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図書委員のお仕事

 雲一つない晴れ晴れとした空の見上げることができるとある日。

 こんなにもいい天気だというのに、とても憂鬱な気分である。


 ああ、眠い。

 昨日は遅くまでゲームをしていたせいで、非常に眠かった。

 朝から帰りのホームルームまで惰眠(だみん)をむさぼっておきながら、まったくもって注意されない神田がとっても憎いぜ。


 ホームルームは適当に聞き流し、さっさと帰って昼寝でもしよう。


「えーと、なんか最近財布の盗難が増えているようですので、各自貴重品の管理はしっかりとするようにしましょう。お知らせは以上なので、それではさようなら」


 担任がおっとりと挨拶をする。

 ……終わったか。

 さて、さっさと帰りましょう。


「お父さーん! 一緒に帰ろう!」


 カバンを持って教室を出ようとすると、夏穂が抱きついてきた。


「いいけど……過度なスキンシップは控えてくれない? 特に教室では」


 夏穂のべったり度合いは正直恥ずかしい。

 それに――


「……けっ、リア充が」


 クラスの男子(特に神田)からひんしゅくを買うので。


「あら、夏穂さんダメですわ。夏彦さんはこれからわたくしとお茶の約束をしてますの」


 あとからやってきた愛歌が割って入ってきた。


「そんな約束してた?」


 俺ってばまったく記憶にないんだけど。


「今わたくしが決定いたしましたわ」

「それ約束違う」


 俺、許可してない。約束、違う。


「でももう店の予約をしてしまいましたし……」

「お父さんは私と帰るんだから、拝金主義者は引っ込んでなさい!」

「あら、あなたがその気でしたらわたくしも受けて立ちますわ」

「ちょっ、痛い! 裂けるから腕を引っ張るな!」

「くそおっ! リア充爆発しやがれ!」


 ……なんだこのカオス。


「――あのー……喧嘩しているところ悪いんだけど、一宮くんは私が借りてくから」


 おや、新手が登場したぞ。

 さっきまでこちらをチラチラと見ていた文乃が、申し訳なさそうに言う。


「あ。……じゃあ私はこれで」


 すると、夏穂はあっさり引き下がり、静かに帰って行った。

 どれだけ苦手なんだよ。


「……佐々木さん、でしたかしら。どういうことですの?」

「図書委員の活動があるから夏彦くんにも来てもらわないといけないの」

「え、そうなの?」


 文乃がジロリと睨んでくる。

 やだ、怖い。


「昨日、私はちゃんと教えたよね? 会議をサボった一宮くんのために」


 文乃が語気を強めて言う。


「……はい。すみません」

「ということで、中条さん。一宮くん連れて行くね?」

「……仕方ありませんわ。コールマン、喫茶店の予約にキャンセルを入れておきなさいな」

「はっ!」


 と言う愛歌の隣には、いつの間にやらコールマンが。


「え、この人いつ出てきたの」


 文乃が目を丸くする。

 そうです。それが普通の反応です。


 というか、予約って貸し切りでもする気かよ……。

 二人でお茶するのにどれだけ金かける気だったんだ。


「中条さん……本当にすごいお金持ちね。住む世界が違う……」

「そうだなー……」


 とにもかくにも、文乃に連れられて図書室に到着した。


「で、活動って何やるんだ?」

「えっと、これからやるのは返却された本を棚に戻す作業よ。毎日各クラスの委員が交代でやるんだよ。他に昼休みの貸し出し当番とか他にも色々あるんだけど、それはまた今度ね」

「へー、大変なんだな」

「そんな露骨に面倒臭そうな顔しなくても……。はい、これが一宮くんの分ね」


 文乃が俺の前に本をどっさりと置き始めた。

 ……いや、多くないですかね?

 文乃の持ち分と比べて大体五倍くらいあるんですけど。


「まさか……」

「な、何だ……?」

「まさか、この前サボった一宮くんは文句を言ったり、自分の作業量の方が多そうだとかケチつけたりしないよね?」


 はっ! また心を読まれた気がする!

 文乃が顔は笑っているけど、なんだか怖いぞ。

 さながら般若の面だ。


「一宮くん……これもやってね?」


 本の山が更に高く積み上がったぞ。

 あれ、俺今怒らせるようなこと言ってないよね?


「じゃあ私はこっち戻してくるから、終わったら声かけてね」


 文乃はずいぶんと軽そうな本ばかり持って、書棚の方に行ってしまった。


「うっわ、これ何冊あるんだよ……」


 まさかこの学校はこんなに本の貸し出しが盛んだとは知らなかった。

 図書委員なんて楽そうだと、たかをくくっていたがこれは地雷引いたっぽいな。

 とはいえ、なってしまったものはしょうがない。

 ぼやいても目の前の山がぽんと消えるわけじゃあないので、ぼちぼちやっていこう。


 文乃に渡された大量の本を小分けにして消化していくが一向に減らない。

 かたや文乃はというと、すでに返却作業を終えて優雅に読書にふけっていた。

 まったく、いいご身分だぜ。

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