勝つためには先輩に聞く
どもー
クラス別競争の内容を伝えられてから約1週間と2日が経過した。まだ時間はある。
僕たちは一応軽い作戦会議みたいなのをしたけど、これといった事は決まってない。でも、流石にそれはどうなのか?と言うことになったので行事が始まる1週間前に教室に集まって考えよう。という事になった。それまでは各々自由に行動ということ。
何もしないのもありだし、先輩に話を聞くのもありだし、戦う可能性があるから特訓するのもありだし…などなど。
かくいう僕は、この1週間と2日は基本的に死神スキルの練習をしていた。暴走しないようにね。
暴走って言っても、あの【死神の纏い】さえ使わなければ安心だと思ってるけど……何が起こるか分からないからね。と、言っても緊急時でもないのに【死神の纏い】を使うのは流石にダメだと思ってるから【死の大鎌】だったり【死神の隠伏】などを練習した。
そして、自分でも成長した!と実感してきたので趣旨を変えて今日は先輩に話を聞きに行こうと思ってる。
……先輩と言っても僕が知ってる先輩は二人しか居ないけれど。ちなみにソシリア先輩とお兄ちゃんのことだよ?
ソシリア先輩とは前回会った時に煉獄飴とかいう極悪魔道具を食べさせられてから会ってない。……今は舌は正常に機能してる。
前回は【死神の隠伏】を使って忍び寄ったせいであんな目に遭ったので今回は普通に部室に行く。
「入りまーす」
ガチャと扉を開けて僕が入学するまではよく分からない器具でゴチャゴチャしてた室内も、僕が本当に魂に干渉可能な器具のみ残してあとは廃棄したのでスッキリとしている。……でも、ソシリア先輩は掃除とかしないから埃っぽくなるのだけどうにかして欲しい。
中に入るとソシリア先輩は隅の方にある寝袋でスヤスヤと寝ていた。薄暗い部屋なので気づかなかった。気づけたのは…なんとなくかな?
「…あの寝袋も確か魔道具なんだっけ」
ソシリア先輩のお手製だったはず。効果は忘れた。僕が使う機会なんて絶対無いから覚えるだけ意味ないと思ってるからね。
「うーん、どうしよっかな?
起こすべきか起こさないか……取り敢えず近寄って、ソシリア先輩の感じから考えよう。
「……あたっ!?」
寝袋に近づいた瞬間、ゴンッと何かに鼻がぶつかる。
かなりの痛みに涙が出てきそうなのを我慢して、ぶつかった何かの正体を確かめるために右手を伸ばすと透明な何かに触れた感触が返ってきた。同時に、寝袋の魔道具としての効果を思い出した。
「確か、寝袋使用者が寝る直前に指定した人物以外が近づいたら…自動で障壁が展開されるんだっけ」
その障壁もかなりの強度だったはず。そう思い出しながらコンコンと障壁を叩く。
「起こさない方が良さそうだね」
じゃあ、起きるまで部屋の掃除などしておこう!
そう思った僕は即座に行動を開始した。
◆
「またここ汚い……えー、何この半透明な液体。あ、メモ書きかな?えーと、液体爆弾……特定の魔力の波長を流すと起爆?……とんでもない代物作ってるじゃん」
「…ほんと、あの人僕を召使いか何かだと思ってるのかな。なんでソシリア先輩の白衣がここに?ご丁寧に、いつものように綺麗にしておいてくれないか?とメモ書き置いとくなんて」
「魂の捕獲、ねー……捕獲されていい魂なんて一つもないんだけど、協力すると言った以上僕も手伝わないとね。これが違うから…こうして、こうすれば、あとはなんとかなりそうだね」
◆
「ふぅ、終わり!!」
ピカピカになった部屋を見て僕は満足する。実際は薄暗い部屋なのでピカピカかどうかは分からないけど、掃除の手応えからだね。
「あとは、あの人を起こすだけ」
このまま帰るのは嫌。掃除とかしに来ただけになるのは嫌。なので起こします。
寝袋に近づい障壁が展開されるけど【死の大鎌】を変形させて小型ナイフの形にして、サクッと障壁を斬る。
すやすやと寝ているソシリア先輩の真横で屈み、手を縦にして頭の真上に置いてそのまま振り下ろす。いわゆるチャップだね!
「んきゅ!?」
そんな動物みたいな鳴き声を出してソシリア先輩は薄らと瞼を開け、数秒間ぼ〜としたのち、僕と目が合う。
「おはよー、ソシリア先輩」
ちなみにソシリア先輩にはもう敬語は使わない。ですます口調もね。
「…あぁ、おはよ……ん?………んん!?」
まだ眠たそうな目が完全に開かれた。そして、ガバッと起き上がる。
「ななな、なぜ君が!?」
「え?普通に」
「いやいや、この寝袋が展開してくれる障壁をどう突破したんだい!?」
「え?斬ったよ」
「…………もう少し君は、いや、少しじゃなくてもっと色々学んだほうがいいと私は思ってるよ」
ソシリア先輩から呆れを含んだ目のような…ジト目を向けられながらそう言われる。
「…まぁ、君には色々とお世話になってるところもあるし気にしないでおこう。それで、なんで私を起こしたんだい?」
「クラス別競争について聞きに来たよー」
「クラス別競争…一年となると。あぁ、あれか……あんまり良い思い出はないねぇ」
「そうなの?」
「やってみれば分かるさ。それで、何が知りたいんだい?」
寝袋を片付けながらソシリア先輩がそう聞いてきたので答える。
「どうすれば勝てる?」
「…悪いが教えるつもりにはなれないねぇ」
「えー。謎解きだから?」
「謎解き?天覇の塔でのサバイバルじゃないのかい?」
「え?」
「今年は違うようだ……いや、今まで同じ内容だったのに突然変わることが?」
「あ、そっか。分かった」
「ん?」
「ソシリア先輩はほとんど外に出たりしないから知ってないかも知れないけど、天覇の塔でちょっとした出来事があってね。それが原因なんだと思う」
脳裏に浮かぶ……あの出来事。夢にまで…とは行かずとも当分は鮮明に思い出せそうな程に記憶に残ってる。
「遠回しに馬鹿にしてるから後で実験するとして……なるほどねぇ、そんなことが……なら、私は何も言えないねぇ。なんたって、内容そのものがまったく違うんだから」
「実験?コホン……そっかぁ…でも、頑張って勝ってくるねー」
「私の学年もクラス別競争があるから頑張らないといけないのが…あぁ、とても面倒だ」
ソシリア先輩らしい発言だね。とてもめんどくさそう。
「あ、そうそう。勝ったら大抵の願いは叶えてくれるらしいから、勝った時はこの部室がもっと便利な部室になるようにお願いするねー」
「夢のまた夢程度だとは思うけど、私は応援しておくよ」
「それじゃあ先輩、僕はもう行くね」
「……寝ている私を叩き起こして、聞きたいことだけ聞いて、さよなら?と」
「うん」
俯いたソシリア先輩を見て僕は嫌な予感がした。…何かしてくるに違いない。--と思っていたら何もしない、という雰囲気を漂わしたまま顔を上げた。
「あぁ、そうだ。部屋を見たところ掃除してくれたんだろ?疲れを取るための飲み物だ。入ってる容器は、私だからということで気にしないで欲しい。もちろん、色もね」
そういって、半透明の液体が入ったフラスコを差し出してきた。…いやいやいや。それって……うん。
「それって液体爆弾だよね!?」
「…ちっ」
「はい。もう、部屋も掃除しないし洗濯もしないし、必要な時の料理屋お手伝いもしません!」
「それだけはやめてくれるかな!?あの頃の生活に戻るのは嫌なんだ!」
電光石火…のような速さで差し出してきたフラスコを引き下げた。どれだけ家事がめんどくさいんだろう……悪魔の性質上、めんどくさくなるのかな?関係ないように思えるけど…
今にも泣きついてきそうなソシリア先輩を見て、先輩の欠片がこれっぽっちも無い、と思いため息を僕は吐いた。
いつになったら自立出来るのやら……当分かかりそうだね。
誤字脱字があれば報告の方をお願いします。
この作品は不定期投稿なのでブクマをおすすめします
ーー以外雑談、普通に長い時もあるので見なくても大丈夫。
まぁ、こんな内容になりました。多分次はクラスの子との交流かな?
たまには語らなくても良い時があった方がいいんじゃないのか?と思ったのでこれで終わり。(めんどくなったとかではないです)
では、また!




