回答
お待たせ
「やぁ、よく来たね」
学院長室に着いた僕たちを部屋の主である学院長はそう言って出迎えてくれた。
「さて、早速で悪いけれど君たちは答えを導き出せたのか教えてもらおうか。
"この世界で誰が一番強いでしょうか"その答えをね」
「カーマさん、お願い」
「その子が答えてくれるのかな。なら残りの2人はそっちの方でゆっくりしていってね」
そう言われて僕とリーフィアは部屋にある椅子に座る。回答をするカーマさんは今回の為に用意されたであろう学院長が使う執務机の正面に置かれた椅子に座る。
まるで面接で僕たちは面接者の仕草を見る補佐みたいな感じだねと思った。
「じゃあ、君たちが考えた答えを言っていってね。間違ってたら不正解って言うから」
「分かりました。では、この世界で一番強いのは学院長あなた自身」
「そうだったらいいんだけど、不正解」
まずはジャブみたいなものだね。僕もその線を考えたけれど違うだろうな〜と思ってた。それはカーマさんも同じだったみたい。
「なら次。海上国の女王であるメリファ女王」
「彼女ではないね」
これも違うみたい。にしても、海上国?その名の通り海の上にでもあるのかな?機会があるなら行ってみたい所だけど、大人になってからだね。
「…ならエルフの王」
「違うね」
そう否定されるとカーマさんの顔に一瞬だけ怒りが満ちた気がした。しかし、瞬きをした次の瞬間にはいつも通りの無表情な顔に戻っていた。
逆に学院長はニヤニヤしていた。彼が何を考えているのか検討も付かないが、あの顔から推測するに碌な事じゃないはず。
そんな事を考えているとリーフィアが小声で話しかけてきた。
「あのカーマっていう人、さっきどんな顔をしてたか覚えてる?」
「さっき?……見間違えかもしれないけど一瞬だけ怒り顔だったよ」
そう答えるとリーフィアはやっぱりと呟いて続けた。
「大抵の種族には共通点があって、フィグラは知ってる?」
「えっ………寿命とか?」
「違う。ちゃんと勉強してるの?」
「うっ、して、ないかな?」
シンプルな言葉が僕の心を抉ってくる。そんな様子を見てリーフィアは案の定と思ったのか今度はため息を吐く。
「大抵の種族には信仰している、もしくは尊敬している人物が最低でも一人は居るの」
「昔の人?」
「それは種族によって様々。昔存在した人だったり、今も生きている有名な人だったりとかね」
「つまりさっきカーマさんが言ったエルフの王というのが?」
「そう。種族によって何を信仰、尊敬しているのかは聞けば嫌というほど教えてくれるからクラスに人間族以外の種族の人が居たら聞いてみたらいいと思うよ。でも…そういう信仰、尊敬している人を馬鹿にしたりすると場合によったら殺されるかもしれないから気を付けてね」
だからカーマさんが言ったエルフの王が最強という事を学院長が否定しただけで彼女は一瞬怒ったとなると、馬鹿にする……つまり名誉を傷つける?ような事のラインがかなり低いみたいだね。
そのラインというのも種族差があるのかもしれないけれど、度が過ぎたりすれば最悪の場合その種族全員を的に回すような事になる可能性もあるって事になる。気をつけるとしよう。
「エルフって基本的に王を信仰していてね、その王様もすっごく長生きなんだよ」
「エルフって長生きだと知ってるけど、それより?」
「数百年以上は確実に生きているらしいよ。数百年だよ?」
「想像もつかないや」
そんなに生きていられるのはエルフの王だからという理由だけじゃなさそうな気がする。でも、なんとなく神の名を冠するスキルが関係している気がする。
僕の死神スキルしかり、学院長の風神も神の名を冠するユニークスキルだ。その実態は未だ分かってないけれど、強力な力を持ってるのは確実だ。
分かってない力の中に寿命を伸ばしたりするものがあるのかもしれない。
……もし、そうなら僕はどうなる?
僕だけ寿命が伸びるという事は知り合い、友達、親友が僕より早く死んでしまう。その悲しみに僕は耐えられるのか?
そんな不穏な事を考え始めて、嫌な、底なし沼のような思考の渦に飲み込まれそうになっていた僕の耳にカーマさんの普段聞かない大声が響いた。
「なら、なら人間の王!」
「それも違うよ。これで19人目、意外と知っているようで勉強熱心だと褒めてあげようかな?」
「っ…昔存在したと言われてる漆黒の魔女!」
「違うね。 にしてもよく知ってるね。漆黒の魔女は名前を残さないようにされてたけど、君の種族が関係しているのかな」
リーフィアとちょっと雑談していただけなのに、気づいたらカーマさんは20人も名前を言っていたとは驚いた。
「ねぇ、リーフィア。リーフィアはどう思う?」
「答えのこと?それなら、検討も付かないかな。今、彼女が言った人達も私が知ってる全てだったし……お手上げかな」
「そっか」
本当にこれの答えってなんなんだろう?と思っていると学院長がカーマさんを煽っていた。
「おや、もうおしまいかい?」
「っ………帰るっ」
カーマさんは学院長の態度などが気に食わなかったのか少し怒りを露わにして僕の方を向いて口を開く。
「フィグラ、帰る」
「ふふっ、だってフィグラ」
「分かったよ、カーマさん。じゃあねリーフィア」
「うん。私も適当に一個答えを言ってから帰ろっかな」
「またね。さて、帰りましょうかカーマさん」
無言のまま扉の方へと向かっていくカーマさんを僕は追う。
未だニヤニヤしている学院長を背に僕とカーマさんは学院長室を後にした。
「カーマさん、少し落ち着いたら?」
「……大丈夫、もう落ち着いた」
こう、他人が苛立っているのを見たらそんなに怒ることなのかな?と思って雑な言葉を言ってしまうけれど本人からすればそれすらも起こらせてしまう可能性があるよね。
カーマさんは深呼吸を数回して、目頭を手で押さえてから言う。
「一旦帰ろう」
「そうだね」
そう言ったその時……それは学院内全体に鳴り響いた。
『お知らせです。只今、とある生徒の回答が正解したので、突然ですがこれにてクラス別競争を終了とします。初日に集合した場所は集まって下さい』
「「え…」」
え、え……えぇ?嘘でしょ、リーフィア。
誤字脱字があれば報告の方をお願いします。
この作品は不定期投稿なのでブクマをおすすめします
ーー以外雑談、普通に長い時もあるので見なくても大丈夫。
長く開いたのには理由は様々ありますが、今話の最後で終了させていいのか?という葛藤などがありました。
また詳しくはこの章が終わり次第話しますが……これ以上伸ばしても最早蛇足化しそうだなと思ったので終わらせました。
そして、話したようにこの章を纏めて再び改稿したいと思っておりますが、最新話を投稿するのと同時に並行して進めるつもりなので改稿は遅いかもしれないです。
久しぶりにゲーム話しよう。
原神:フォンティーヌがそろそろ来ますね、その前に鍾離先生が復刻するので楽しみです。ふふふ…絶対当たらないと思う。
音ゲー:全体的にまぁまぁまぁ……
アズレン:そろそろ6周年らしいので僅かですがキューブなどを貯めてます。
この辺で終わらせましょう。そろそろ長いですから。
では、また!魔眼商人もよければ




