接敵
遅くなりましたが、明けましておめでとう御座います。本年も本作の方をよろしくお願いします。
まぁ、魔眼商人の方は既に更新していますが、だいぶと遅れました。
新年からいろんな事が起きてますが、まだ始まったばかりですから頑張りましょ。
ヒュヒュルドが居ると思われる場所にはたどり着いた。けれど、見えている範囲内にヒュヒュルドらしき人物は見当たらないのでここからさらに探さなければならない。
この場所は檻の中に入れられた奴隷達とその人たちを管理する人しか居ない。
ここに全ての奴隷が置かれているのか、空間自体はとても広い。
(……他の場所は続く扉を探そう)
宙に浮いたまま辺りを見渡すが、暗い上に檻が並べられており扉を見つける事は出来なかったので、移動をする。
檻に近づいていくと、か細い声が聞こえてくる。
「怖いよ……………ママぁ…」
「助けて……」
声がした檻の方を見ると、そこにはまだ幼い子供達が比較的大きな檻の中に纏めて入れられていた。
よくよく見ると、身体にはみみず腫れのような赤い線が這っていた。しかも全員共通してあるからきっと………
(許されない、よね……ほんと)
そんな言葉が出てくるけれど、僕の表情には一切の変化は無い。だって、【不動】スキルを使っているからね。
こういった子供達も助けられれる力があったらいいなぁと思いながら、僕は扉を探し続けてようやくそれらしきものを見つけた。
(なんか、厳重に隠されている上に魔法で鍵もかけられているようだけれど?明らかに何かあるって言っているようなものだよね)
隠し扉みたいだったので見つけるのに少し時間がかかった。
何やら特殊な方法を使用しないと、開けられないような感じだけれど今の僕には通用しない。そのまま進んで、壁を通り抜けると目の前には僅かな光で灯された一筋の通路があった。
(………この先に居る)
この通路に来た瞬間、何故だかわからないけれどそんな確信を持てた。絶対に、この先にヒュヒュルドが居るって事を……
通路を進んでいくと、通路が三つに分かれた。そのうちの一つに進んでいくと、今度は四つに分かれていたので嫌な予感がしながら一つを選んで進んでいくと行き止まりだった。
(迷路…)
地下にこんなものがあるなんて想像がつくはずがない。しらみつぶしに行くのも一つの手だけれど、そんな事をしていてヒュヒュルドとすれ違いになったりすれば本末転倒だ。
壁を通り抜けようにも、一つ一つの間が長いせいで余計に迷ってしまう。
(ここに来て……)
最悪の足止めだ。迷路というシンプルかつ、正解の道を知らなければいつまでも時間を食わされるだけの代物に僕は完全に困り切っていた。
(どうすれば………なにか聞こえる。これは、足音?)
その場に留まってしまった僕の耳にコツコツという音が聞こえた。この、硬質な地面の上を誰かが歩いている音が反響してここまで聞こえてきているのかな。
間違いない。この足音の正体はヒュヒュルドだ。
(あとは、音の発信源へ向かうだけ)
反響しまくって色んな方向から聞こえるように感じるけれど、耳を澄ませば音がどこから来ているか分かる。
(あっちだ………)
もう、ヒュヒュルドを見つけるまで時間の問題だね。あとは、処刑を執行するのみ。
◆
ヒュヒュルドは長い通路を迷うことなく歩き進んでいた。
彼は今、先程新たな奴隷言う名の供物を己が信仰する神へ捧げ終えたのでその帰りであった。
「あと少し……一人か、二人」
何十年も前から準備を始め、数年前から供物を捧げ始めた彼の目的である神の顕現もーー厳密には死命童と呼ばれる悪神の一柱だーーようやく終わりを迎えようとしていた。
彼が呟いたように、先ほど供物を捧げた時に脳内にあと少しだよ、という風に語りかけられた。
今のヒュヒュルドは今日中にもう一人か二人を捧げようかどうかを考えながら歩いていた。
「捧げるにしても質のいい奴隷がいたかどうか」
今朝渡された奴隷の資料の内容を思い出しながらそんな事を口にし、しばし考えてから供物に最適な奴隷を選び出した。
「一昨日入った子供がやはり良いか。まだ、完全に心が折れてはいないが多少の恐怖の感情があった方があのお方も喜ばれるに違いない」
ヒュヒュルドが選んだ奴隷は奇しくも、フィグラが奴隷達を置いておく部屋で見た幼い子供達の事であった。
「これで今日、あるいは明日にはあのお方が顕現されるに違いない」
そして、顕現してからの事を考えて思わず笑みが浮かんだヒュヒュルドの独り言に、本来ならあるはずのない返答があった。
「残念ながら、その願いは叶う事は無い」
「っっ!!?」
そんな返答と同時に、真正面からスゥ……と全身を黒い衣類で身に纏った何者かが現れる。その様は周りの薄暗い空間と相まってまるで闇の中から現れたかのようにヒュヒュルドは感じた。
「だ、誰だ」
「愚かな罪人を処刑する執行人だ」
「お、愚かな罪人?なんのことを」
「貴様はやり過ぎた。そのため神々の判断により、この私、死神が向かわされた。愚かな罪人を処刑するために」
いつの間にか目の前の何者か漆黒の大鎌を手に握っていた。それに気付いたヒュヒュルドは一目散に駆け出した。
(なんていった!?あれは、死神と言ったのか!?)
あの大鎌を見た瞬間に自分は死ぬと直感が訴えかけて来たから一目散に逃げ出したが、背後からはまだ死の気配がする。
自分の動きを高める魔道具や一時的に身体能力を上げるが代償がある薬といったものを惜めもなく使用して、ただ逃げる。
「くそっ、くそっくそっ!こんなところで、これを使う羽目になるとは!」
そう吐き捨てたヒュヒュルドは服の内側に取り付けてあるマジックカバンに手を突っ込み、中から5体の小さな人形を取り出した。すると、小さかった人形は瞬く間に巨大化していき、やがて人並みサイズへと変化した。
その人形達にはそれぞれ、剣や槍、戦斧、杖、短剣と言った武器と体の要所要所を守る防具が装備させられていた。そして、ヒュヒュルドは人間サイズの動かぬ人形へ禁呪を使う。
「肉体を与えよう 冥府の怨念よ 闇の手に誘われたまえ 我が名はヒュヒュルド・ラウンズ さぁ来たまえ! 怨念魂憑依」
その禁呪を唱え終えた瞬間、ヒュヒュルドの周囲の気温が下がる。そして、彼の足元から煙のようなものが立ち上り始めた。やがてそれは、意思を持ったかのように動き始めて5つの人形の中へと入っていく。
それまでただの人形だったが、ヒュヒュルドが呼び寄せた怨念達が憑依したせいで意思を持ち始めた。それぞれの身に宿る怨念はどれもが実力者であった。
ぎこちなかった動きもすぐさま滑らかに動けるようになり、今ここに凶悪な人形兵器が5体誕生した。
「ここに来る侵入者を殺せ!」
ヒュヒュルドの命令に人形兵器は首を頷かせ、侵入者を迎え撃つために武器を構える。
それを確認したヒュヒュルドは再び走り出した。彼が目指すのはただ一つ。生贄の祭壇であった。
背後から何やら戦闘音が聞こえてくるのに気付いたヒュヒュルドは恐怖感に襲われたが、まだここで死ぬわけにはいかないと思い、走ることを一切も途切れさすことはなかった。
誤字脱字があれば報告の方をお願いします。
この作品は不定期投稿なのでブクマをおすすめします
ーー以外雑談、普通に長い時もあるので見なくても大丈夫。
無し。




