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ストーカー観察目録

 茜にサイコメトリーで調べてもらったところ、例の脅迫状も須藤の仕業とわかった。

 茜のストーカーとやらは正直どうでもいいのだが、俺にまで実害が及んでいるので仕方なく協力することにした。

 近所で変死体が見つかり騒ぎになるのも嫌だしな。


「やだなあ、さすがの私でもやたらめったら人を手にかけたりはしないよ」

「さり気なく俺に触れて思考を読むのはやめろ」


 マジでなんなの、サイコメトリーとかいうストーカーに特化した気持ちの悪い能力は。

 よりにもよって規格外忍者上泉茜が身につけてしまったのは俺の運の尽きだ。

 せめてもの抵抗に早月を近くに置いて超能力だけでも無効化したい。


「ごめんなさーい。でも勘違いしてほしくないんだ。私は人は殺したことないから。夏彦くんだってお嫁さんが殺人者なのは嫌だもんね?」

「そうなのか? お前の家業にもうその手は真っ黒に汚れていたものかと」

「今の当代は私だけど法を逸脱した汚い仕事はお爺ちゃんがやってるの。忍者稼業は今の時代にそぐわない、後の世代には技術は残せど人生は真っ当に送ってほしいって」

「泣かせる話じゃないか」


 でもお前、いつだかコールマンを本気で殺しにかかってなかったっけ?

 実際に居合わせた訳じゃないから何とも言えないけど。

 だが腐っても幼馴染、その手が綺麗なままというなら俺が茜が犯罪を犯さないよう全力を尽くそうじゃないか。


「で、どうしようか」

「じゃあここは定番の夏彦くんが彼氏のふりとか――」

「断固拒否する!」


 前言撤回、全力は尽くしません。

 俺になんらかの影響がない範囲での努力をします。


「あっ、そっか! ふりだと問題が解決したら関係解消しちゃうもんね! じゃあ結婚を前提にお付き合いしようか!」

「俺はときどき真剣にお前の思考ロジックを解明したいと思うときがある。それが今だ」


 さきほどの会話からどうしたらあんかぶっ飛んだ結論が出てくるのか俺には理解できない。


「ダメなの? じゃあ気づかれないように嫌がらせをし続けてノイローゼに追い込むとか?」

「んなことできるなら俺に助け求める必要なくない?」


 自己解決できるならの俺のエロゲータイム返してほしいよな。


「もっと穏便に行こうぜ」

「穏便に……って、刀で脅してストーカーやめさせるとか?」

「穏便って意味知ってます?」

「でも怪我はさせてないよ」


 え、なに? 他の方法では怪我をさせる可能性があったとでもいうの? 忍者こわい。


「もう俺が解決策考えるから、その須藤とか言う奴のことを教えろ。敵を知り、己を知れば百戦危うからずだ」


 ***


 伊江洲比高校の二年生の教室は南棟三階に集まっている。

 俺と茜はその2-B教室のドアの前で中をうかがっていた。


「で、須藤っつーのはどいつだ」

「あれだよ、あのぱっつん髪の」

「教卓の真ん前に座った?」

「それじゃなくって……その斜め後ろの」

「あいつか」


 ひそひそ声でくだんの須藤快翔がどこにいるのか教えてもらう。

 なるほど、中々の好青年じゃないか。

 人は見た目じゃないとはいえ、ストーカーをしそうな男には見えない。

 だが、俺の経験則からして顔のいいやつには“何か"ある。

 あいつがストーカーと聞かされてもまったく驚かないけど。


 須藤を観察するところ、次の授業の準備をしたりノートを見返したりと真面目なところがわかる。


「なあ、茜。本当にあいつなのか?」

「愚問だね。私の諜報能力は夏彦くんもよく知ってるでしょ?」

「ああ……まあ」


 茜は頭はおかしいけれど、忍者としての情報収集力は個人で警察の上を行くくらいだ。

 正直人間なのか疑う。本当はアンドロイドかなにかで同じ個体がたくさんいるとか。

 いや、んなもんいたら世界の脅威だわ。


 今のところ須藤に怪しい動きはないが、一応もう少し監視しておこう。

 お、立ち上がった。何をする気だ?


 須藤は教室の掲示版に近寄ると、端がめくれ上がった掲示物に画鋲を刺し直していた。


「須藤くんは几帳面……というか神経質みたいでああいうことを率先してやってるの。ストーカーっていう点を除けばいい人なんだけどね……」

「ブーメラン突き刺さってるぞ」


 なに私困ってますアピールしてんの?

 てめえも同類だろうが。

 だが、そうか。普段からああした行動をとっていれば一緒に画鋲をいくつか盗んでいっても疑われまい。

 そうやって俺の上履きに画鋲を仕込んだ訳か。

 いい子ちゃんぶってとんでもない野郎だ。


 とりあえずは須藤という男の人となりはわかった。

 あとは彼の性格に合わせて対応を考えよう。

 ひとまず退散――


「お、ノミヤと上泉。何やってんだこんなところで」

「のわっ!?」

「えっ、夏彦くん!?」


 立ち上がろうとしたところで、通りかかった神田が後ろから声をかけられた。

 驚いた俺は体勢を崩し、教室のドアの隙間に手を突っ込みながら倒れてしまった。

 それによってドアは勢いよく開かれる。

 大きな音に反応して、須藤はこちらに気がついて近づいてきた。


「上泉さん、そんなところでどうしたの……って、そこにいるのは一宮じゃないか! これはどういうことだ!」



 さて、どうしましょうか。

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