悪夢
勢いで書くといけるもの。
死神はやってくる。
黒仮面を付けて、漆黒の剣を片手に君の元へとやってきます。
壁を切り裂き音もなく部屋の中へと入り、誰も居ないのなら、また壁を切って次の部屋へと歩いていく。
「どこかな〜?」
また一つ壁を切って部屋へと入り、誰も居ないのを確認したらそのまま部屋を横切って反対側の壁を切って進む。
極力音が出ないように細心の注意を払いながら探していく。
明かりなどなくとても暗い。最初は何にも見えなかったけど時間が経つに連れ、目が慣れてきたのか見えるようになってきたので壁にぶつかることなく進めてる。
「……虚無」
同じ作業を繰り返していると心が虚無ってくるのは当然だと思うのは僕だけかな。
しかし、この作業を繰り返さないと本来の目的を達成することが不可能なので頑張る。
誰かと一緒に話しながらだったらこんなに退屈しなくてもすむのになぁ……と思ったけど流石に僕のわがままに皆んなを付き合わせるわけにはいかない。
「………今は目的を達成させることだけ、それだけ」
寂しい感情は全て後で補う。無事に帰ってみんなと話して……それが無理なら最悪試練官のソシリア先輩の所まで行ったり、どこかにいるリーフィアに会いにいったりすればいいだけ。
自分でも思ってたより、僕というのは寂しがり屋ってことに気づいた。今まで基本的に誰かと話してた気がするし、すぐ誰かに会いに行ける環境下だったからかな。
「………っ!」
壁を切ろうと思ったら気配を感じ咄嗟に手を止める。
向こうの部屋に誰かいる。この近くには階段があった気がするから、探索のあれこれでこの部屋に寝泊まりしてるって言うのなら気配がしたのも納得が出来る。
【死神の隠伏】がちゃんと発動してるのを確認し、黒仮面が外れないようにしてから僕は、深呼吸を一つしてから壁を切って中へと侵入した。
(寝てるね。お邪魔しま〜〜す)
中に入るとそこには多くの男女がスヤスヤと寝ていた。どこのクラスなのかは分からないけれど、当たりは引いた。
この部屋に入るための扉の向こう側に気配が二つする。これは見張りとかかな。でも残念、こんな風に侵入してくるなんて予想もしていなかっただろうね。
先に見張りから倒そう。
そう思った僕は静かに行動を始めた。
(まず一人)
少し刀身を長くして、壁ごと横線を描くように斬る。
部屋の壁は抵抗なく切れることは既に把握済みなので、黒剣は壁の向こう側にある誰かを両断した感覚が僅かに伝わってきた。それを確認した僕はそのまま即座にもう一人の方へと行き、同じように壁ごと切り裂いた。
壁にできた切れ込みから光の粒子が僅かに見えたのを確認したあと、僕は今起きた出来事なんて全く気づいてないであろう背後のスヤスヤと寝ている人達へと視線を移した。
部屋から逃げられても困るから、扉の前の地面を少し切り抜いてこけるように細工する。さらに扉そのものもドアノブの部分を取って本当に出れなくする。切り抜いた結果出てしまった床だったものは流石に部屋の隅へと置いておく。
(まずは、試しに一人)
なんとなく寝ている一人を斬ると、その人物は目覚めることなく光の粒子と化した。
人を殺す、のに抵抗が無いわけじゃない。けれど、今は蘇生するので大丈夫という安心感があるから殺せる。……そんなの言い訳に過ぎない。
慣れている訳ではない。スキルの不動を使っているわけでもない……ただ、絶対に死なないと思ってるから殺せる。僕はどこか周りの人とズレてるのかな。
そんな事を考えてしまい、無理矢理頭の片隅へと追いやった僕は一人の男子君の顔をチョンチョンとつつく。
「ん…んぅ?……な、んだぁ?」
「やぁ」
まだ薄くしか開いてない目を擦る男子君の視界に黒仮面がいっぱい映るように体を動かしてそう囁く。
男子君は体を硬直させたあと、僕の顔ーー正確には仮面だけどねーーを見て、目を恐怖の色に染めて絶叫し始めた。
「うわぁぁぁぁ!!!!」
「……思ってたよりも叫ぶな〜」
「ひぃぃ!く、来るぁぁ!!」
……流石に心が痛い。しかし、男子君はいい働きをしてくれた。
彼の叫び声によって周りの人たちも飛び起きる。ほして、明かりがつけられて視界が一瞬奪われる。暗闇から突然明るくなったからね。
この明るさに目が慣れてきた頃に聞こえてきたのは混乱の声や僕を見て戸惑う声……でも、一番多かったのは僕を怖がる声だった。
「な、なんなのあれ!」「あんなやつ俺たちのクラスには居ないぞ!」「まて、あの制服はどこからのクラスだ!」「でも、どうやって部屋の中に」「怖い」「あの黒仮面……あ、足が…動か」「助け、助けてぇ…」「死にたく、死にたくないっ……嫌っ!」
明かりを付けた瞬間に僕を襲えば殺せたかもしれないけど、流石に無理だったみたい。
完全に目が慣れた僕はさらに恐怖を演出するために首をグリンッと横に向ける。そして、たまたまその先に居た女子ちゃんが「ひっ…」と声を漏らした。
ここから普通に倒していこうかな?と考えていると声が響き渡った。
「お、お前は誰だ!何が目的だ!」
その質問は予想していなかった。う〜ん……なんて答えようかな。普通に答えてもいいんだけど、少しでも恐怖を演出したいからホラー的に……ゴホン、ンンッ…
「ぼ、ぼ、僕は……こ、ころ、ころころ、殺す、すすすすぅぅ!!」
『ぅわぁぁぁぁ!!!?』『きゃぁぁぁ!!!』
「喉が痛い……さて、トラウマ製造機フィグラ行きます」
恐怖で扉の方へと逃げようとする彼ら彼女らの方へと僕はゆっくりと歩いていく。「なんでドアが開かないの!?」と叫んでいるのを聞いて、やっぱり恐怖は冷静さを失わさせる感情なんだなぁ……と改めて認識した。
恐怖で自暴自棄になり、僕を攻撃してくるかなとも思っていたけど逃げる方が大切みたいだね。
一番後ろに居る男子君の肩をガシッと掴むと、暴れる暴れる。
「嫌だっ、嫌だっ!!助けーー」
痛みを与えないように黒剣を振るい一撃で光の粒子にさせる。……恐怖は与えるけど痛みの恐怖なんて与えたくない。
持ってるのはいいけど使いたくないスキル達を使えばそっち方面は凄く得意になるけどね?なんであんなスキルあるのか不思議で仕方がない。
恐怖で叫ぶ人、腰を抜かして必死に這いずりながらも僕から逃げようとする人、僕に攻撃してくる勇敢な人……全てを僕は一撃で光へと変えていった。
そして残ったのは僕とここに居た他クラスの持ち物のみ。
「………誰かに会いたいなぁ」
そんな事を呟いた事に僕は気付くことなく持ち物からヒントのみを奪取して、共有だけしておく。朝皆んなが起きたら気付いてくれると思う。
「……まだまだ夜は長いはず」
死神フィグラちゃんはあなたの元へと死をお届けに参ります。ついでにトラウマもお届けします。
「…ふふ、ふ………はぁ」
そんな事を考えながら再び僕は壁を切っては中に入り、誰も居なかったら壁を切って進む。時には場所を変えたりする。
そうして僕はその日の夜の間だけ、ちょっとした死神と化して合計2クラス全員を光に変えて、合計16個のヒントを得ることができた。そして、眠たく怠い体を引きずりながらも皆んな元へと戻り、泥のように眠りにつくのであった。
誤字脱字があれば報告の方をお願いします。
この作品は不定期投稿なのでブクマをおすすめします
ーー以外雑談、普通に長い時もあるので見なくても大丈夫。
もう1クラスの方も書いても良かったんですが、似たようなものになるので無くしました。
ホラーも混ぜたいと思ったんですが、やり過ぎもあれなのでちょっとした喋り方でホラーっぽくさせました。
クラス別競争も残り5日です。まだまだ長いようでどんな感じになるのかお楽しみに……
最近、暑くなってなってきたので嫌です。嘘でしょ?と思う日々です。そして、このまま続きも書きたいのでこの辺で終わらせます。ゲームは最近やってないので、また報告する内容ができたらします。
では、また!




