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82話 vs 邪龍 アーリマン(2)



 ワタシは、

 アーリマン(セぺト)の肩を触りながら考える、


 ワタシ自身ではアーリマンは倒すことはできない。 それに、アーリマンは、あの手この手でワタシを殺すことができるでしょうね…


 なぜなら… 

 この廃墟の街は、アーリマンが支配する邪悪な妄想世界(ナイトメア)の中だから、


 とか考えていたら!

 

 どこからか! 狂犬病のような街の住人が周囲を取り囲むように数十人現れ!


 ワタシにゾンビにように、よだれ垂らして近づいて来る!


 直後、

 はい、予想通り…ワタシの体は金縛りになりました。

 指一本、口も動きません。



 ワタシの前で屈んでいるアーリマン(セぺト)は、

「さっさと喰われて死ね…閻魔女王…」

 立ち上がり、サイレンを14時に鳴らすために、鉄塔に歩んだ…



 残されたワタシは、心で、


 【 ドッペルゲンガー出番よ… あなたがワタシを殺すんでしょ? 廃墟のビルの割れた窓から、親指くわえてワタシを見てたの見えてたし…】


 後ろから、いつもの爪を噛む癖で、被っているビニール袋をガシャガシャさせる音が聞こえ、


《 アーリマンじゃなくて、ワタシがワタシを殺すから… 》


 【 アーリマンに勝てる? 】


《 ワタシの恐ろしさ…ワタシが一番知ってるはずよ… 》


 直後、後ろから、


 ズバ! ズバババン! 切り叩く音。


 次に、ドッペルゲンガーは頭部に黒いビニールを被った上下迷彩服で!

 前方をバッサバッサと斧で切りまくる。


 あっさり全滅。


 やっぱドッペル無茶苦茶、強いわ…

 ワタシ的に気持ちは複雑だけどね…


 ドッペルの無慈悲な戦闘を見て、驚いた顔のアーリマンは、


「なにものだ!? おまえは!?」


《 ワタシはユキノの悪夢(ナイトメア) 》


 思い出したようにアーリマン、


「俺の世界を自由に破壊できる悪夢だと? もしや…昔の俺の師匠『鎖蛇(サタン)』様の秘術…精神兵器ドッペルゲンガー?閻魔女王が連れ込んでしまったのか!? こんなモノが俺の世界にいたらヤバすぎる…」


 慌てて、アーリマンは鉄塔に走る! 14時にレバーを下ろしサイレンを鳴らして世界をやり直すために!


 ワタシは心で叫ぶ!


 【 いけ!! ドッペルゲンガー!! アーリマンを止めろ!! 】


 テレポーテーション?


 ドッペルはアーリマンの前、階段の手前にパッと現れる。


 驚いたアーリマンは尻もちをつき、

「やめて…たのむ…死にたくない…」


 ドッペルは斧を振り上げた…

 アーリマンはブルブルと震え、また、


「俺のカーリーの街が消えてしまう」


 ワタシは心で、


 【ドッペル、ストップ】


 ドッペルはコッチを向いて、

《 なぜ? 》


 無心にしてたら…

 ドッペルはアーリマンへ、斧を振り上げたまま見下ろし、


《 アッチのユキノを動ける様にしろ さもないと斧を滅多下ろし 》


「ああ…分かった…」


 ワタシは動けるようになると…

 アーリマンに歩み、顔を近づける…顔が初めて会った時のセぺトの様になっていた…


「今の時間は?」


「時間? 13時55分25秒」


「行ってこいよ、セぺト、サイレンを鳴らしに」


「え?」

 ドッペルゲンガーも驚いて、

《 え? 》


 セぺトは割れた眼鏡でワタシを見つめながら、

「世界をやり直すために、14時にレバーを下ろしたら…お前の存在が消え…死ぬかもしれないんだぞ?」


「いいよ、たぶん、おまえがサイレンを鳴らさなきゃ、ワタシ達もこの街から出れないだろうしね」


「いいのか? 本当に?」


 ワタシは割れた眼鏡の向こうのセぺトの目を見つめ、


「セぺト…ワタシに約束したでしょ?」


「約束?」


「この街の人間は誰も殺さないって…あの目はガチだった…ワタシはセぺトを信じるだけ」


「おまえは…俺を信じてくれた…? うううっ…」


 セぺトは苦しみ出し…


「うごげげげぇぇぇ…っおえ! ポン!」


 口から小さな赤い何かが勢いよく出てきた… 

 それは2cmくらいの小さな赤いトカゲで、

 アスファルトに上でグテっとしてる。


●● {セぺトの中の…俺が創った邪悪が消えた…くっそう…閻魔女王め…


 街を包んでいた霧が晴れていく…


 黒いSMX(クルマ)も見えた…


 ワタシのドッペルゲンガーも消えている…


「セぺト行け、時間が無い」


「ああ…すまない…」


「もう二度とサイレンを鳴らす事の無い世界を望んでレバーを下ろしなさい…」


「閻魔女王…本当にありがとう…」


 セぺトは走って鉄塔の階段を上がっていく。



 さてと…


 ワタシは2cmくらいの、赤い小さなトカゲを見下ろし、


「アーリマン? 多分おまえ? セぺトがドッペルゲンガーの斧で死んでもお前は生き残る気マンマンだったろ?」


●●{ゆるして


「即判決、おまえ即死刑な?」


●●{クソ…せっかく素晴らしい魔力を持ったセぺトに寄生していたのにぃぃ


 ワタシは右のニーハイブーツを左の膝まで上げて、


「しね」


◎◎{味方になります! やめっろ!


 グチャ!!


 カカトで強く踏み、


 ズル~~~


 180度捻り…


 後方にあったSMXに歩む。


 車に乗ると、

 助手席のセントが、


「大丈夫?☆ 霧は晴れたけど☆」


 ワタシはアクセルを踏み… 走らせながら、


「アーリマンを片付けた…」


「え?☆ どうやって廃墟の街アーリマンを?☆」


「ここはもう廃墟の街じゃなくなるよ…だから、バベルの塔へ急ぐ」


「うん☆」


 

 ブウー――――――――――――――――ン



 サイレンが鳴る…


 街の建物が重力操作のように復元されていく… 


 砂時計の様に、車や人が現れだす…


 手を繋いだ家族、いちゃつく恋人、おばあさん乗せた車イスを押すおじいさん。

 赤ちゃんに微笑みを向ける母。

 

 セントは驚いて…


「これは…☆ 本当に地獄で年を取り、子を産める街があったの?☆」


「コレがセぺトの言っていた大都市カーリー…もう幻じゃない…カーリーは実在し始める」


「なんか…☆ みんな優しそうな人ばっかりだね…子供がいるからかな…天国みたいだ…☆」



 邪悪なアーリマンは消えた、

 だからセぺト…

 もうカーリーの街にサイレンは二度と鳴らない…


 がんばれ




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 14時ちょうどに、俺はレバーを下ろした…


 すぐに耳に指を突っ込む、


 ブウー――――――――――――――――!!!


 それでも鼓膜が破れそうな音…


 え?

 鉄塔が?


 崩れる!!

 うわああ! 潰される!?







 あれ?


 ベッド? 俺は、なんでここにいる?


 アパートの部屋? 


 デジタル腕時計は14時?


 眼鏡つけたまま眠ったのか? たしかレンズ割れてたような気がするけど…

 黒い衣装の女も…いたような…?

 思い出せない…

 ん? 記憶喪失か何か? 

 いや俺は現場でユンボを操縦する仕事してるセぺトだよな…?

 そっか…ユメか…


 ドアが開き、

 一回り年下の妻が、

「あなた!」


「え? どうした?」


「はあ? 今日は家族3人の写真撮るんでしょ? 美顔教室から帰ってきたら、あなたは昼寝してるし、ガイランは外で遊んで待ってるわ」


「……写真? あ? そうだそうだ!」


「写真屋さんに2時半よ。 その作業服から、急いでちゃんとした格好に着替えてよ」


 焦り、衣装ケースを開き、


「俺に正装なんかあったか?」


「結婚式用のでいいんじゃない?」


「うん、てかそれしかないし」


 黒の正装を着た俺は、鏡を見つめ…

 自分の全貌に…う~ん…っと思っていると…


「あなた…写真を撮る前に、報告したい事があるの」


「なんだ? 俺のハゲが進んでいる事か?」


「二人目が出来たかも」


「え? 本当か!?」


「きてないから多分…」


 思わず…


 口づけをした…



 妻が大好きだから





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