表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/162

ビーチバレートーナメント開幕

トーナメント? 長そう……なんて思ったそこのあなた。安心してください、すぐ終わります

「みなさんこんにちは! さあいよいよ始まりました伊江洲比高生ビーチバレー最強決定戦! 司会は私、神田信行でお送りします。解説は須藤さんにお越しいただいています」

「どうも、解説の須藤快翔です」


 えっ、なにこれ。


 ビーチバレーのペア決めをしてる間に、砂浜には実況席が設置されていた。

 急ごしらえのハリボテみたいな座席とは対照に、マイクやカメラなど大仰な機材が設置されている。


 まじでなんだこれ。どっかで中継してんの?


「さて、須藤さん。ズバリ本大会の見どころはどこでしょう?」

「そうですね……やはり身体能力において選手の中で一線を画す上泉さんが目を引くところですが、それによって他の選手がどのような策によって食らいつくかが注目のポイントでしょう」

「ありがとうございます。しかし、上泉選手にはずいぶんと肩入れするじゃないですか。手下ともなると評価が甘くなってるのでは?」

「いえ、いたって公正な評価だと自負していますよ? まあそれは実際の試合見てから判断しましょうよ」

「それもそうですね。では、ビーチバレートーナメント開幕です!」


 ……なんで俺はこんな茶番劇を見せられてるのだろうか。

 にしても、二人ともノリノリすぎだろ。

 神田はともかく、須藤ってこんな性格だったか?

 案外ノリのいい性格なのか?


 何はともあれビーチバレー大会が始まった。


「最初の対戦カードは一宮夏彦・夏穂ペア対一宮千秋・塚原ペアのようです。さて須藤さん、この試合をどう見ますか?」

「ええ、初っ端から一族対決ということで手の内を知り合う仲でどういった心理戦を仕掛けていくのかが肝となるでしょう。しかし塚原さんはすこし居心地が悪いんじゃないでしょうか」

「ありがとうございます」


 いや知らねーから、手の内なんて。

 というか神田と須藤の実況・解説が無駄にそれっぽくてちょっとイラッとくるな。


「塚原さんはともかく、よく知ってる叔母さん相手なら楽勝だよねお父さん」


 いやだから知らねーし。


 コイントスの結果、先攻はは千秋と早月のペアからとなった。

 千秋がサーバーとしてこちらにボールを放つ。

 俺は冷静にレシーブし、夏穂にボールを回す。


 豪華賞品は俺の物だ。

 妹だろうと容赦はしねえ!


 夏穂のトスで打ち上がったボールを思い切り叩いて最初のポイントを決めた。

 俺が速攻してくるとは思っても見なかったのか、千秋も早月もまったく反応できずにいた。


「おっと、最初に得点したのは夏彦・夏穂ペアだ! 速い! あまりにも速い試合展開だ!」

「夏彦選手の積極的な姿勢が功を奏した形になりましたね。彼のペアは試合の主導権を握ったのはこれからの展開で大きい働きをするでしょう」

「ありがとうございます。夏彦選手にはぜひ恋愛の方でも煮え切らない態度を改めて、今回のように積極的になって欲しいものです」

「黙れ、2-Aで死ぬまで結婚できなさそうな男子第一位!」


 がっついて女子から嫌われてるのは他でもない神田なのに、積極的にとはどの口が言うのだか。

 神田とキャラが被っているという理由のために、同ランキング二位になる風評被害を受けた溝口くんの身にもなれよ。

 彼は神田のような女に飢えた獣ではなく、ただ見た目がチャラいだけなのに。


「どこのどいつだ、そんなふざけたランキング作ったやつは!」

「クラスの女子たちです」


 夏穂が言ってたよ。

 選考理由は顔の良さを打ち消して余りある気色の悪さだと。


「ちなみに俺は最下位だ」


 それはそれでできちゃった結婚するとか思われてそうで複雑な心境だけど。

 まあ、こんな不名誉なランキングが一位よりはマシだろう。


「くっ……ノミヤの野郎自慢しやがって、ぶっ殺してやる……っと、すみません。実況者としたことが熱くなってしまいましたね。では続けて試合を見て行きましょうか」


 さすが放送委員(関係あるのか知らんけど)、神田はまたすぐに実況者の役に入り込んだ。


 サーブ権は得点したこちらに移り、俺が行うことになる。

 ここでさらに得点して勢いをつけたいところだ。


「お、サーブは夏彦選手ですか。試合運びはかなり優位に立ってるんじゃないですか?」

「そうですね。夏彦選手は男性ということもあって長身なので、サーブにおいても有利なのは間違いありません。ここでポイント落とさなければサーバーも連続してできるので気合が入ることでしょう」


 須藤の解説を受けていっそう気合が入る。

 上手く行けば俺のワンサイドゲームも可能となるわけだ。

 豪華賞品に一歩近づいたとなれば、俄然腕もなる。

 さあ、行くぜ!


 そして――


「強い! まさに圧巻です! 途中千秋・塚原の一年生ペアから得点を奪われるといったこともありましたが、それがどうしたと言わんばかりに実力差を見せつけてくれました! 夏彦・夏穂ペアの勝利です!」

「やはり序盤の試合展開が有利に働いたんだと思いますね」


 勝ったぜ。


「やったねお父さん!」

「おう!」


 俺は夏穂と熱いハイタッチを交わす。

 まだ初戦だけど幸先がいい。


「先輩、容赦なさすぎです……大人気ないなあ……」

「お兄ちゃんったら鬼畜ぅ。でもそんなところもス・テ・キ」


 負け犬たちがなんか言ってるけど勝ちは勝ちだ、気にするな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ