9話
部長と恋白がいたのは坂に入る手前で恋白が部長の肩を借りて左足をかばいながら右足一本で歩いている。
「大丈夫?」
僕は恋白に声をかけた。
「転けちゃった」
恋白は笑いながら言うがジャージに泥が付いているので足を捻った後に転けたようで手に擦り傷も負っていて痛々しい。
「左足は動かせる?」
僕はそう質問すると恋白は左足を痛いと言いながら動かしてみせた。
おそらく骨折ではなさそうだ。
「動くは動くんだけど、地面につけて歩くとすごく痛い」
「保健室に連れて行って治療を受けもらった方が良いね」
僕は部長に言うと部長は頷いて口を開く。
「早くしないと保健室の先生はもうすぐ帰るから急がないと」
「このままゆっくり歩いてたら帰るかもしれないか……」
こうなったら僕が運ぶしかないか。
そう覚悟を決めて恋白の前でしゃがんだ。
「おんぶするから乗って」
「分かった!!」
恋白は僕の思いがけない行動を喜んだ。
「白垣君、いける?」
部長が心配して聞いてきてくれたが、「大丈夫です」と答えて歩き始める。
坂道を登るたびに歩く衝撃で恋白が上下に動くのですごく落ちそうで怖い。
「落ちそうで怖いから、しっかり捕まって」と声をかけると僕の言葉通りに強く捕まる。
ただ一つここで問題が。
強く捕まってくれたのは良いのだが、背中に2つの塊を強く感じるようになって、しかも、揺れで上下に動くものだから背中の中で暴れまわってすごく気まずい。だって、不可抗力とはいえ女子の胸に触れてるんだよ。
一刻も早く恋白を保健室に連れて行って降ろさなければならない。
「誰か保健室に先回りして車椅子でも借りてきてくれない?」
広場までたどり着くと周りにそう言った。
「私が行ってくるよ」
夏希はそう言って駆け出した。
「今日の部活はここまでだから、各自、着替えて荷物を教室に取りに行ったら集まれる人で集まってから解散ね」
部長は全体に指示を出して全員が学校に戻る。
「何があったの?」
僕は恋白に聞く。
「曲がろうと思ったら足がグネッってなってそのまま転けちゃった。歩こうと思えば歩けるけど、すごく痛い」
「無理に動かして痛みが酷くなってもいけないから、取り敢えず保健室で冷やして」
「うん、分かった」
恋白はそう言うなり、体の体重を全部預けてきた。
「白垣君、恋白ちゃんお願いするね」
学校に戻ると部長にそう言われて「了解です」と答えて保健室を目指して歩く。
部長は他の人を教室に連れて行くため別れた。
「リオ先輩、ごめんなさい」
2人だけになると恋白は呟いた。
「なんで謝るの?」
「だって、迷惑かけちゃたから……」
「別に迷惑だって思ってないよ。陸上やってて無理して痛みが酷くなったから。同じ事になって欲しくないなって」
「優しんだね」
恋白がそう言った時、前から夏希と保健室の先生が車椅子を持ってきて来てくれたのが分かった。
「北上さん、怪我の方は大丈夫?」
保健室の先生はそう言いながら恋白を車椅子に座らせる。
「大丈夫です」
恋白は笑顔で答えると保健室の先生は保健室に向けて車椅子を押す。
「白垣君も大変だったでしょ」
「ええ、重かったですけど」
保健室の先生に労いの言葉をもらって正直に言う。
「私は重くない!!」
恋白が抗議する。
「女の子にあまり重いとか言わない方が良いと思うわ」
保健室の先生に指摘され、恋白は勝ち誇った顔をした。
流石に40キロか50キロか知らないけどそのぐらいの重さを背負って歩くのは重いたいって言っても良くない?と心の中で抗議する。
保健室にたどり着くと恋白を椅子に座らせて治療を始めた。
「一旦、私たちは戻って荷物とか取ってこよ」
「了解」
「恋白ちゃんの荷物持ってくるね」
夏希の言葉にアイシング中の恋白は「ありがとうございます」と答えて僕と夏希は保健室を後にした。
夏希と共に教室に戻る途中の階段で一年生とすれ違って拶を交わした。
本庄さんと健吾とはすれ違っていないので教室で待っているのだろう。
「待たせた。すぐ着替える」
別の教室に移動する暇もないので同じ教室で着替える。
10分もしないうちに僕と夏希は制服に着替えて教室の戸締りをした。
僕は教室に置かれていた恋白のカバンを持って4人で保健室に向かう。
「恋白ちゃん大丈夫?」
荷物を渡して着替え終った恋白に本庄さんが聞いた。
「痛いけどなんとか歩けます」
恋白はそう言って立ち上がった。
「動かさないのは良い判断だったよ。応急処置の方法知ってたの?」
「元々陸上部で捻挫とかの対処は知っていたので」
保健室の先生に聞かれたのでそう答えた。
「さすが。そのおかげでひどい怪我にはならなかったわ」
そう褒められると少してくさい。
「そろそろ、保健室を閉めないといけない時間だから気をつけて帰ってね」
保健室の先生にそう促されて僕たち2年生プラス恋白は帰路についた。
「「それじゃあ、また明日」」
本庄さんと健吾と校門前で別れた。