第一話 清田優人と木之瀬なとり
小説家になろう様で作品を連載することになりました、下坂 嵜と申します。
執筆活動についてはそれなりに経験がありますが、なにかと至らない点はあるかと思われますので、叱咤激励のほどよろしくお願いいたします。
さて、この作品についてですが、こういう青春があってもいいじゃない。というコンセプトをもとに作成されております。
なのでほのぼの、ゆったり、まったり、ゆるーく展開される主人公とヒロインの恋愛模様を楽しんでいただければと思います。
長くなりましたが、本編のほうをどうぞ。
諸君らは春という季節に対してどんな連想を膨らませるだろうか。
新たな生命の息吹き、または目覚め?
出会いと別れの季節?
日本人限定するならシンプルに桜の季節。なんてこともあるかも。
俺の場合は、そうだねぇ、眠気の春とかどうだろう。
気温がポカポカしているせいか、なんだか異様に眠たいんだよなー。
たった数秒前までのどこか詩的だった思考を放棄し、俺こと清田優人はあくびをひとつ。
そして机に突っ伏しながらボケーっと青空を眺めた。
先ほどいったとおりに季節は春。もっと正確にいうなら高校生活二年目の春だ。
特に問題なく進級も済み、窓際の席からの眺めは一階ぶん高くなっている。
まぁ煙と馬鹿はなんとやら。高くなったところではしゃぎもしないんだけどさ。
というか根本的な問題になるけど、高校生活が思った以上に退屈というのもある。
そりゃ教職員や生徒会役員がやたら学校を支配していたり?
聞いたこともないようなマイナーな部活ないし、オリジナリティあふれる部活があったりなんて、現実的にありえないのはわかってるけどさぁ。
起きて通学して、勉学に励み、帰宅して課題をこなして、就寝して起床してまた通学。
こんなのやってること自体はサラリーマンと代り映えしないじゃないですか。
まーそれこそ部活動なりやれば、それなりに青春ってやつも味わえるんだろうけどさー。
やっぱ部活はしんどいよなー。大会優勝とか目指してる皆を素直に尊敬するよ俺は。
そういうわけでして、こうやってパッとしない毎日があともうしばらく続くわけで。
いや、パッとしてるかどうかは別なんだが、ひとつだけ楽しみなことはできたか?
悪趣味といわれてしまえばそれまでなんだが、要は進級してのクラス替えで隣の席になった女子が面白いやつって話。
どういうやつかって聞かれれば、なんというかこう――――
「き、きききき、清田、くん! お、お、お、おはよう! ございます……」
「おう。木之瀬さん、おはよう」
妙に上ずった様子で名前を呼ばれたと思ったら、どうやら件の隣の席の女子が現れたようだ。
彼女の名前は木之瀬なとりという。現代日本においては珍しくも奥ゆかしい少女である。
髪の毛は長く、前髪なんか長すぎて目元が見えないほどだ。
それに加えて手入れがあまりされていないのか、あちこちがボサボサと跳ねているのが見受けられる。
極めつけにはその体躯。スリムだとかスレンダーとかをとおり越して痩せ過ぎの部類。
そんな木之瀬さんに対する総合評価として、奥ゆかしいという言葉が一番マッチしていると俺は結論付けた。
とにかく、伏せた姿勢のまま挨拶をするのは失礼なので身体を起こす。
そしてできるだけ朗らかに、木之瀬さんの目……うん、目があるであろう位置に視線を向けて挨拶を返した。
少し戸惑いは見せたものの、木之瀬さんは会釈をしてから自分の席へと着いて鞄の中身の整理を始めた。
かつてを思えば木之瀬さんはこれでもかなり成長したほうだ。
なんたって挨拶も俺からが基本だったし、してもだいたいスルーだったからね。
無論だが、木之瀬さんとて無視したくて無視してたわけでないのは理解している。
挨拶するのにすらあれほど緊張するあたり、木之瀬さんはかなり引っ込み思案なタイプなのがわかるだろう。
最初は迷惑かもとか思いながらも、やっぱり無視されるのは悲しいので最低限の挨拶だけは必ずするようにしていた。
そうしたらそんな積み重ねが実ったのか、今のような状態に至るというわけだ。
いやでも、急激に距離を詰めるきっかけがなかったかと聞かれれば嘘になる。
だけどどうにもデリカシーに欠けていたせいか、今思えば木之瀬さんには少し申し訳ないことをした。
あれは確か、2年になってから1週間経過した頃のことだったろうか。
「木之瀬さん、おはよう」
「…………」
今日も今日とて根気強く挨拶を投げかけるが、手応えらしきものは無に等しい。
木之瀬さんは俺の声に反応して一瞬だけ立ち止まりはするものの、どちらかといえばそれは怯えからくるものに感じる。
それともこんなに構うタイプのやつは初めてで、どうしていいのかわからないとか?
どちらにせよ、木之瀬さんにただただ迷惑なだけなような気がしてきた。
単純に善意とかではないつもりだが、自己満足であることにも代わりないか。
もう少しだけ続けみて、変化がないようなら控えることにしよう。
そうやって自己完結を済ませ、内心で頷いてみたその時だった。
本当になんとなく、なんとなく木之瀬さんへとチラリと視線を向けてみる。
すると木之瀬さんが机の下に隠すようにしながら開いている本が、マンガの単行本であることに気がついた。
木之瀬さんが鞄の整理を終えるなり読書の体勢に入るのは気づいていたが、まさかそれがマンガとは。
勝手なイメージの押し付けだが、活字ばかりの小難しい本とばかり。
俺だって当然マンガくらいは読むわけで、木之瀬さんとほんの少しでも共通点があることに親近感がわいたのだろう。
そのくらいで留めておけばいいものを、俺は親近感ついでに余計な言葉を放ってしまったのだ。
「木之瀬さんもマンガとか読むんだなぁ」
「…………っ!」
俺のこぼれたひとことに木之瀬さんは反応を示し、本を痛めてしまうのではないかという勢いで読んでいたマンガを閉じた。
瞬間、俺の脳内には凄まじい勢いで後悔やら何やらが押し寄せる。
からかうように聞こえてしまったのが主なのだろうが、とにかく悪いことではないということは伝えなくては。
「あーいや、別に他意はなかったんだ。ごめんな? ただ、少し意外だなって思っただけで」
「…………」
俺の取り繕うような言葉に木之瀬さんは一切反応を見せず、それどころか石のように硬直してしまっているではないか。
俺たちの間に残るは沈黙ただひとつ。
周囲のクラスメイトたちは、ガヤガヤと騒いでいるから余計に物悲しく感じる。
い、いや、ここで怯んでいてはいけない! いっそここから話を発展させるべきだ!
そう判断した俺は、木之瀬さんの硬直を解除すべく。
あわよくば仲良くなることを目指して言葉を紡いでいく。
「そのマンガ、俺も読んでるぞ。熱苦しさが振り切っててさ、今時新鮮で面白いよな」
「…………」
「ほら、登場人物一人一人にきちんと物語りがあるっていうか。退場する時も必ずなにかを残していくだろ?」
「…………」
「主人公の親友が死んじまうシーンなんか、俺感動して涙が止まらなくてさー」
ここまでまったく嘘は言っていない。
俺は確かに木之瀬さんが持ってる漫画を読んでるし、泣いたっていうのもそれはもうボロボロ涙をこぼしたものだ。
しかしそれでも木之瀬さんには通用しないのか、やはり未だに固まったまま動かない。
……アレか、これは謝ったほうがいいのだろうか?
だ、だが、俺が悪いことをしていないというのもまた事実だし、謝られるのも木之瀬さんからしてどうなんだ。
そんな俺の心配とは裏腹に、事態はここからいわゆる急転直下になると誰が予想できたろう。
「………です」
「はい?」
「そのとおりです!」
「お、おう?」
「いや、もうホントそれなんですよ! エモ! この漫画はエモの塊なんです! 敵も味方も登場人物も死ぬときはアッサリ死んじゃって、新鮮といえはそのあたりもですよね! そして重要なのはその後! ホント清田くんよくわかってますね最高ですか!? そう、全然なにひとつ無駄死にじゃないんですよ! 死亡シーンすらただ悲壮的なだけならない作者様の綿密なストーリーと描写の賜物ですよね!」
「あ、はい、仰るとおりと思います?」
木之瀬さんが珍しくもなにかをボソボソと呟いたため、聞き逃すまいと少しだけ耳を傾ける。
その時だった。
木之瀬さんは豹変という言葉に似つかわしく、普段の様子へとどこへやら、こちらにズズイと迫ってまくしたてるようにペラペラと喋り出すではないか。
いっていることは理解できるのだが、あまりのギャップに対しては理解が追いつかない。
まるで別人と話しているような驚きと共に、木之瀬さんの珍しい姿を見れたという異なる驚きが同時に襲いかかってくる。
そうして俺が自らの口から縛り出せたのは、聞いているのかどうかすら危うい曖昧な返事だった。
「…………!? あ、あああ、わ、私…!? ごごごご、ご、ごめんなさい……!」
自らが興奮していた。普段の自分らしくない言動を取ってしまったと気付いたのか、木之瀬さんはまさに青菜に塩といった様子。
むしろ大人しくなるという表現は生温く、俺がどういった反応を見せるのかということに対して恐怖すらしているようだ。
なにが木之瀬さんをそこまでそうさせるかは、俺が踏み込むべき領域ではないだろう。
しかし、あくまで話を振ったのは俺からで、俺が木之瀬さん自身が見せたくない部分を引き出してしまったのだとしよう。
だとするなら間違いなく謝るべきは俺だし、場合によってはやはり二度と木之瀬さんには声をかけないほうがいいのかも。
「いや、俺の方こそ悪かった。木之瀬さんのこと、そっとしておくべきだったよな」
「…………?」
「む、その反応はよくわからないな? なにをそんなに物珍しそうな視線を向けておいでで?」
「あ、あの、えっと、き、気持ち悪いとか思わないんです、か?」
心からの謝罪を送ってみると、それまで俯いたまま震えていた木之瀬さんは、急に顔を上げてこちらを観察し始めた。
いかんせん前髪が邪魔で断言できないけど、きっとその目は珍獣を前にしたかのようなそのものに違いない。
どうしてそんな反応なのかと質問を返してみると、木之瀬さんの口から飛び出たのはなんともネガティブな言葉だった。
っていうか、マァですか? それってつまり、これまでにそういうことをいわれた経験があるってことですか。……マァァァァァァァァ?
「ああ、全然。そりゃ少しは驚きはしたけど、好きなものを熱く語ってる姿。としか映らなかったけどな」
「…………!」
そのへんについては詳しくわからないけど、さっきの木之瀬さんはいわゆる早口オタクってやつだったという認識でいいのか?
普段はあまり喋らないけど、自分の好きなジャンルについてはめっちゃ語っちゃうとかいうやつ。
世間体としてそれは蔑称のようなものに近く扱われているようだが、実際目の当たりにしてなんとも大したことないない。
俺のいったことが全てだよ。好きなものを熱く語ってなにが悪い。
流石にそういった姿がかっこいいというのは過言だろうが、好きなマンガについて語る木之瀬さんの姿は、なんとも輝いていたように思える。
うむ、驚いたことによってとっさの対応ができなかっただけ。という弁明だけはなんとか果たしたぞ。
あとは木之瀬さんがどう出てくるかなんだが、とりあえず絶交という最悪の事態だけは回避できたような気がする。
「は、はじ、めて、です。その、そ、そ、そ、そんなこと、いわれたの」
「うん、まぁ、やっぱそうか。ほんと、悪かった」
「い、いえ、そんなことは。むしろ謝らないといけないのは、私、ですから」
少なくとも十六年生きて初めていわれるのなら、珍獣を見る目を向けてしまってもしかたないことなのかも。
それよりも、木之瀬さん自らの口からやはり初めてであることの確認がとれたのなら、重ねて謝罪を述べておくことにしよう。
木之瀬さんに再度もう一度謝っておくと、彼女いわくむしろ謝るのは自分のほうだとのこと。
はて? それこそ木之瀬さんに謝られるようなことをされただろうか。
そうやってこれまでを思い返しながら頭上に疑問符を浮かべていると、木之瀬さんはおずおずと謝るべきこととやらを語った。
「き、清田くんは、その、ずっと私と歩み寄ろうとしてくれてましたよね。あ、いや、その、我ながらおこがましいんですけど」
「まぁ、一応それで間違いはないな。むしろ迷惑かもって思いつつだったが」
「い、い、いえ、め、迷惑だなんて、そんなことは決して。あ、挨拶、してくれるの、本当はすごく、う、嬉しかったんです。けど、私、えっと、どうしていいかわからなくて、結果的に無視してしまいまして」
なるほどなるほど、なんだかだんだん木之瀬さんのことがわかってきた気がする。
木之瀬さんがこれまでどういった高校ないし学校生活を送ってきたか、については詳しく触れないことにしてだな。
とにかく木之瀬さんにとっては俺という存在があまりにも未体験であり、どう対処していいのかがわからないというのが正解だったらしい。
なんだ、そしたら珍獣というのもあながち間違ってはいないというわけだ。
つまり木之瀬さんが謝るべきというのは、意図的ではないにせよ無視した。という部分についてか。
「そんなこと、別に謝るまでもないって。つまりだ、俺たちの間には、なんてーの? 齟齬? があったわけでだな」
「は、は、はい」
「お互いにごめんなさいしたし、これからよろしく。でいいんじゃないか?」
「…………!」
これもきっと、木之瀬さんにとっては未知で、規格外で、またしても戸惑わせてしまっているのかも。
だけど俺の根底にある木之瀬さんと仲良くなりたいという気持ちは本物だ。
なんだか思ったのと違うというか、なし崩しのようになってしまうとは考えもしなかったが。
それでも挨拶を本当は嬉しかったという言葉に偽りがないのなら、木之瀬さんと俺の気持ちはもともと同じだったという証明。
ならばもう、俺たちのするべきことはただひとつ。
お互いの手をとり合うこと以外にないじゃないか。
木之瀬さんに右手を差し伸べてみると、彼女は恐る恐るという表現そのまま、手を震わせながらゆっくりと俺の右手をとった。
掴んだ手はあまりにも細く、少しでも力の加減を間違えるとへし折ってしまいそうなほど繊細だ。
逆に木之瀬さんが俺の手になにを感じとっているかは知るよしもないが、交わされた握手を信じられない様子で伺っているのがとても印象的だった。
とまぁ大まかにことの経緯を話せばこんなもん。
やっぱりデリカシーがないと思いつつも、そのデリカシーのなさがなければこうはなってなかったとも思うし難しい話ですね?
成長したとはいったがまだまだ慣れないみたいだし、俺から話題を振らないと挨拶しか交わさないなんてことままある。
もっとこうフレンドリーかつフランクに、どんな話だろうと適当に振ってくれるくらいになってくれれば大きな進歩だろう。
「あ、あ、あああ、あの、清田、くん」
「おっ? どうしたどうした、なんかあったか」
「え、あ、いや、その、あの、ええっと」
なんてことを脳内でボヤいていると、まさかのまさかで木之瀬さんのほうから声をかけてくれるではないか。
そうそう木之瀬さん、その調子だ。
どんなくだらない内容だろうと、まずはそうやって話しかけることが大事なんだぜ。
という気持ちが隠し切れなかったのか、どうやら期待に満ち溢れた様子が少し顔に出てしまったようだ。
木之瀬さんに身体ごと向けて注目してみると、思ったより俺の食いつきが激しいせいでの戸惑いが見てとれる。
そのままやっぱりなんでもないですとかいい出しそうなところ、木之瀬さんは勇気を振り絞るかのようにとある話題をボソボソと口にした。
「ッスゥー……。天、気ぃ……いいですね……」
「あー……」
うん、多分だけど本当は振ろうとしていたのと違う話題だこれ。
とはいえここで肯定のみで終わると、またしても木之瀬さんが俺に話しかけるのを躊躇いかねない。
そう考えた俺は、チラリと大きく広がる青空を眺めた。
いわれたとおりにいい天気ではあるなぁ。
「ああ、そうだな。なんかこう、春らしい青空って感じじゃないか? のほほんとしてるっていうか」
「え、あ、は、はい。同じ意見、です」
「ってか春といえばなんだけどさ、木之瀬さんってどの季節好き?」
「え、えっと? はい、その、それこそ今とか、好きです。その、過ごしやすい、ので」
「わかりみ。けど俺は冬とかも好きかなー。クソ寒いけどさ、食いもん美味くない? つーか鍋が好きってだけなんだけどな。ははっ」
木之瀬さんも木之瀬さんでこの話題は俺の肯定で終わると思っていたのか、いくぶんか油断していたようだがなんとかリアクションは得られた。
というわけなので、俺が普段から用いている会話の基本は数珠つなぎ戦法(?)を基に、天気の話題を季節の話題へと発展させてみる。
どうやら木之瀬さんは今時分あたりがお好みとのこと。へぇ、それはそれは。
うむ、こうしてまた木之瀬さんの新しい面を知れたのはよきかなよきかな。
それが例えどれだけ小さな事柄だとしてもだ。
そんでもって、ぶっちゃけさして興味ないだろうけど、こちらも好きな季節を教えるかたちで言葉を返す。
その際に話題の中に鍋のことを盛り込むことによって、これでまた好きな鍋ないし好きな食べ物へと話題を発展させていってだな。
……おや、木之瀬さんの様子がなんだかかしいぞ? 少しだけ黙って観察してみることにしよう。
「ひぇ、苦し紛れに出た天気デッキなのに返しのターンで鬼展開してくるよぉ…。天気から季節リクルートしてくるとか私には無理ぃ…。陽キャのアグロ会話デッキ怖いよぉ…」
手で顔を隠しながらなんだかボソボソといっているようなんだけど、断片的にしか聞こえないのがなんとも。
デッキ? 返しのターン? リクルート? えっと、カードゲームの話でいいんですかね。
いや、今は絶対に関係ないとは思うんだけど、ところどころ聞こえる用語が完全にカードゲームのそれなんだって。
あとあれだ、怖いっていってるのだけ聞こえた。
なんだかよくわからんが、今の俺はものすごく木之瀬さんにものすごく怖がられているらしい。
でもなんていうか、木之瀬さんと握手を交わしてからというもの、このよくわからんがぶっちゃけ面白いんだよなぁ。
だから悪趣味といわれればそれまでといったわけだが、異文化へと触れるワクワク感とか、俺の中ではそういう類のものなんだよ。
木之瀬さんをいじって困る様子を観察して楽しんでる。ということではなくてだな? うん、本当にそこだけは勘違いしてほしくない。
「木之瀬さんや、そろそろ先生のくる時間ですぜ。なんか知らんが気をとりなおしていこうや」
「は、は、はい。ありがとうございます。その、えっと、ま、また、休憩時間に、でも」
「おうよ」
怖がられてるといっても、また関係が振り出しに戻るレベルではないと推測しての発言だったが正解らしい。
俺が気をとりなおすよう促すと素直に聞き入れてくれたし、なんならまた次の機会に話そうともいってくれた。
うーん、なんだか感慨深いというか、普通に嬉しいまである発言だよなぁ。木之瀬さんに他意はないんだろうけども。
嬉しさのあまり顔がニヤニヤしてしまいそうなのを抑えつつ、きたるべきホームルームに備えて俺もまた気を引き締めるのだった。
とりあえず、第一話では二人が仲良くなるきっかけをお送りしました。
今のところまったく脈ナシに思える二人を、いわゆる恋仲になるまでの過程を見守っていただけたら幸いです。
隣の席は陰キャ女子について、気軽に感想をお待ちしているのでどうぞよろしくお願いいたします。
それでは、またお会いできることを願っております。