奴隷達
本当は昨日投稿したかったんですが、気づいたら寝落ちしてしまっていたので今日になりました。
リーリスライド、その城壁の外側にある今にも倒壊しそうな建物群はなんなのか聞いてみたら……
「中に住めない人々があそこに居る」
「中に住めない?」
「そう。税や他にも複雑な理由で中に住めない人々があんなふうに自分たちで家を作って住んでいる。リーリスライドの外だから税も取られないが、魔物達が襲ってきても兵士は守らない。なぜなら、彼ら彼女らは守るべき住民じゃないからだ」
「なんで他の国に行かないの?」
「それは誰だって他の国に行きたい。しかし、身分証明も難しい上に、その道中で魔物や野盗に襲われる可能性も高い、そこに食糧が足りないとなれば誰だって自ら死にに行く道は諦める」
「そんな…」
そんなふざけたことが許されていいのか、僕は静かに怒る。
この時点で、リーリスライドという国が僕には絶対に合わない国だと言うことが分かった……素早く仕事を終わらせて離れたいという気持ちになった。
可能であるならば奴隷制度を廃止させたいけれど、それは不可能だし、仮にできたとしても奴隷だった人達は路頭に迷ってしまうから僕にはどうしようもない。それに、奴隷達も中にはその生活を望んでいる人も居ると聞いたからには尚更だ。
僕に出来るのは精々が、苦しい思いをしている奴隷を購入するくらい……
本当に嫌な国だ。ここは。僕には合わない。
思考がどんどんダメな渦に飲み込まれていく感覚がする。
ふぅ、と僕は一呼吸入れて気持ちを切り替える。
やがて城門まで着いた僕たちは、商人さんが何やら手形?らしきものを見せると特に身分を明かす必要もなくそのまま入国することが出来た。
「入国審査は待たされなくて楽だ」
隣でフリッドさんがそう言う。どうやら一部の商人さんはリーリスライドで発行される特別な身分証明証を見せれば、すぐに中に入ることが出来るらしい。荷物の中身も見られずに。
中に入って、まず僕の視界に映ったのは綺麗に並ぶ建物群だった。そして、大通りを歩く多くの人々と、一部の人の後ろに続くように歩いている首輪を付けた人。
「首輪を付けてる人が奴隷なんですか?」
「そうだ」
明確に奴隷だと分かるような首輪だね。外観上は普通の首輪でも何やら特殊な魔法が込められていそうだね。
そこまで考えた僕はふと、気になったことがあった。
「全員身なりが整っている?」
そう、主従問わず目に見えている全員の髪型から靴まで、全て綺麗なのだ。着用している衣類も人によっては一目で高級品だと分かる仕立て方をしているし、奴隷達の身なりも僕のイメージしていた薄汚れた衣類を纏っている姿ではなく、汚れ一つない衣類を着ていた。
そこに疑問を覚えた僕だったけど、これもフリッドさんが小声で教えてくれた。
「驚いたか?奴隷の立ち振る舞いや着ている物が、いわばその主人の格を示す道具でもあるからな。粗末な服を着せていたら周りから白い目で見られる」
「そうなんだ……立ち振る舞いも」
観察してみると、確かに歩き方に上品さを感じられる。首輪さえ無ければ上流階級のお方だと見間違えてしまいそうなほどの自然な動きだね。
「作法から始まって、よく見たら分かるが歩き方にも差異がある。中には貴族かと思ってしまうほど優雅に歩く奴隷もいる。あとは、喋り方も人によっては教えていたりする」
僕の奴隷についての知識が次々と崩れ落ちて行く音がする。奴隷ではなく、まるで養子みたいだねと思った。
「奴隷だからと言って酷い立場にいるわけじゃない。見た目上はな」
「見た目上?」
「奴隷の行動一つが主人の格を示す。だから、主人は自分の格の高さを示すために奴隷に対して徹底的に作法などを叩き込む。例え、奴隷側がそれを嫌だと思っても奴隷にそんな事を口にする権利もない」
「無理矢理ってこと?」
「一部の奴隷はな。まぁ、嫌がるといっても大抵が元野盗だったりとか作法から一番かけ離れてる奴だけだがな」
「そういう犯罪者上がりの奴隷だったら仕方ないね」
むしろ作法をどうぞ学んでくださいって感じだね。
「あと、フィグラ。その制服を着ている限りは大丈夫だと思うが一つ注意点がある。もっと早めに言っておくべきだった」
「なんですか?」
注意点?と思ってフリッドさんの方を見ると、彼はどこか言いにくそうな顔をしていた。そんなとんでもない内容なのかな。
「自分の格を示す奴隷とは別に、個人的に楽しむ奴隷も中には居る」
「そうなんですか?」
「あぁ。後者の奴隷の中にはとにかく容姿が優れている人物も含まれていて、そういった奴隷ばかり集めている奴は自分が気に入った誰かを見つけたらどんな方法を使ってでも手に入れようとする。流石に貴族とかになってくると弁えるが、平民は違う」
「とんでもない人もいるんですね。それで、注意点とは?」
「もしかしたら、だ。もしかしたらフィグラが気に入られる可能性があってな。容姿、という点、でな?」
そう言われて僕の頬が引き攣ったような気がする。久しぶりに容姿系で何か言われた気がするよ。
それはおいといて、僕がそのやばい奴に気に入られて何がなんでも奴隷にしようとしてくるかもしれないから注意しろと?
「まぁ、そうだな。恐らく金を積んでくるだろうが、その制服を着ている限りでは恐らく手は出さないだろう。なにせ、手を出すと言うことはオーリア学院を敵に回すという事だからな」
「不安でしかない」
「大丈夫だ。何かあったら学院長がなんとかしてくれるから、殺しさえしなければいい」
なるほど。つまり半殺しは大丈夫ということね。面倒方は全て学院長に押し付けれるんだから。
「……やりすぎるなよ?大丈夫だとは思うが」
僕の考えていた事が分かったのかフリッドさんがそう言ってくる。もちろん、する気はないよ。今のところはね。
そういえば、この前までは自分の容姿が嫌だったけれどこの短期間でそんな感情は無くなった気がする。色んな人と出会ったからかな?
嬉しいような、なんとも言えないような気持ちだけれどこのまま変な方向に感情君が進んでいかないようにしないと。
しばらく経ち、馬車が止まって商人さんが言う。
「皆さんお疲れ様でした。無事に目的の場所に辿り着くことが出来ましたので学院を通じて報酬を支払わさせていただきます」
どうやら僕たちのお仕事はここで終わりらしい。
それぞれが商人さんに別れの言葉を言った後、各自自由に行動をするらしい。
「フリッドさんもお疲れ様でした。それと、色んな事を教えてくださりありがとうございました」
「お疲れ様。こちらこそ楽しい旅だった。この後はどうするつもりだ?」
「しばらくは滞在するつもりです。僕自身の予定もありますので」
「分かった。では、また会うとしたら今回みたいな感じか、学院、もしくは中立国のどこかでな」
「はい、では僕もこのあたりで」
「あぁ。君と出会えてよかった」
「こちらこそです」
そして、僕はその場を後にする。
誰もいない所に行った僕はずっと隠し持っていた黒仮面で顔を覆い、【死神の隠伏】を発動させて姿を消す。
フィグラとしてのお仕事は終わり。ここからは、死神としてのお仕事の時間だ。
誤字脱字があれば報告の方をお願いします。
この作品は不定期投稿なのでブクマをおすすめします
ーー以外雑談、普通に長い時もあるので見なくても大丈夫。
奴隷は酷い目にあっているというイメージが強いです。しかし、このリーリスライドでは何やら違うみたいですね。
最近ゲーム全然してない。Youtubeとかその辺りばっか見てる。いや、ゲームしたないと言ったら嘘にはなるけれどもスマホゲームは最近やれてない。
次話は早めに出します。




