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じじいだって死に際には世界がスローモーションになる
アスファルトの上で、陽炎が揺らめいている。空は雲一つ無く、視力の下がった目には痛い程青かった。
孫の悲鳴が聞こえる。来るな、来なくていい。ワシはもう十分、十二分に生きた。もっとお前をかわいがって、結婚するまで見届けたかったが。そんな事を考えた。世界の時間はだんだんと遅くなっていく。そして、全てが止まるのだろう。電車が、巨大な鉄塊が、この身を跳ね飛ばすか、押し潰すか、挽き潰すかするからだ。近いうちに、間もなく、すぐに。
死の間際に全てがゆっくりになるって、本当だったのか。
そんな事を考える。そして、ある気持ちが沸き起こっていく。
しかし、しかしだ。
どうしてこうなった。
阿知波主水、七十八歳は原因について考える。