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はじめての手下

「一宮! 僕は君に忠告したはずだ! これ以上上泉さんにつきまとうのならただでは済まさないと!」


 初対面だというのにもかかわらず、須藤は威勢のいい啖呵を切ってくる。

 というか、こいつは俺が茜につきまとってると思ってるの?

 迷惑してるのは俺の方なのにひどい勘違いもあったもんだ。


「え、なにこれ。どういうこと?」


 一方でこの状況を引き起こしたのにも関わらず事態の飲み込めていない神田はおろおろとしている。

 うん、お前派関係ないからどっか行ってていいよ。


「上泉さん、安心してくれ。僕がこのストーカー男をどうにかするから」


 誰がストーカー男だ。

 茜をストーカーする物好きなんて学校でお前くらいだよ。

 というかこいつは自分が茜に付きまとっている自覚はないのか?

 茜もなんか言ってやればいいのに。


「あ、えっとその……」


 茜てめえなにまごついてんだ。普段の威勢はどうした。

 夏穂や愛歌と喧嘩しているときはすごくはっきりとした物言いになるのに。

 あのガラの悪さを見せてやれば須藤くんも幻滅するんじゃない?


 まあ、今はなにがあったかド変態へと成り果てた茜だが、本来の性格はこっちだったな。

 教室ではむしろこんな感じなのだろうか。

 しょうがない。これ以上おかしな勘違いが続くのも困るし、なんとかするしかないか。


「待ってくれ、俺は茜のストーカーなんかじゃ――」

「なにっ!? ノミヤ、お前上泉のストーカーやってるのか!? 前はあんなに上泉のこと迷惑そうにしていたのに立場が逆転するとは世の中わかんねえもんだな。あっはっは」

「てめえぶち殺されてえのか!」


 なんなんだこの神田バカは!

 人がせっかく弁明をしようと思ったのに、一度ならず二度までも邪魔しやがって。

 そんなに俺のこと嫌いなの? 俺がモテモテなのが気に食わないの?


「一宮、やっぱり上泉さんのストーカーをしているのか! たしかにそこの金髪男からも聞いたぞ。第三者からの証言も取れたことだし、僕が直々にその腐りきった性根を正さないといけないようだ」

「君の耳の中には石ころでも詰まっているのかい?」


 さっきのやり取りのどこをどう聞いたら俺がストーカーになるんだ。

 どう考えても俺の方が被害者だっただろうが。


「なんだとお! 僕が耳かきを何ヵ月もさぼる不潔男だと言いたいのか! 上泉さんにそんな不潔男はふさわしくないと! だが残念だったな、僕は毎日耳掃除を欠かさずやっているぞ」

「言ってねえよ、被害妄想激しすぎだろ! あと耳をかきすぎると耳垢栓塞(じこうせんそく)になりやすくなったり、外耳炎の発症原因になるからやめた方がいいよ」

「そうなのか、知らなかった。あ、さては博識アピールで上泉さんへのポイントを稼いでいるのか! そうやって僕の無知を晒しあげておとしめようとしているんだな!? 汚いぞ!」


 なんなんだお前は。

 俺がストーカーだとか言ったり、被害妄想したり、思い込みが激しすぎてここまで行くと病気レベルだぞ。


「よくわからんけどノミヤは本当に愉快な人たちに縁があるらしいなあ」


 愉快な人の一員が何を言うか。

 というか、神田くんまだいたの? さっさと帰れば?


「俺としても本来ならこんなおかしな人とは関わり合いになりたくないんだけどなあ……」

「一宮! 君はどの口がそんなこと言えるんだ! 上泉さんが迷惑しているのに気がつかないのか!」

「その言葉、君にそっくりそのままお返しするよ」

「上泉さん、遠慮はいらない。一宮にはっきりと迷惑だと言ってやるんだ。大丈夫、何かあっても僕が守るさ」


 自分に都合の悪いことは聞こえねえのか、この思い込み激しいストーカー野郎は。

 あと、世界最強の忍者である茜さんによくもまあ守るなんて身の程知らずな口が利けたもんだ。


「……うん。私、とっても迷惑してるよ」

「ほら聞いたか一宮! 君は自分の行動を省みるんだな!」

「――須藤くんに!」

「一宮、君は……え?」

「聞こえなかったの? 私は須藤くんが迷惑だって言ってるんだよ?」


 俺、ここにいる必要あったかなあ?

 茜が全部自分で解決しちゃいそうな勢いなんですけど。


「ど、どうして!?」

「だって、須藤くんは私の家の前で待ち伏せたり、何度も電話かけてきたりするんだもん。須藤くんが教えたことのない住所や電話番号を知ってたら気味が悪いよ。一体どこで知ったの?」

「それは……上泉さんの交友関係から一番親しそうな人を割り出して情報を聞き出したら、一年生の女子に上泉さんのお隣さんで仲がいい子がいるって聞いて……それでその子にアクセスを取って理由をつけて聞き出したんだよ」


 千秋……お前がホイホイ個人情報を教えちゃうポンコツだとまでは、お兄ちゃん思ってもみなかったよ。


「で、でも! それを言うなら一宮だって! いつも上泉さんの周りをうろうろしているじゃないか!」

「夏彦くんはいいんだよ。というよりも須藤くんは夏彦くんを手紙で脅したんだって? 私はむしろその方が許せないかな」

「だ、だからそれは一宮が上泉さんを付け回すから……上泉さんを一宮の魔の手から守ろうと……」

「でも夏彦くんが私の家の近所にいるのは当然だし。ね、夏彦くん」

「まあそりゃ幼馴染だからな」

「は? おさな……なじみ……? あれ、そういえば一宮って……あの一年生も……」

「千秋のことか? あれは俺の妹だ」


 というか、こいつは千秋の名字を知っていながら気がつかなかったのか。

 真面目くんだから頭いいのかと思っていたが、もしかしてバカなのか?


「ぼ、僕はとんでもない勘違いを……上泉さん、一宮、すまない」

「本当に迷惑したんだからね!」

「でも、僕は上泉さんのことが好きだから、君のためを思って……はっ! そうだ、僕は君が好きなんだ! 付き合ってください」


 えっ、いきなりどうした。

 というか、今の流れでオーケーがもらえると思うの? 頭湧いてるの?


「僕は今、君への想いを口にしてしまった。このまま言いっぱなしではまるで言い逃げの卑怯者みたいだ。だから、僕は好きだと口にした以上は上泉さんへの想いに決着をつけたい!」


 うん、だからといって今交際の申し込みをする胆力には脱帽するわ。


「ごめん、無理」

「やっぱりダメか……そうだよね。僕は君にも、君の幼馴染にも多大な迷惑をかけてしまった。僕は君の隣にいる資格はないんだ」

「ごめんね、私には私の好きな人がいるから」

「わかったよ。今の話はもう忘れてくれ」


 須藤はがっくりと肩を落とし、自分の席へと戻ろうとした。


「でも!」


 そこに茜の声が待ったをかけた。


「――え?」

「目的はともかく、須藤くんの諜報能力には目を見張るものがあった。よかったら私の手下にならない?」


 手下って……もうちょっとましな言い方はなかったのか。

 部下と手下でもだいぶイメージ違うだろうに、手下になれと言われて喜ぶ奴がどこにいる――


「いいのかい!?」


 ――ここにいた。


 茜、初めて手下をもつ。

 これが俺にとって何を意味するのか、考えただけでも胃が痛くなりそうだ。

耳垢は耳の中の細菌が中に入るのを防ぐといった衛生面での役割があり、過度な除去するとさらに体が作り出そうとするので、結果的に耳垢の量が多くなって耳が詰まりやすくなるそうです。

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