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11話 精霊たちは死者に迷惑していた

遅れました…

 人間領の人々は今日も元気に国の奪い合いをしている、ここ五千年飽きもせずに戦争しては休戦し他国から攻められては奪い、滅びて良くもまぁやるものだ。


 それでも人間種の人口は増え続けるのだから流石というべきか呆れるべきか迷うところである。


 現在の天球の総人口は約三百億人と地球の人口を軽く超える数に膨れ上がっている、四千年ほど前から宗教戦争みたいなこと始めているのにそれでも増えるのが何とも言えない。


 主に人間なのだがあれだけ戦争をやってよくも滅びないものだと我ながら彼らの生命力に驚くばかりである。


 二、三千年前には大航海時代が始まり最早人類の存在していない大陸はほぼ無いとと言ってもいいくらいだ、若干増えすぎた気がしないでもないが天球はそれなりに広いので問題はないだろう。


 仮になにか影響があったとしても悪魔や魔獣が頑張ってくれることを信じるとしよう。


 現状二十ある大陸には五つの名前が人間やその大陸の神によって決められていた、私が常々人間領と呼んでいた大陸は祝神ノエルとその大陸の人間たちによってセラフ大陸と呼ばれるようになった。


 私のペットのヴァイスはあの大陸で神をやっており与えた神格を名乗って神竜ヴァイスと呼ばれている、そんなヴァイスのいる大陸はドラコニア大陸と決めたらしい。


 そして腑に落ちない大陸名が一つある、それが私の小屋のある大陸だ。


 私の住居のある大陸は人類創造時に各種族百人の計三百人を住まわせていた、私が和食などの現実世界の料理を創らずに食べたいという名目の下に自重をせずに色々教えてきたのだ。主に透が


 そうして発展したこの大陸はファンタジー感ぶち壊しの明治日本をそのまま大陸にしたかのような町並みへとなっていた。


 そこまではいいのだ、問題はこの大陸に住む人類たちと透が割とどこでも見通せる私の目を掻い潜って結託しこの大陸の名前を決めたことである。


 その上私が気づいたときには既に大陸の端々にまでその名が広まっていた。


 それがツカサ大陸だ、私としては即刻止めてほしいが既に広まっている上に皆気に入っているしで今更止めてくれとも言えないでいる、これが透の思惑通りなら見事に嵌ってしまったよ。


 気を取り直して次の大陸だ、人類初の到達者にして神祖アストレアが神をやっている鬼種たちの楽園、ヴァンブラ大陸だ。


 ここは私が四千年前ほど前に悪魔を暇つぶしに嵌めた時に生まれた吸血鬼が世界各国から誕生した鬼種を集めて暮らしているみたいだ。


 最後になるが原初の精霊ユクレイル率いる精霊たちがエルフを庇護している大陸、ユグドラス大陸が現状決まっている大陸の名前たちだ。


 なぜか神格を与えた彼らが大陸の守護神的な立ち位置になっていること以外は想定通りなので問題は大してないのだが、これは獣人系の神を創った方がいいか?なんて最近考えているのだ。


 簡単な話、私が初期に作った人類の中で獣人たちの大陸だけ庇護する神がいないのだ、これは不公平ではないか?などと考えても不思議じゃないだろう。


 そんなことを自室で寝そべりながら考えていると、小さく木の扉を叩く音が静かな部屋に鳴り響く。


 扉の方へ意識を向けると私は思考を止めて扉に向かい声を出す。


「鍵なら開いているよ」


 そもそも鍵なんて付けていないのだから開いているも何もあったものではないが雰囲気というやつだ。


 扉がゆっくりと開きおずおずと少年が申し訳なさそうに部屋に入って来た。


「そ、そうじょ、創造神しゃ、さま」


 面白いくらい噛み噛みの彼は決してそれだけの存在ではない、なんてったって私が神格を与えた一柱だからだ。


 緑色の短髪に金の瞳、体のいたる所から蔦が伸びて居るが身体を阻害していないでいる、それ以外は少年にしか見えない彼からは圧倒的なほどに高められた魔力がある。


 彼の名前はユクレイル、原初の精霊にして精霊王ユクレイルと呼ばれている存在だ。


「少し落ち着こうか、君がそんなのだと君が庇護する存在に示しがつかないのではないかい?透、彼にお茶を」


 そう言うと透は何処からともなくと現れ、私の言う通りに彼のお茶を入れる。


 滲むように現れた透に私は一切のツッコミを入れない、最早そういうものなのだと受け入れたからだ。


「まぁ座るといいよ、私も丁度退屈していたところさ。」


 私は扉の前に立っているユクレイルにそう言う。


 彼は透を一瞥すると透は軽く頷きユクレイル戸惑いながら私の対面の椅子へと腰掛ける。


 彼らの中でどう言ったやり取りが行われているのかは知らないが私は一切関わらない、ただ同じテーブルを囲むだけでどれだけ大仰なのだともツッコミもしない、彼らの頭の中も覗かない、何故なら疲れるだけだからだ。


「さて、今日はどうしたのかな?ユクレイル君」


 私は彼がお茶を飲み一息入れるのを待ってから彼にそう聞いてみる。


 彼はお茶を飲んで少しは落ち着いたのか、先ほどよりは遥かにまともな口調で話し出す。


「ま、まずは創造主様にご拝謁頂きました事、こ、心より感謝申し上げます。」


 先ほどより遥かにまともとは言ったがまともとは言っていない、しかし今回は聞き取れるので問題はないだろう。


「……どういたしまして、堅すぎる気がしないでもないけど、まぁいいか。それで?」


 私はそう言うとテーブルに置いてあるスコーンを一つ摘み、透の入れたお茶を飲んで彼の話しを促した。


「ほ、本日こちらに来たのは、わ、(わたくし)たちの大陸のそばで拡大する死者たちが、私たちのエルフをた、魂ごと持っていこうとする蛮行を止めていただきたく……」


 そう言うユクレイルは言葉尻が次第に小さくなってやがて聞こえなくなる程に小さくなっていく。


 ちらりとユクレイル視線の先を見ると冷え切った眼差しでユクレイルに微笑む透がいる。


 これはアレだ「そのような些事で司様を云々」みたいなことを思っているパターンだ、もはや心を読むまでもない。


 私は半ば呆れながら短く「……透」とだけ言うとユクレイルを襲うプレッシャーは収まってく、完全に消えた頃に彼は軟体生物のように椅子に座り込んだ。


「……まったく、こういう事は基本的に君たちで解決できるように神格を与えて回っているはずなんだけどね。まぁいいか今回は暇だったことだしね」


 ――それだけではないけどね。


 そもそもこの世界は私の創った世界つまりID論と進化論のハイブリットであり、星の運行から生命の創造、したくはないが意志の決定まで()()は手動なのだ。


 簡単に言えばお人形遊びの延長線のようなものであり、自由意思の介在する余地などはない。


 その証拠に川を創った時は水源もないのに流れるものだと定義すれば流れたのだ。


 昼夜の運行も現実世界での名残か無意識で運行していただけであり、本来この世界の生物には意思はないはずであった事をある程度人間たちが発展していった時点で気がついたのだ。


 では何故この知的生命体たちは自由意思を持って動いているのか、その答えは意外な事に単純明快であった。


 ――私がそう望んだからだ。


 私自身忘れかけていたがこの世界は私の夢の中であると確信めいた自信がある、そんな世界でそうあれと望んでそうなる様に個性を付けて、そう言うシステムを創り出せばそれはもう完成したAIだ。


 そういった経緯で更に現実世界の中途半端な知識が無意識に介入して生命体の死後に残留思念のようなものが漂うようになる、要は幽霊や魂といった類だ。


 そういったものは所詮は残留思念だから自然消滅すると踏んで人類創造以降放置を決め込んでいたのだ。


 結果は予想通り、いや望んだ通りに自然消滅をしていったのだが一つここで大きな誤算があった。


 私のファンタジー知識であるアンデットだ、ここでも私の無意識は働きせっせと仕事をしていたのである。


 その事を知った私は「面倒だ、もうどうにでもなれ」と投げやりにアンデットの発生を放置することに決めたのである、経緯はともかく私が創ったものであるからだ。


 さて、何が言いたいかと言うとユクレイル君率いるエルフやその他各所でここ数百年起きているアンデットによる襲撃事件の間接的な犯人は私であるということだ。


 要は自業自得いや、より正しく言えばマッチポンプなのだろうが私は彼に向かって白々しく言い放つ。


「今回だけだよ?これからは君たちで解決するんだ、その為の神格なのだからね」


 こうして私のミスはあたかもユクレイルのミスとして書き代わり、騙されたユクレイル感激する。


 一方で全てを知っている透は、全てを知った上で司に感激し自慢げに頷いているのであった。

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