが誕生した。









誤字脱字があれば報告の方をお願いします。

この作品は不定期投稿なのでブクマをおすすめします


ーー以外雑談、普通に長い時もあるので見なくても大丈夫。



だって、彼はまだ子供だから


善悪の判断がつかない子供だから


仕方ない?


関係ない


禁忌を犯せば神であろうと、処刑対象になる


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ