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転生するのなら欲望を!!〜転生後の姿は男の娘〜  作者: 四葉のアミア
第3章 死神としての僕
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迫る死の音

お久しぶりです

 


 コツコツと靴音が薄暗い通路に響き渡る。その音を発している男は一言も喋らずに、幾重にも別れた道の中を迷うことなく歩き続ける。

 その男の後ろを追っているのは一人の子供。目に光はなく、ヨタヨタと無意識に歩くその姿は酷いものであった。


 やがて、薄暗い通路の先から薄赤色の光が漏れ出ている扉が現れた。


 男は扉の前に立ち、ボソボソと何かを呟くと、扉からカチャリと小さな音が鳴る。そして、男は扉を開けて中へと入る。



 その部屋は赤と紫色の光で満ちていた。その光源は部屋の中央にある一つの魔法陣だった。


 複雑な幾何学模様と細かな文字が書かれた魔法陣の中心に男は連れてきていた子供を立たせる。そして、祈りを捧げる姿勢をとったあとに口を開く。


「死を振り撒く童神様。我らが供物をお納めいたします」


 その言葉を言い終えると、魔法陣の光が先ほどよりも一層激しくなる。そして、中心にいる子供を囲むように全方位に青白い手が生えてくる。


 その手は子供の足、体、手、頭を掴んでいく。そんな状態になっても子供は叫んだり動いたりすることはおろか、動揺する仕草も見せず、されるがままだった。


 どんどん生えてくる青白い手が、やがて子供の全身を覆い尽くす。そして、魔法陣の中へと子供ごと引き摺り込んでいく。その様は、まるで地獄の亡者が生者を自分と同じところへ誘おうとするものであった。


 やがて、青白い手も、子供も完全に居なくなった魔法陣は激しくなっていた光を収めて元の光に戻る。それを確認した男は小さく呟く。


「我らが神が降臨なされるまで、もう少し……」


 男は踵を返して、自分が来た道を戻っていく。


 その男の名前は、ヒュヒュルド・ラウンズ。この世に厄災を振り撒こうとする大罪人である。しかし、彼が行なっている所業は誰にもバレてはいなかった。そう、つい最近までは……


 彼はやり過ぎた。神の目に悪い意味で止まってしまったのだ。だからこそ、死神が向かわされた。その事に彼はまだ気付いていない。


 最早、時間の問題であった。






 ◆






 ラウンズ商店にヒュヒュルドの姿は無かった。どこに行った?いや、たまたま不在の可能性がある。


 待っていれば戻ってくる可能性あるかもしれないが、時間は限られている。大人しく待っているつもりは毛頭無い。


 確か、ヒュヒュルドは奴隷商人をしていたと言っていたはず。ならば、そっちの方を確かめてみようかな。しかし、どこにあるのかは分からない。


 振り出しに戻った気分だったけれど、奴隷商人をするにしても場所は必要なはずだと思った。そして、ここはヒュヒュルドの部屋。

 あの机のどこかに奴隷関係の事が書いてある何かが、あるのではないか?と考えた。根気がいるけれど、この程度どうってことはないね。そう思いながら、僕は作業を始めた。




 積まれている書類は全て違った。次に、引き出しを開けようと思い順番に開けていくが中にはペンやちょっとした物しか入っていなかった。

 最後の引き出しも同じかな、と思いながら手をかけて引こうとしたが鍵がかかっていた。


【死の大鎌】を小型のナイフに変形させて、鍵の周りを切り取って中を確認する。鍵なんてあってないようなものだよ。


 中には数枚の紙が置いてあった。それらを確認していくと、ビンゴ。奴隷に関する事が書かれていた。


 場所は、このラウンズ商店の真下。正規の行き方は分からないけれど、場所さえ分かればいい。


 通り抜けが地面に対して通用するのか分からない。恐らく無理だと思うけれど、やってみる価値はある。もし、これで出来たら通り抜けをするには僕の意志が関係してくる事にもなる気がするしね。


【死の大鎌】を元に戻して、深呼吸を一回してから僕は願う。


 目的のために邪魔な地面を通り抜けられるように、と……すると、突然中に浮いたかのような感覚に陥った。


(っ……いや、これは浮いてる?)


 地面を通り抜けられた!?と思ったが、どうやら違ったみたい。


 床に足をつけている感覚がなかった。まさか、と思って見ると僅かに体が浮いていたのだ。


(はは、あはは、最早なんでもありじゃん)


 このとんでも現状に思わずそんな事を思ってしまう。っとと、意識を切り替えないとね……


(む……意外と難しい)


 体が浮いているというより、地面に足がついてないせいか安定しない。ありゃ、180度回転しちゃった。



 体を満足に動かせるまでに四苦八苦しながらも、無事になんとかなったので僕の保有スキルの一つである【不動】を発動させて地面へと潜って行く。


 潜って、潜って、何一つ先が見えない中、僕は潜って行く。



 そして、急に視界に光が飛び込んできて目の前が見えなくなるが今の僕は動揺しなかった。なにせ、【不動】スキルを発動させているのだから。


 光に目が慣れて、僕の視界に入ったのは小さな監獄だった。


 怪しげな光を放つ小さな檻が区画ごとに並べられており、中には小さな子供から大人と老若男女問わず入れられていた。さらには、魔物も鎖や首輪などに雁字搦めにされながら檻の中に居た。


 子供の泣き声や魔物の唸り声、そしてこの奴隷達を調教したりするであろう人間の怒鳴り声がこの空間内に響き渡っている。もし、【不動】スキルを使用していなければどうなっていたのか僕には分からない。


 僕にはこの人たちをどうこうする力はない。解放したところでその先の安全を約束出来ないからね。せいぜいが、この環境を改善に導くくらいだね。


 眼下の光景に何も込もってない視線を向けながら、そんなことを考えていたけれど……本来の目的をすぐさま思い出す。



(……ヒュヒュルドを探そう)


 待ってろヒュヒュルド。死神はだんだんと向かっていますからね。







誤字脱字があれば報告の方をお願いします。

この作品は不定期投稿なのでブクマをおすすめします


ーー以外雑談、普通に長い時もあるので見なくても大丈夫。


今年最後の更新となります。悲しい出来事ありましたが、それも乗り越えました。


あっという間の一年でしたが、嵐のような一年でした。来年もどうぞ、よろしくお願いします。


では、みなさん。良いお年を!


あっ、改稿作業間に合わなかった!!また来年お楽しみに!

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