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5話

 『相談いい?』


夕食を食べ終えて夏希にチャットを送った。

それから10分後ぐらいにスマホが震え出したので手に取り耳に当てる。


 『相談ってなに?』


夏希は話が長くなりそうと思うとスマホを打つのがめんどくさいと思うらしく電話をすぐにかけてくる。


 「恋白さん覚えてる?」


『あの小さい体なのにパワフルな発声をしていた子だよね?ところで、いつも人は苗字で呼ぶリオが名前で呼ぶとは随分と親しくなったのね』



名前で呼んだ事を指摘されてなんて返そうと考えていると『さっそく2人で帰ったもんね』となぜか軽蔑交じりの言い方で言い放った。


 「今日はその事なんだけど……」


 『告白でされて付き合うか付き合わないか迷ってる、だから、相談にのってくれ、なんて言うなら自分で決めなさいよ』


夏希はなぜか怒って、今にも電話を切りそうな様子で。鋭く釘をさすが、それは違う───いや、本質的な所は合っていても重さが違う。


 「あの~告白じゃなくて結婚してくれって言われまして……」


 『はぁぁ~~~~~!!!!!!!』


夏希が電話越しに大声で叫んだので耳がはちきれそうになる。

その声の大きさは電話越しじゃなくて、家越しで聞こえたんじゃないかと思うほどの大きさだ。


 『『うるさい!!』ごめんなさい』


夏希がお母さんに怒られる声が聞こえてきて、少し気まずい気持ちになった。


 『んっうん。結婚してくれてってどうゆう事?』


咳払いをした夏希がそう質問してきたが、そう聞きたくなるのも分かる。だって、自分でもそう思ったから。


 「いや、文字通り結婚してくれって」

 『実は裏で付き合ってたの?』

 「いやいや、初対面だよ。昨日の部活動紹介の時に顔を合わせて、今日まともに話したくらい」


それを聞いた夏希が驚いたような様子なのが伝わってきて、しばらく無言で情報を整理しているようだ。


 『さすがに結婚しましょうとか言わなかったよね?』

 「そりゃあ、Yesって言うわけでないじゃん。だから、何もしらないから無理って答えた」

 『それで北上さんはどんな反応したの?』

 「お嫁さん候補として見てくださいって……どうしよ?どんな距離で接すればいい?」

 『んーーー』


夏希は小さく唸り声をあげて何かを整理した後、口を開いた。


 『別に他の後輩と変わらない距離感で良くない?それで付き纏われて嫌なら、結婚しないって言えば?そうしたら自然と離れるでしょ』


夏希が淡々とした口調で難しい問題の答えを簡単に出したので 酷く冷酷に聞こえる。


 「で、でも、彼女は僕がいたから入部したらしいの。離れるという事は恋白が演劇部を退部する事に繋がる────絶対に演劇部に必要な人だよ………あの発声練習見たよね?」

 『リオの事を思って言ったのよ!!それ以外方法を他に思い付くの?仮に付き合うという事は結婚前提になるのよ!!あんたにはその覚悟なんてないでしょ!!』


夏希の触れてはいけない何かに触れたのか逆ギレっぽい感じになったが、夏希の言う事は正しいように思えた。

しかし、そのやり方は自分が恋白をめんどくさくなったら関係を切るという事。つまり、自分目当ての恋白は絶対に演劇部を辞めてしまう──僕は絶対に恋白は演劇部に必要な人間だと思ってるからそれは避けたい。

だから、悩んでいるともいえる。もし仮に関係が悪くなったとした……

そう考えているとふと思った事がある──夏希は恋白の才能が演劇部には必要がないと思っているのかな?

それだったら恋白が演劇部に必要ないからあんな事を簡単に言えたのも納得ができる。


 「確かに結婚する覚悟はないよ。取り敢えず恋白さんの様子をみてみるよ」


 「そう」


僕の決断に夏希は素っ気なく返す。


「だいぶ話が変わるんだけど、今日来た新入生はどう思った?」


 『予想したよりたくさん来たから驚いた。女の子にも男の子にも役者希望がいたし、裏方したそうな子もいたからバランス取れてると思うよ』


 「役者の有望株は誰だと思う?」


その質問をすると夏希は無言で長考をしたのち口を開いた。


 『リオも北上さんだと思ってるけど、私も同じよ。前に前に声が届く………すごい才能があると思う………』


夏希は歯切れ悪く言う──その言い方は恋白を認めていないような感じだ。

たぶん同じ役者としてライバルは認め難い存在なんだろう。


 「やっぱりそう思うよね。大会までの練習はどうしよう?」


そう切り出して副部長と今後の演劇部の活動を話す。

演劇やそれ以外の話を含めて小一時間ほど会話をしてから電話を切った。



私はリオと電話を終えた後、ベッドに大きく倒れこんだ。


 (終始、恋白さんって呼んでたけど、一回だけだけど恋白って呼び捨てにした──女子で呼び捨てにするのは私だけだったはずなのに)


何故だか身体が鎖に繋がれて拘束されたように重く体を起こそうと、もがこうとすればするほど鎖は重くなり下へ下へと誘い、世界から私が転落したような感覚を覚えた。


 『明日、学校に一緒に行かない?』


気づいたらリオにそう送っていた。


 

夏希との電話を終えて漫画に手を伸ばして読んでいたら、ピロンっと音が鳴ったのでスマホに手を伸ばした。

夏希から『明日、学校に一緒に行かない?』と連絡が来たと通知が入っていた。

こういった連絡は部活の大会や芸能鑑賞の時など校外に集まる時に迷うから連れて行けという時に連絡が来るだけで日常では送ってこないのですごく珍しい。

それにこんな連絡がなくても家が出る時間がほぼ一緒なので通学中には出会える。だから、わざわざ連絡してきたのはそれだけ何か伝えたい事があるのだろうと思って『いいよ。いつもの時間にそっちに行くわ』と返して漫画の続きを読み始めた。




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