68話 台風地獄 (6)
ガラ―
シャッターを開けてガレージに入る。
髪を結んでいた輪ゴムを外した後、
SMXの後部座席のドアを開けてタオルを取り、濡れた髪を拭く。
すると、階段から三体鬼が中年奴隷を連れて下り、
赤鬼セント 「ユキノ様!☆」
青鬼ショウ 「オレ達三人を殺そうしてたフェンリルは!?」
白鬼リュウト 「倒してくれた!?」
ワタシは次に体を拭きながら、
「なんとかね」
その言葉に、
セント 「よかった☆」
ショウ 「ユキノ様! TUEEEEEE!」
リュウト 「ユキノ様! SUGEEEEE!」
まあ… 本当はラッキーなんだけど… 正直、アレ強すぎだったから…
ワタシはセントを見て、
「ゴーストタウンの出口の道路にモリガンが待ち構えているわ…トラックの荷台の上で、凄い威力のバルカン機関銃を構えてね…台風といっても、向こうからのは見晴らしのいい場所よ…」
「それはまずいね…☆ モリガンは防御に突出している…そのモリガンがバルカン機関銃を持ってるとなると… 一筋縄ではいかないよ☆」
ワタシはセブンスターに火を付けて、
「ふ~~、さて、どうしようか…」
「SMXが通れる隙間はある?☆」
「それはある」
ショウが、
「バルカンの盾になるモノを車の前と後に付けて、突っ込むのは?」
「ふう~~、悪くは無いけど…電信柱も削り倒す威力よ? そんな威力の盾になるようなモノがゴーストタウンにあるかな…」
シー――――ン
ガレージの脇にあったホースポンプを見た後、すぐに、ある結論に至る
「モリガンのバルカン機関銃を封じる…それしかないわね」
「どうやって?☆」
「この街には下水管が通っている。ワタシはそこから潜伏移動で近づき、モリガンの待ち構えるトラックの上のバルカン機関銃に…ガソリンをかける…ガソリンがかかれば無数の弾薬に引火するから放てなくなる…つまりモリガン自体の攻撃力も失うわ」
ワタシはSMXの中からブランデーの瓶を取り出し、僅かに残った中身を流し…
ショウとリュウトに、
「おい、そこのホースポンプを使って、この瓶に車のガソリン入れておけ?満タンな?」
「うん」
「ういっす」
ワタシは再び髪をゴムで結びながらセントを見て、
「セント達はモリガンからの死角ギリギリの交差点で車から少し離れて待機…フェンリルの死体のある交差点がモリガンに気づかれないベストの位置だと思う」
「了解☆ オレはそ~っと状況を見ているね…☆ 頃合いを見計らって車を出口に走らす…台風だし☆ そ~っと見ればバレない☆」
「お願い」
その時、ショウとリュウトが、
「入れた」
「これ」
ワタシはガソリンの入ったブランデーの瓶を受け取ると、
運転席のドアを開けて乗り、
「いくよ…中年奴隷を乗せろ」
ドアを閉める…
3分後…
前に灰色の大きなフェンリルの死骸が見える交差点に来た…
強風雨の車の外で三体鬼に、マンホールを開けさる…
ずぶ濡れのリュウトが、窓をトントンと叩く、ワタシは少し窓を開けると、
「ユキノ様、開けたよ…」
リュウトはフェンリルの無残な死骸を見て、
「マジでフェンリル殺したんだ…」
ムチと瓶を持った後、ワタシは車から出る時、リュウトの耳元で、
「じつはね、ワタシ一人の力じゃないの…」
「え?」
「あんた達ケルベロスが、昔フェンリルの右前足を喰いちぎって義足にさせてなければ殺されてた…ありがとうね」
「え?」
通り過ぎたワタシにリュウトは後ろから、
「死なないで…ユキノ様…」
雨に濡れるワタシは振り向くことなく親指を立てる…
セント 「御武運を☆」
ショウ 「気を付けて」
小さく頷き、水の流れる排水管に入る…
さてと…
トラックの近くまで排水管は通ってるのかな…?
先ずは… 真っすぐのフェンリルの居るサイドの方へ四つん這い歩きで行く…
ちっ…上から水は落ちてこないけど…
暗い…
ライターで確認しながら進む…
よし… 右に曲がり道があるわ… 左と直進にもあるけど、
距離的に、この辺がフェンリルの死骸がある場所…
おおよそトラックまでの距離は50メーターくらいだったわね…
右に曲がり、また四つん這い歩きで進む…
15メーターくらい、ひたすらまっすぐ行ければ…
え? 狭!!
真っすぐと… 左への分かれ道…
真っすぐ狭い!! 左は四つん這いで行けるけど!!
通れるか? したかないし、とりあえずチャレンジしてみる!
グググっと両手を伸ばし肩が入った…
強く流れて来る水が顏に…
「ぷっぷっぷっ…ちくしょう……なかなか息…くそ…」
進む… ぷは~~ うっ… ぶっは~~
光が見える…
地上の溝だ…
進行方向を見る…
トラックのある辺りまで、上に隠れる蓋が無い一本の道の溝…
おそらく、頭を上げれば… すぐ見つかる…
台風地獄が吉と出たわね…
強風雨じゃなければ間違いなく…バレずにトラックまでは行けない…
ゆっくりと逆流の中を進む…
トラックまで、おおよそ30メーター…




