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(約)第百六十七回チキチキアダルトゲーム品評会

 秋葉原のめぼしい店を見て回っているうちに、そろそろオフ会の時間となった。

 集会場所は近くのカラオケ店でやるらしい。

 なんでも会話の内容が周りにもれると迷惑だからだそうだ。

 ……そりゃそうだ。


 千秋はスマホを確認しながらカラオケ店の受け付けのお姉さんと話している。


「途中入室なんですけど」

「何号室でしょうか」

「303号室です」

「かしこまりました」


 どうやら話はすんなりと通ったようだ、


「さあ、行こうお兄ちゃん!」


 俺は千秋に腕を引っ張られながら、集会会場へと向かった。

 なんでそんなテンション高いの?


 でもって、会場の303号室に入ってみればなんともバラエティー豊かな顔ぶれ。

 メガネにチェックシャツでリュックにポスターを差したステレオタイプなオタクや、一見エロゲーオタクには見えない茶髪つんつんヘアーのホストのような男、メイド服を着た童顔のコスプレ女、そしてひときわ目をひいたのは――碧眼と白髪が特徴的な仮面の男だ。


 外国人ですか。仮面で外国人で碧眼とかどこのスペインニンジャですか。

 金網によじ登って襲いかかってきそう。


「こんにちは。サウザンドオータムさんとそのお兄さんですね。幹事のコルちゃんです」


 あんたが幹事なのかよ。

 どう考えてもコルちゃんという見た目ではないけど。

 そして千秋のハンドルネームは安直すぎだろ。


「はじめましてー。私のことは長いんでオータムで結構ですよー」


 千秋はまるで慣れている風に挨拶をすまし、無遠慮にソファの空いているところに腰をおろした。

 お前実は俺に内緒で前にも行ったりとかしてないよね?


「あの……部外者の俺もご一緒して問題ないんですか?」

「全然ありませんよ! ここにいるのはみな境遇は違えどエロゲーを愛する気持ちは同じ同士なのですから。あなたもそうなのでしょう? オータム氏から普段から聞き及んでおりますとも」


 おい千秋、何を勝手に人のエロゲー事情を暴露しているんだ。


「そうでござる、サウザンドオータム(兄)。エロゲーを愛する……ここにいるのにそれ以上の理由はいりませんぞ。あ、拙者はぴゅうごろうと申す」


 メガネのオタク、もといぴゅうごろうがコルちゃんの発言にうんうんうなずく。

 見た目はともかく気のよさそうな人だ。

 でも人のことをどっかのソシャゲーみたいな名前で呼ぶのはやめて。


「コルちゃーん、時間もたくさんあるとは言えねえんだからさっさと始めよーぜ」


 ホストのような茶髪男が会議の開始をうながす。

 それを受けて、コルちゃんも同意を示し、カラオケのマイクを手にした。


「うむ、サンダー氏の言うとおりですな。約一名到着の遅れている方もいるようですが、そろそろ始めるとしましょう。では……第百六十九回チキチキアダルトゲーム品評会!」

「「「「いえーい!」」」」


 コルちゃんの口上とともにパフッパフッとはやし立てる音が鳴る。

 見ればみんなあの空気袋のついたラッパを持ってるではないか。

 たしかタクシーホーンとかなんとか言ったはず。

 千秋もちゃっかり用意してる。なんで持ってるんだよ。


「って、あれ百六十七回じゃなかったっけ?」


 コスプレ女がツッコんだ。


「あれ、そうでしたっけ? まあ回数は適当なのでいいじゃないですか」


 適当なのかよ。


「八十八回を二回やったこともあったよなー」

「百十回の前に百十三回をやったこともあったでざるな」


 ず、ずさんすぎる。

 と、過去のオフ会のばか話に千秋はついて行けずおろおろしていた。

 ったく、しょうがない。


「あのっ、会議は?」

「ああ、これは失礼。身内話に花が咲いて脱線してしまいましたな。では、ここから文字通りエロゲーの話に花を咲かせましょう」


 と、コルちゃんの仕切りでエロゲー談議が盛り上がり、俺も次第に楽しくなっていた。


「近年のFFSベスト作品といえばやはり『エメラルドの空』でファイナルアンサーでござるな」

「ぴゅうごろうさんわかってるな! あれはいいよね、CGシーンの美しさと言ったらもう」

「ちょっとお兄ちゃん! そこは『シスターオプション』でしょ」

「ブラコンは黙ってろ」

「オータムのお兄さん、その言い方はないじゃない。私は『シスターオプション』、キャラが立っててすごいいいと思ったけど」

「あれ、ミサキっち『シスターオプション』好評価なん? たしかにキャラはよかったけど、俺的にはそれだけでキャラゲー感が否めないっつー感じ?」

「えー、キャラこそエロゲーで最も重要なファクターでしょ。キャラがよければ多少シナリオ残念でも許される感あるし。コルちゃんもよかったとと思うでしょ?」

「私は『ニーズヘッグの子ら』がベストですな」

「うっわ、またコアなとこ突いて……」


 話題がFFS作品ということもあって、俺も会話の輪に混じって盛り上がる。

 絶え間なく議論が続く中、話を(さえぎ)るように部屋のドアが開いた。


「――遅れてすみません!」


 申し訳なさそうに入ってきたのは……犬の着ぐるみ。

 ……だめだ夏彦、考えたら負けだ。

 とりあえず落ち着いてコーラでも飲もう。


「猫助さん、こんにちは。どうぞこちらへ」

「ぶっふぉ!」


 思わずコーラを噴き出してしまった。

 だって、犬なのに猫助って。


「おや、オータム氏のお兄さん。大丈夫ですかな?」

「すみません、ちょっとむせちゃって」


 コルちゃんが気を回してハンカチを渡してくれる。

 なんていい人。


「今どんな話してたんですか?」


 猫助と呼ばれた着ぐるみが尋ねる。

 猫助さん……着ぐるみ来たまま会話に参加するのか……。

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