29話 地獄列車 (4)
切り裂きジャックは悪魔が丘の駅前に停まっているタクシーをノック。
ドアが開き、車の中にユキノを押し入れ、
「妻が酔っ払い、この様だよ」
ユキノの隣に座った。
高齢の運転者は、
「どこまでですか?」
タクシーは走る。
何も変哲もない山道で、
「この辺で」
「え? あはい」
タクシーは車を止め、
ピ、「890円です」
「お釣りは結構です、よいしょっと」
売上をカバンに入れながら運転手は、ユキノを抱え目立たない山道を歩くジャックの後ろ姿を見て、
「こんな所に家があるんだ」
ガガガと無線が、「西町のガソスタに、人探し、乗り賃、当たりかもしれない」
「4号車了解、10分で迎えます」
ブー
車を走らせた。
ん?
ここは?
薄暗い密室…
壁のフックに…縄、いくつものナイフ、ノコギリ、電動ドリル、折り畳みの長テーブルも壁に掛かっている。
なるほどね…さすが地獄…さて、どうするか?
とにかく冷静に…
手は後ろに、縄でギッチギッチに縛れている…
起き上がり、板張りの壁にドン!と前蹴りをする。
納屋とかでは無く地下室か…
部屋にワタシの武器のムチは見当たらない
その時、天井が開き…
地下へと繋がる階段から3人の男が下りてくる。
3人かよ…しかもこいつら、おそらく猟奇犯…
ワタシを拉致った青白い顔の男がワタシに一礼して、
「200万円はありがたく頂いとく…ユキノ…生前、俺は切り裂きジャックと呼ばれていたが知ってるか?」
「あんたが有名な切り裂きジャック? ロンドンで女を何人も殺した殺人鬼」
切り裂きジャックは一緒に下りてきた、後ろにいる背のかなり低い醜い顏の男二人を親指で指し、
「この二人はラモン兄弟、コロンビアで俺より多い数の人間を殺している、俺同様に現生では捕まってないがな。 無間地獄から共に逃亡して、今は俺と、この家で暮らしている」
ラモン兄弟は待ちきれないようにハア~ハア~と息が荒い。
ワタシは上の階を見て、
「この家の住人は?」
ラモン兄弟は嬉しそうに、
「家の3人ころして…やまおくすてた」
「魔獣のエサになってた…ハア」
「おまえも…ドリルで穴開けまくって…100いく? ききき」
「あにき…おれ…イトノコギリ… ききき」
ラモン兄弟はきったない歯を見せつける様に笑う。
切り裂きジャックは二人に言い聞かすように、
「お前ら、ユキノは閻魔女王とかいう大物らしい、コメカミにドリル穴くらいならかまわんが、なるべく頭部は傷つけるな。 ユキノの頭部を『アダムとイブ』に持って行く、大金を貰えるかもしれん」
切り裂きジャックは壁のナイフを吟味しながら鼻歌を歌う、
「オレは切り裂きジャック~♪ 地獄に堕ちても、この衝動を止められない~♪」
首をゆっくりと振りながらラモン兄弟も長テーブルをセットしながら、
「俺達も~♪ 地獄に堕ちても、この衝動を止められない~♪」
くそみたいな歌…
ワタシの脳裏に、
カサンドラの街のイブの鎖蛇のグルグルの瞳と笑みが甦る…
こんな殺人鬼ごときに殺されているようでは…
アレには勝てない。
よし準備は出来た…
いっちょやりますか!
現生で願っていた! 殺し合いのSMを!
まずはリーダー格のジャック!
ワタシは!
弱々しく…
「切り裂きジャック様~~どうか命だけは~~ワタシの身体切らないで~~」
切り裂きジャックは「はあ?」という顏の後で、
「ちがーーう!! そうじゃな~い!! お前は死ぬまで屈さないんだからー! お前は死ぬのは怖くないの~~! だから!最高の獲物なんだからー!!」
ズタズタっと歩いてきた。
無防備に…
ワタシは、ずっと手の後ろの死神のキセルで縄をグリグリして緩めていた!
射程距離に入った切り裂きジャックに! 力の限り死神のキセルをブッサス!!
横っ腹に45度上げめ 横にグリグリ これマメな?
「うっうぅぅぅぅ・・ぅ」
切り裂きジャックは横っ腹を抑えながらモゾっと砕ける。
ワタシは動けなくなった切り裂きジャックをニーハイブーツで背中を踏みつけ、
「刺されたお前の、言う通りでしたっと…」
次にラモン兄弟を見ると、
「ひいい!! やめで!!」
「うげうへ!! にへろ!!」
ラモン兄弟は階段を昇ろうする。
やっぱりヘタレだと思ったわ…
動きもおそっ…
ワタシは壁の一番でかいナイフを一つ取り、振りかぶって~~
「誰が行っていいって言った」
ビュン!
グサ~ン…
「ん? ん! んんーー!!」
ラモン兄弟の兄?弟? どっちでもいいけど、背中にストライク
おいおい…一番でかいナイフ背中刺さってジャンプ? ぷっ
直後、
リアクション芸人の様なオーバーリアクションでバランスを崩して、
後ろに兄?を巻き込んで階段から崩れ落ちる。
あほか? こいつら まじうける~~
ドジ兄弟に、ついついたまらず、腹を抱えて、
「はっはっうははは、なんじゃいそりゃ、カメラあれば良かったーあーくるすぃ」
ワタシは壁の電動ドリルを手に取りONにする。
ビュリュリュル~~~~
ナイフが刺さってないドジ兄弟を見下ろし、
「おまえだっけ? ワタシの体に100穴開けるって言ったの?」
もう一人のナイフが刺さったドジ兄弟を、必死の形相で右のヒトサシ指でさし、
「ちがう! こいつ!! こいつ!!」
人差し指にドクロの指輪? なにこいつ? いっちょ前にオシャレ??
あほすぎる~
笑いをこらえて…
「ううっ…ぷっ…ごめんどっちでもいいわ」
「うぎゃげいぇがやうぇえ!!! ごえええ!! やめうぇえええ!!」
「よいしょっと」
ワタシは長テーブルに足を組み座る。
目の前には虫の息の切り裂きジャックとドジ兄弟。
ワタシはパンパンっと手を叩き、
「これから閻魔女王ユキノが、バカ三人を裁判しまーす」
切り裂きジャックはこっちを見て、
「たすけてくれ…ハアハア」
ドジ兄弟も、
「もう悪いことはしません…早く病院に…」
「命だけは…もう穴だらけぇぇ救急車…」
上の階のごみ箱の中で見つけたムチを床へ!
パ―――――ン!!
「静粛に!! 判決でます!!」
「く…どっちだ…」
「たすけて」
「救急車」
「判決…… 三人死刑 以上 問答無用」
「やっぱり」
「やめて」
「むごすごる」
「そうねえ…衝動を止められないんだよね? なら三人で殺しあえ、一人だけ生かしてやるよ」
三人はお互いの顏を見合った後
●✖△●✖△●✖△●✖△●✖△●✖△
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切り裂きジャックは、ドジ兄弟の凄惨な骸を両脇に足を延ばし座る…
刺された脇腹、兄弟に噛まれた顏も手も血だらけでロクに動けない。
「やっ約束だ…もう立てない…」
「わかった約束よ、じゃあね、バイバイ」
ワタシは階段を上る。
「おい…まって…」
ワタシは左手に持っていた電動ドリルをポイ、ガンっと落とし、
「生きるの諦めたら、それでコメカミに穴でも開けたら」
電動ドリルを、口を開けボーっと見つめるジャックに、
「もうあんま電池ないけど、がんば」
ワタシは上がり地下室への戸をバタンと閉め、
テーブルに上にあった200万円と、卑弥呼のスマホを胸の隙間に入れて家を出た。
え? どこ? ここ?
周りを見渡すと、高い木に囲まれてる?
山の中?? 道どこ?
「ユキノ様!☆」
セントの声?
木の隙間から、三体鬼が見えた。
へえ…
今回は走ってんじゃない♪




