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リムジンランブル

「すっごーい! 生きててリムジンなんか乗る日が来るとは思わなかったよ! やっぱ、持つべきものはお兄ちゃんだね」


 中条家所有のリムジンの中で、千秋は年甲斐もなくはしゃいでいた。

 俺が初めて乗ったのは愛歌にさらわれていた時だったので感動する余裕はなかった。

 でも、改めて考えるとたしかに現実離れしている。


 今、何故俺たちが中条家の車で移動しているのかというと、愛歌の提案で勉強会を開くことになったからだ。

 それで愛歌の自宅へと移動中なのである。


「こら、千秋。はしたないからはしゃがない!」


 よほどシートのクッションが柔らかいことに気に入ったのか、腰を上下させて跳ねる千秋を早月がたしなめた。

 せっかくだからと、早月も千秋に誘われたらしい。


「あら、構いませんわよ。それよりも何かお飲みになりますか?」 

「SUGEEE! お兄ちゃん、車ん中にジュースサーバーがあるよ!?」


 知ってるから耳元で騒ぐな。


「叔母さんの年相応なところを見るとすごく気色悪いんだけど……」


 と、こちらは夏穂が顔面蒼白の様相だ。

 だからお前は千秋に何されてんだよ。


「さすが会長令嬢……美人なだけじゃなく心も広いんですね。私、いろいろと負けてる気がする……」


 早月が自分と愛歌の胸を見比べていた。

 いや、違うよ!? 人には人にあった大きさがあるんだから早月は気にしなくていいんだよ!

 ……とは、またセクハラ扱いされそうなので絶対に言わないけど。


「ふふ、千秋さんはわたくしの将来の義妹(いもうと)ですもの。この程度で腹を立てたりは致しませんわ!」

「あ゛? 誰が義妹だって?」


 ちょっと、なんか空気がギスギスしてんだけど。

 夏穂や千秋はわかるけど、なんで早月まで不機嫌そうな顔してんの?


「そりゃあ怒るよね! 千秋ちゃんの義姉(あね)になるのは私だもん!」

「……なあ、この(ゴミ)道路に捨てていいか?」


 茜のやつ、誘った覚えはないのにいつの間に乗り込んでたのやら。

 まあ茜の生命力なら走行中の車から道路に放っても死にはしないだろう。


「……一宮先輩は相変わらず上泉先輩に厳しいですね。家族でも殺されたんですか?」


 いえ、飼い殺しにされかけました。


「皆様。盛り上がりところ申し訳ありませんが、そろそろ到着いたします」


 コールマンのアナウンスで窓の外を見ると、すぐ近くに中条家の敷地が現れていた。


 そして、中条家(別荘)の規模の大きさに、さっきの陰険な雰囲気はどこへやら。


「すごっ……大きい。こんなの勝ち目無いじゃん……」


 なんだか、悲嘆に暮れている早月がいた。

 勝ち目って、お前は何と戦っているんだ。


「金持ちYABEEE! お兄ちゃん、茜姉! ここ全部敷地だってよ!」


 片や、敷地の広さに興奮する千秋。

 驚くところは驚くといったようで、この切り替えの早さはさすが千秋だ。


「ふん! うちの全国各地にある忍術道場も全て合わせればこれくらいはあるもん」

「そうですの。それはすごいですわ。まあこの家は数ある中条家の別荘の一宅ですけれど」


 なぜか張り合う茜に、嫌味を浴びせる愛歌。

 やっぱギスギスしてるじゃないですか!?


「ふ、ふーん。そうなんだすごいね」


 強がってんじゃねえよ。


「あら、平民であるあなたには少し理解が及ばなかったようですわね」


 愛歌も煽ってんじゃねえ。


「平民にもわかりやすく説明いたしましょう。中条家の総資産は53億ですわ!」


 宇宙の帝王か、お前は。


「ごっ!? 53億円!? 中条先輩……のお金……とならお兄ちゃんと結婚してもあるいは……」


 おい、千秋。

 今小さな声で金って言わなかった?


「なにか勘違いされているようですが……円、ではなくドルですわ!」


 ひょえええ、金持ちパネエ。


「ドル!? ……って、すごいの? お兄ちゃん」

「ん? ああ、大体日本円の百倍くらい?」

「えっと、ということは億、十億、百億……ええぇぇええ!」

「すごいよね。でもなぜドル換算で答える」

「ふふっ、貨幣としては円よりドルの方が信用は高いですもの。わたくしもそちらの方が馴染みがありますし……と、言うのは建前でして。あの言い方のほうがウケがいいと思いましたわ」


 いや、たしかに親近感は湧いたけど。

 深窓の会長令嬢も着々とオタク文化に馴染んできたようだ。

 このまま千秋みたいにエロゲーとかに手を出さなきゃいいけど……。


「夏彦様、なぜ私を見るのです?」

「俺にも思うところあってなあ」


 すっごく不安だなあ。

 この執事の近くとか。


 他のやつらのボケ倒しに疲れてる中、夏穂が袖を引っ張った。


「お父さん」

「なんだ?」

「今日はなんだか静かだね?」

「そりゃあ……」


 いちいちツッコんでたら身が持ちそうにないですもの。

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