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超能力とくじ引き

 約束の土曜日、午後六時に伊江洲比高校校門に肝試しのメンバーが集まった。


「やっぱ女子がいると華やかでいいよな。しかも四人も!」

「まあ人数はいるな」


 見た目だけでなく中身も伴ってたら最高なんだけどな。

 校門には主催者の神田と俺、そして神田の言う通り女子四人。

 夏穂、千秋、茜、早月が集まっていた。


「って、塚原も結局来たのか」


 昨日あれだけビビってたのに。


「まさかこんなことだとは思っていませんでした……」


 早月はかなり不機嫌な顔をする。


「さっちゃんは私が呼んだの」


 千秋が話に割り込んできた。


「千秋が?」

「千秋ったら今日いきなり電話してきたかと思えば、待ち合わせの場所と時間を言ってきて返事も聞かず切るもんですから……」

「さっちゃんがいたら面白いかと思って。リアクションが」


 千秋が邪悪な笑みを浮かべている。

 たぶん早月が幽霊苦手なのを知った上で誘ったんだろう。鬼だな。


「なんかよくわかんねーが人数増えるなら歓迎するぜ。ありがとな、ノミヤの妹さん!」

「どういたしまして!」


 千秋の渾身の社交辞令スマイル。

 神田が可哀想だからやめなさい。


「うおおおっ、ノミヤ! 貴様羨ましすぎるぞ! こんな可愛い子が妹なんて今すぐ俺と代われ!」


 効果はばつぐんだ。神田はあたまがおかしくなった。


「みんなにぎやかだねー」


 横から見ていた茜が言う。


「茜いたのか。三時間遅刻してきていいって言ったのに。その間に肝試し終わらせておくから」

「夏彦くんひどい! でもそんなサドな夏彦くんも好き……」

「キモいから帰って」


 何を想像したのか茜は恍惚(こうこつ)とした表情を浮かべていて、ストーカーらしく気色悪さがにじみ出ている。

 残念な美人とはこいつのことを言うのだろう。


「でもこれだけにぎやかだと肝試しっていっても大して怖くなさそうだねー」


 茜は俺の言葉を見事に聞き流して言う。


「それもそうだな」


 俺としては幽霊より茜の方が怖いし。


「みんなで行けば怖くありませんよね? ……うん、大丈夫」


 早月は恐怖を紛らわせるためか怖くないと自分に言い聞かせている。


「あ、そのことなんだけど、肝試しは二人組ずつやるよ! その方が緊迫感出ていいでしょ?」


 神田の問いかけに女子全員が反応した。

 夏穂、千秋、茜の三人はまるで獲物を狩るかのような獣の眼をする。

 一方で早月は、自分はライオンに狩られる前のシマウマだとでも言わんばかりに怯えた顔をしていた。

 普段勝ち気な早月が怯えているのは見ていて面白いな。グッジョブ千秋。


「ペアはどうやって決めるんですか?」

「ふふふ、よくぞ聞いてくれたよ妹さん。ずばり、これを使うのさ!」


 千秋の問いかけに対して神田が取り出した物、それは端にそれぞれ色が塗られた割り箸だった。

 箸は赤、青、黄色の三色三組だ。


「この割り箸を色を隠して俺が持つから、適当に引いてくれ。同じ色同士がペアだ。六人いるからぴったり分かれるだろう?」


 神田の説明した組分け方法に千秋と茜が小さくガッツポーズをしている。

 まあ何を企んでいるか(おおむ)ね分かるけど無駄だぞ? 残念ながら。


「じゃあさっそく混ぜまーす」


 神田は箸の端っこを手で隠して、こするように混ぜていく。

 その様子を念でも送るかのように千秋が凝視する。


「……あれ?」

「どうした千秋」

「手応えが……あっ、いやなんでもない!」


 大方テレキネシスで箸の位置を操作しようとでもしたのだろう。

 けれどもそれは不可能なんだよ千秋くん。

 まさか自分のちょっとした行動が墓穴を掘っていたとは思うまい。


「混ぜ終わったぞー。まず誰が引くんだー?」

「じゃあ俺から」


 この場に早月の超能力強制無効化空間が発生している限り組分けは完全に運だ。

 ならばいつ引いても同じだし、あとから引いて困惑する茜でも見るとしよう。


「よっと。俺は赤だな」

「次わったしー!」


 他の人の意見も言わせず、茜が声を弾ませながら神田の持つ箸に掴みかかる。


「赤どれかなー。夏彦くんと一緒がいいなー」


 茜は迷うふりをしながら箸の束をまさぐっている。


「……あれ?」

「どうかしたのか? 上泉」

「神田くんは気にしなくていいんだけど……あれれー?」


 サイコメトリーで赤の箸を探そうとでもしているのだろう。

 だけどそれも無駄なことだからさっさと引けよ。

 茜の反応見たら面白いかと思ったけど、こいつはなんかムカつくだけだな。なんでだろう。


「うーん、どれだろう……」

「あと詰まってんだからさっさと引けよ」

「あ、ごめんね夏彦くん。じゃあこれ! えいっ……うえぇ、青だぁ……」


 赤を引くことを叶わなかった茜はその場に崩れ落ちた。


「次私引いていい? いいよね! これだあ!」


 次に千秋が引く箸を決めていたとばかりに勢いよく引いた。


「あれ?」


 千秋が引いたのは黄色だった。


「そんなあ……」


 続けて千秋も崩れ落ちた。


「……凶悪だよね。塚原さんの能力」


 夏穂が隣で呟いた。

 本当にね。本人は全く気づいてないけど。

 早月は知らず知らずのうちに慢心におぼれる超能力者の野望を打ち砕いたのであった。

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