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夏彦救出共同戦線

 愛歌は服を脱ぎ、ブレザーやシャツ、スカートを地面に落としていく。

 その光景に俺は目を奪われた。


「――じゃなくって!」

「あら、どうかなさいました……は! まさかわたくしの下着はお気に召しませんでした?」

「いや、違うから! なんで脱いでんの!?」

「ですからそれは……子どもを作ってしまえば言い逃れできなくなるでしょう」


 愛歌は下着姿のまま迫ってくる。

 いやいやいや。まじでシャレになんないから。


「だ、誰か助けてくれ!」

「助けを求めても無駄ですわ。我が中条家の敷地では誰もがわたくしの味方ですもの。仮に部外者が侵入しても、この部屋は厳重に鍵で閉ざされ、扉の前ではコールマンが門番をしてますわ。まさに要害堅固な愛の城……事が終わるまで、夏彦さんは大人しく快楽に身を任せてよろしいんですわ」


 そうだ、ここはあのだだっ広い中条家の敷地内。

 どれだけ叫ぼうとも声が外に届くことはない。


 じゃあもう諦める――


「――それはどうかな!」


 ――訳ないよなあ。


「な!? 誰ですの!」

「私? 私はそこの一宮夏彦の娘、一宮夏穂!」

「いよ! 待ってました!」


 夏穂なら来てくれると思ったよ。

 さすがクレイジーファザコンだぜ。


「ど、どういうこと? 夏彦さんにすでに子どもがいらしたなんて……」

「違うから! 年齢で気づけよ!」


 どうやったら自分と同年代の子どもがいると思うんだよ。


「じゃあこの方何なんですの?」


 愛歌は少しムッとして、夏穂に指を差した。


「未来人なんだよ。娘が未来から会いに来たんだ」

「え? お父さん、それ言ってよかったの?」

「愛歌も自分が超能力者であることを早々に暴露してたからな。問題ないんじゃね?」

「まあ……つまりわたくしと夏彦さんが今、(まぐ)わいを済ませれば夏穂さんが誕生しますのね?」

「ごめん、ちょっと何言ってるかわかんない」


 愛歌さん、なに平然と俺にまたがろうとしてんの。


「この方がわたくしの美貌を受け継いでるとは思えませんが……まあ、いいでしょう。さあ、夏彦さん。続きを致しましょう」

「ちょっと待てやゴラァ!」

「おい、夏穂。キャラ変わってんぞ」

「私はあなたより可愛いでしょうが!」

「ツッコむとこそこぉ!?」


 それより夏穂よ、早く愛歌のご乱心を止めてください。


「冗談はさておき……」


 愛歌が一旦俺の上から降りる。


「冗談なのかよ! いや、冗談じゃないと困るけど」

「あら、夏彦さんとの子作りは冗談じゃなくってよ」

「えぇー……」

「それより夏穂さん。あなた、どうやってここまで来られたの?」


 たしかに謎だ。

 また発信器か?


「この前お父さんが拉致られて気づいたけど、不測の事態にも対応できなきゃダメだよね……ということでお父さんのカバンに発信器を付けてました!」

「嘘!? まじで?」


 やだ、ファザコン怖い。


「嘘だよ。なんか追跡してたら途中で外されちゃったっぽいから」

「嘘じゃないじゃん! 付けてんじゃん!」

「どうやら鼻の利く味方がいるみたいで手こずったよ」


 おい、無視すんなよ。


「ふふ、コールマンは優秀な執事ですわ。……そう、あなたがこの場所を突き止めようとも、警備員やコールマンが守っている限りたどり着けないというのに……何をなさったの!」

「私は超能力者なんですよ。警備員の記憶をいじって素通りするなんてお茶のさいさいってこと。さすがに扉の前の執事さんは無理だったけど。たかが部屋の鍵を守るのに使命感じなくても……」


 あー……感情は操作できないんだっけ。


「な、ならどうして! まさかコールマンがあなたと戦って負けたとでも仰るの!」

「あの執事ならただいま私の協力者と交戦中ですね。その隙に私が鍵をくすねて、この部屋に入ってこれたというわけ。こう言いたくはないけど……この場所がわかったのもあの人のおかげだし」


 夏穂は少し……いや、かなり悔しそうな顔をする。


「おい、夏穂。それってまさか――」

「――夏彦くん! 童貞はまだ残ってる!?」


 ぼろぼろな様相で茜が部屋に入ってきた。


「どちら様ですか? 人違いなんでさっさとお帰りやがりください」

「ひどい! せっかく夏彦くんを助けに来たのに」

「冗談だ。助けに来てくれたのはありがたく思うよ」


 それにしたってあの発言はないけど。

 開口一番に俺の貞操の心配とは、やはり変態は考えることが違うな。


「次から次へと……どなたですの?」

「私は夏彦くんの恋人にして――」

「嘘をつくな!」

「まったく、夏彦くんはお堅いなあ」

「いや、堅くないですから。お父さんの恋人は私だから」

「違うよね? 夏穂もさらりと嘘つくなよ」


 俺はフリーだから。残念ながら。


「まあいいや。私は夏彦くんの幼馴染にして、上泉流忍術当代、忍者上泉茜! 拝金主義者の魔の手から、愛する人を救うため、今ここにどろりと見参」


 茜が決めポーズのごとく、顔の横でピースを作る。

 うわー、すげードヤ顔。

 助けに来てもらってなんだけど、今すぐチェンジでお願いします。

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