72話 ティアマトの町 (1)
24時間後…
台風地獄5000キロの、出口の城門が見えた…
もう疲れたわ…
後ろのパジェロを一人で運転してきたワルキューレは、ワタシ以上に疲れてるんだろうけどね…
バックミラーでパジェロの運転席を見ると…
やっぱり首がカクンカクンしてる。
門の前でSMXを停車する…
ワタシは眠気を振りしぼり…
「たのむわセント…」
「了解☆」
雨に濡れながら、地獄のマスターキーで、門を開けに行くセントを見つめる…
動くワイパーの存在を初めて意識して…
それをボ~っと見つめながら、
「これ…台風地獄を走る間…81時間も動いていたの…ワイパーすごいわ」
ワイパーの動きに…
やばい…眠ってしまう… まあ…常に先行を取れた台風地獄の道中、かなり後続のイブたちへの妨害工作をしてるから… 一眠りするくらいの時間はあるだろうけど…
すぐにセントが入って来て、
「ユキノ様!☆ 開けた☆」
「じゃ、行くよ…」
進む… 後ろのパジェロもついてくる…
台風地獄… 後続の敵に大差をつけてクリアー
やった…
すぐにゆっくり停車する…
セントを眠たい目で見つめて、
「次の地獄は?」
「バベルの塔も近づいてきたよ☆ もう少し行けばティアマトの町➡極寒地獄➡『廃墟の街アーリマン』➡バベルの塔☆」
「まだまだあるじゃない…でもまあ…ゴールは見えてきたか…セント…次の町で少し休憩を取るね…」
「うん☆ だいぶ後ろの敵との距離もあるし大丈夫だと思う☆」
「町にホテルとか休める所あるかな?」
「ある☆ 古い旅館だけど☆」
ドッペルゲンガーに呪われてから睡眠に苦労してるから…
「よかった、ベッドか布団で時間をかけて寝たいから…」
ワタシはSMXを走らせる…
ホントだ、すぐ町が見えてきた。
町に入る…
なんかアレだね… 道は舗装されてないし狭いし…
家は…というか屋敷? 日光江戸村みたい…
まさに時代劇の世界…
え!?
「セント! アレは!?」
ワタシが首の長い長い女を指差すと、
「ろくろ首だよ☆ この町は日本の妖怪が住んでる街なんだ☆」
「町の名前はティアマトなのに…日本の妖怪が住んでるのね…」
その時…
ゆっくり走るSMXの前で、
特攻服の、リーゼントのっぺら坊と、
白装束を着て、三角の白い布を頭部につけている若い女の幽霊が…
年寄りのオジイサンをボコっている…
「うわ~おやじ狩りか~」
ワタシはSMXを停めて、
「ちょっと世直ししてくるわ」
「さすがユキノ様☆」
後ろで、視力5の青鬼ショウが…
「あのジジイどっかで見たような…」
ワタシは後ろを振りむいて、
「年取ると、みんな同じような顏に見えるからね…」
ムチを持って、黒のSMXを出る…
のっぺらぼうは、オジイサンの両肩を押さえて右ヒザを懐にボコっとかます。
オジイサンは崩れて、嘔吐しながら、
オジイサン 「ぼええぇぇ…うおおおぁぁぁやめて…くれ」
のっぺらぼう 「ジジイ! 近づいてくんじゃねえボケが!!」
幽霊女 「ワタシの姉貴分が誰か知ってる? 極寒地獄を仕切ってる雪女よ」
オジイサンは、幽霊女の長い白装束の端を掴んで怯えながら見上げ、
「雪女? あの雪女の妹分かぁぁ…やめてぇぇ」
幽霊女は腕を組みながら、オジイサンを見下ろし、
「ノッぺー、もっともっともっとよ…ジジイを暴行しなさい」
右手に持った警棒を左手にポンポンと叩くのっぺらぼうは、
「わかった、オイモちゃん」
ボコボコバキ
うわ~何があったか知らないけど… 酷いねコレ…
ワタシは歩み、
後ろから、のっぺらぼうの肩を触り、
「もう止めとけ、このオジイサン死ぬよ」
「なんだお前は?」
「閻魔女王だよ」
「しらねえし!! 邪魔すんな!!」
警棒をワタシに振り上げて来たから!
『S』hotgun !!
『M』uchi !!
S難度 ★★
ムチの連撃をのっぺらぼうへ!
ベルゼブブとベリアルから得た、全自動のサーチマニアは作動しない…相当な小物ね。
ワタシのムチはのっぺらぼうの頭部三か所に貫通し、
ハニワ顔になった、のっぺらぼうは顔を押さえながら、
「痛い! 痛い!」
ワタシはにこやかに、
「顔ができてよかったね? 次は鼻の穴いくか?」
のっぺらぼうは、向こうへ走りながら!
「こわい! こわい!」
残された幽霊女はスマホを取り出し、
「よくも大好きな彼氏の顏を傷つけたわね…ぜったいに…地獄最強レディ―スのリーダー雪女の雪子に連絡してやる…」
「レディ―ス?」
そのキーワードで、昔を思い出したワタシは中指を幽霊女に立てて、
「上等、雪女の雪子に伝えとけ、閻魔女王ユキノがいつでも相手になってやるよ」
「ユキノてめえ! はいたツバ飲み込むなよ! …でも離れてラッキー、あばよ!!」
近くに置いてあった紫の原付に乗って白装束をなびかせ去ってゆく…
消えゆく幽霊女を見つめながら、
「離れてラッキーって? どゆこと?」
ボロボロのオジイサンは…ワタシの足首を、その細い腕の手で掴んで涙目で…
「ありがとうぅぅ…これからよろしくなぁぁ…」
ワタシは頬のこけたやせ細った、頭も随分とハゲたオジイサンを見下ろし、
「はあ? なんでよろしくなのよ?」
今まで一度も見せなかった不気味な笑みで見上げ…
「オイモの次に助けてくれたぁぁ…お前の番じゃぁぁ」
「はあ? なにが?」
よく見たら、大滝●治のような顔と声のオジイサンは、
「ワシは貧乏神じゃあああ…フフ…南無阿弥陀仏ぅぅ…ワシは不死身ぃぃぃ」
うっ…
このジジイ! 貧乏神!?




